おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

なぜベビーカーはこんなに嫌われるんだろう

この数日、私のTwitter画面はカルディとベビーカーの話で持ちきりでした。

Twitterではしばしばベビーカー論争が巻き起こりますね。

 

ベビーカー論争、今回はカルディが発端でした

・2月22日、「ベビーカーで入りやすいカルディがあったら便利なのにな~。」とTweetされる

「わかる」「私も通路が広いカルディ欲しい」「カルディの通路は狭すぎて買い物しづらいと思っていた」などの賛同コメントがつき、拡散されました。

 

・2月26日頃から批判的なコメントが増え始める

特にベビーカーや子連れへの暴言を吐くアカウント(例:「ベビーカーが邪魔だとわからないのか」「子供産んで頭の中身無くなったんか?」「子持ち様はこれだから…」)は複数見かけました。また、カルディは子供向けの店ではない、数年くらい我慢するべきというコメントも多く見ました。

 

・2月27日頃から批判への反論も出てくる

 

・3月2日頃から「カルディが通路を拡げる対応を全国の店舗でしてくれているようだ」との情報が出てくる

 

カルディの通路拡張は大歓迎です

私自身はこの一連のTweetの前後でカルディ店舗に訪れていないこともあり、実際のところどんな理由でいつから通路を拡げる対応をとっているのか(コロナ対応など別の理由で通路を拡げているのかもしれないし)、公式発表がないので分かりません。

でもカルディの通路が広くなって買い物しやすくなること自体は大歓迎です。

産前からカルディは大好きですし、私自身はベビーカーでカルディ店舗に入るのは初めから諦めてしまっていたので、今後子育て中の方がベビーカーに子どもを載せて気軽にカルディ店舗で買い物できるようになるのは嬉しいなと思います。

 

ベビーカーが入れないお店は車椅子も入れない

もともとのTweetをされた方は、カルディに物申す!ということではなく何気なく「ベビーカーでも入れたら便利なのにな〜」とつぶやいただけなのに、と戸惑っているようでした。

そしてこの方は医療的ケア児を育てているので、ベビーカーに乗れないくらい体が大きくなったら車椅子にする予定、とも書かれていました。

 

ああ、ベビーカーが入れないお店は車椅子でも入れないよなあ…と思いました。

 

そして、この方の「ベビーカーで入りやすいカルディがあったら便利なのにな~」のTweetが、もし「車椅子で入りやすいカルディがあったら便利なのにな〜」だったら、こんなに敵意を向けられなかったのではないかと思いました。

ベビーカーの話題はTwitterでも炎上しやすいし、実生活でも敵意を向けられやすい印象があります。

 

「なぜベビーカーはこんなに炎上しやすいのか」仮説(私が思ったこと)

・ベビーカーに嫌な思いをさせられた経験のある人がそれなりにいる

実は私も5年前にベビーカーに足をひかれて「痛っ」と声をあげたのに無視されて大変腹が立った記憶があります。その時ベビーカーを押していたのは男性でしたが、私は彼に対して「なんて傍若無人な父親だ」と思いました。

また、中国出張中に混雑した船に乗ろうとしていて、後ろからベビーカーでぐいぐい押されたことがあります。この時ベビーカーを押していたのは女性でしたが、私は「なんて傍若無人な母親だ」と思いました。

当時でも世の中の多くのベビーカーユーザーは周りに気を遣って生活しているはずなのに、私にはそうした人々の印象は薄くて、たった2回の嫌な思い出によって「ベビーカーの人は傍若無人だ」と一般化してしまっていたかもしれないと思います。

・少子化によって、身近に子供がいない人が増えている

私は上述したような嫌な思い出がありつつも、自分自身が出産してベビーカーには大変お世話になったので、いま街中でベビーカーを見ると自分の息子たちが小さかった頃を思い出して懐かしいような暖かい気持ちになります。もし自分の育児経験が皆無のままだったら、もしかしてベビーカーを見るたびに/ベビーカーが話題に上がるたびに、昔の足を踏まれたりぐいぐい押されたりした嫌な経験ばかり思い出してしまったかもしれません。

