おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

子どもは賢いからこそ「カニに刺された」「血がが出た」と言い間違えるのだと知った話

子どもの言い間違えあるある

「カニに刺された(=蚊に刺された)」や「血がが出た(=血が出た)」、子どもの言い間違えあるあるですね。

 

うちの2歳次男もそんな時期です。

 

私はこれを「可愛いなあ」としか思っていなかったのですが、Twitterのリプライで素晴らしい本を教えていただきました。

こうした幼児の言い間違えが、実は人間の言語習得過程における重要なステップであるというのです。

 

『ことばの発達の謎を解く』

単語も文法も知らない赤ちゃんが、なぜ母語を使いこなせるようになるのか。ことばの意味とは何か、思考の道具としてどのように身につけていくのか。子どもを対象にした実験の結果をひもとき、発達心理学・認知科学の視点から考えていく。(Amazonサイトより引用)

 

 「カニに刺された」「血がが出た」と言う時に子どもが(無意識に)分析していること

この本のp29には、まさに「カニに刺された」「血がが出た」の事例が載っています。

二歳くらいの小さい子どもはよく「血が出た」と言いたいところを「チガ・ガ・デタ」と言い間違いをします。つまり、「血」を「チ」ではなく、「チガ」と思ってしまっているのです。これは、日本語を母語とする子どもが、「チ」は機能語ではなく単語であることはすでに知ってはいるものの、一音節のことばは単語だと考えにくので、「チガデテル」の「ガ」を「チ」の一部にしてしまい、「チガ」で一つの単語だと誤解してしまったせいなのだと考えられます。

(『ことばの発達の謎を解く』p29より引用)

※機能語というのは、「は」「を」などの助詞や英語の"a""the"など、それ自身では独立した意味を持たない言葉のことです

 

日本語の単語は二音節以上であることが多い

この本によれば日本語のほとんどの単語は二音節以上です。例外的に「手」「目」「血」などは一音節のものもありますが。

そして2歳くらいの子供が、「血が出た」 という音を聞いた時に「血」という一音節の単語ではなく「チガ」という二音節の単語である可能性が高いと(無意識に)判断して、次に自分がその言葉を使うときに「チガ」と言う…というのは考えたこともありませんでした。びっくりしました。2歳児、なんて賢いんでしょう。

 

日本語の助詞は省略されることがある

しかも日本語はよく助詞を省略して「ぼく行きたい」とか「アイス欲しい」ということがあるので、「血が出た」が実は「チガ・ガ・デタ」の助詞を省略した文章である可能性も普通にあるわけです。言われてみればその通りです。「うんち出た」「おしっこ出た」って毎日言ってますからね。

2歳児、助詞の省略という日本語ルールを知っていて使いこなしているとは、なんて賢いんでしょう。

 

このように、子どもの言い間違いの多くは、子どもが知らずにしている賢い分析を反映しているのです。

(『ことばの発達の謎を解く』p30より引用)

 

これから先、2歳次男が言い間違いをするたびに言葉の発達プロセスや2歳の子どもが無意識にしているはずの素晴らしい言語分析について考えてしまいそうです。

4歳長男も可愛い言い間違いをしていた時期があったはずですが、最近はあまり間違えなくなってきてしまいました。もっと早く、長男が2歳くらいの時にこの本を読んでおきたかったです。

 

この本では他にも「足でボールを投げる」「歯で唇を踏む」「せなかで抱っこ」などの例を挙げ、「子どもの言語の学習が単なる大人の模倣ではなく、分析、発見と創造の過程であることを非常によく示しています」(p166)と言っています。そして「大人がすべきことは協力であって、教え込みではない」(p231)と。

まっさらだった赤ちゃんが、自分の母語の膨大なルールを獲得していくプロセス。すごいですね。私たちみんな、このプロセスを通ってきたんですね。

 

幼児言葉にも意味がある

自分が無意識のうちに使っていた「おてて」「おめめ」などの言葉遣いも、子どもの言葉の発達に役立っていたと知りました。

 

すっごく面白いです

この本は日本語や英語の単語や音を具体的にあげながら「ことばの発達」についてとても面白く書いているので、言葉に関心がある方、そして1〜2歳くらいのお子さんがいる方には特に面白く読んでいただけると思います。とってもおすすめです。

例えば私は、日本語の「さしすせそ」の中で「し」だけがsh音で、残りは全てs音だというのもこの本を読んで初めて知りました。日本語を母語として33年間使いこなしてきたはずなのに、日本語についてまだまだ知らないことがあったようです。

 

この本を教えていただいたhiyoさん、どうもありがとうございました!

 

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