また、私は自分が子どもを産むまで身近に小さい子どもがほとんど居なかったので、子どもは泣くものだとか大人の思う通りにはならないものだとか頭ではわかっていても実感としては理解していませんでした。公の場で騒がしい子供や泣く赤ちゃんを見たときに「親は何をしてるのよ…」と思っていたと思います。

そういう意味で、少子化で身近に子供がいない人が増えるということは、子連れに厳しい目を向けてしまう人が増えるということなのではないかと思います。 

 

・日本では結婚・出産が「ぜいたく」になっている

また、日本は「経済力と結婚・出産の関連が最も強い社会」なので、そもそも結婚出産できる人は相対的に「社会的強者」であることが多いようだという話を以前のブログで書いているので、ご関心ある方はどうぞ。

www.shiratamaotama.com

 ベビーカーへの敵意の一部は、「そもそも強者のくせに、産前の自分と比較して弱くなったからといって弱者として扱ってもらおうなんて虫が良すぎる」という感情なのかもしれません。

 

社会心理学の視点

さらにこの記事を読んだことでもう一つ視点が加わりました。私は社会心理学について素人なのでこの記事がどの程度学術的に根拠のあるものなのかは判断できませんが。

gendai.ismedia.jp

記事では、56.8%の母親がベビーカー利用時に嫌な思いをしたことがあると回答しているとのアンケート結果を紹介した上で、社会心理学の視点から「ベビーカーを利用している子連れの母親だからこそ」攻撃したくなるという解釈が書かれています。

端的に言えば、妊娠、出産や育児といった物事には「存在論的恐怖」を喚起する側面があり、子連れの女性はそれらを思い出す手掛かりになってしまうので忌避されるということです。(中略)

妊娠、出産や育児も動物性を思い起させ、存在論的恐怖を呼び起こす側面を持っています。そのため、人は妊娠、出産や育児に関する物事を忌避しようとします。このような忌避反応は、しばしば女性への攻撃や否定的評価という形をとります。

(引用:ベビーカー・子連れはなぜ「敵意」を向けられるか、その驚くべき理由(脇本 竜太郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

子連れの女性を見ると妊娠出産を連想し、そして自分が動物であるということや「自分はいつか必ず死んでしまう」 という恐怖を呼び起こす。そして子連れの母親や妊婦に否定的な態度をとってしまうというのです。

妊婦への否定的態度の実験例は、私にはなかなか衝撃的でした。

人間と動物の共通性を意識させた条件において、妊娠している時の写真を見た場合には妊娠していないときの写真を見た場合よりも、その女優の有能さや知性が低く評価されていました。

 (引用:同上)

また、母乳哺育も忌避対象になるとのこと。

 

なるほどなあ…と思いました。確かに私自身も妊娠出産で自分が動物であるということを強く意識させられましたし、最も自分の死を意識したのは出産時だったと思います。

 

 ベビーカーがトラブルの原因だからいっそ公共交通機関でベビーカーの使用を禁止しろ、と考える人もいるかもしれませんが、これはそもそも不当な要求です。さらに、有効でもありません。ベビーカーに敵意を向ける人が子連れの女性から出産や育児にかかわる動物性を連想してしまうのであれば、ベビーカーを禁止したところで,子連れの女性に関連する他の物事に難癖をつけるだけだからです。例えば、「抱っこひもはスペースをとるから邪魔だ」とでも言い出すかもしれません。 (引用:同上)

 

ではどうすれば良いのか? という問いに、著者は下記のように書いています。

・寛容さの価値規範を示す

→鉄道会社や公的機関がベビーカー利用への理解を求める広告を掲出するのは一つの方法

→ベビーカーや子連れへの寛容な態度を示す人が存在することで、寛容さの規範に意識を向けさせることもできる 

 

ベビーカーへの敵意は日本(東京?)では特に強いように感じますが、いわゆる「子連れに優しい」とされる海外の国では、この寛容さの価値規範が浸透しているのかもしれないなと思いました。

私はもう息子たちが大きくなってきたのでほとんどベビーカーを使わなくなってきましたが、だからこそ私自身がベビーカーの子連れへの寛容な態度を示していきたいなと思います。

 

そしてコロナが落ち着いたら、息子たちを連れてカルディでゆっくり買い物したいです!

 

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