おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

『子どものいない人生の歩き方』をもっと早く読みたかった

くどうみやこ著『誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方』を読みました。

 

ある人に勧められて読んだのですが、とても良い本でした。もっと早く読んでおきたかったなと思いました。

 

実はこの本を読み終えてしばらく経つのですが、良い本だからブログでオススメしたい一方で、私のような(既に子どもを産んでいる)人間がこうした本について語るのはちょっと難しいなぁと躊躇していました。

念のため書きますが、私は子どもを産むかどうかは個人の選択だと思うので子どもが欲しくない人に子どもを産むべきなどということを言うつもりはないです。また、子どもが欲しくて結果的に授からなかった人が必ず不幸であるとも思っていません。(この本の著者も、「私の人生に子どもはいないけれど、不幸ではありません」と明記されています)

私自身は子どもがとても欲しかったので、「もし子どもができなかったらどうしよう」という恐怖のような感情に襲われた時期がありました。そして、もし当時の私がこの本に出合っていたら、あの恐怖は多少なりとも和らいだのではないかと感じています。

 

前置きが長くなりましたが、この本についての紹介と、私の思ったことを書きます。

 

著者自身が「子どものいない人生」を送る

著者のくどうみやこ氏は、できれば子どもが欲しいと思いながらも仕事優先の生活を送っていた頃に子宮頸がんが発覚し子宮を摘出。「こんなことになるなら、早く産んでおけばよかった」という痛いほどの後悔に襲われたそうです。

そして、「子どものいない人生が確定した」ことを契機に子どものいない人についての調査を始め、この本を書かれたとのこと。

 

著書には下記のように書いてあります。

・著者の母世代、祖母世代は子供のいる人が大多数。子どものいない人生の素敵なロールモデルが身近にいない

・女性は、既婚/未婚よりも、子どもの有無でライフスタイルが大きく異なる

・子どもを産まなかった女性たちは、現代社会でどこか生きづらさを感じている

・生涯子どもがいない「生涯無子率」は女性で約3割。増加の一途をたどっている

 

本書では、子どものいない人生を深堀するため、子どものいない女性たちの本音、意識調査アンケート、各分野の専門家からの見解、人生を好転させるヒントを示しました。

子どもがいなくても豊かで充実した人生を送りたいと願う、すべての女性に送ります。

(p6 はじめに より引用)

 

子どもがいない女性/男性15人のストーリー

本書p44~p121(第2章)に掲載されている、子どもがいない女性13人、そして男性2人の「それぞれのストーリー」は大変読みごたえがあります。

子どもを産みたいかどうか。産めない事情。妊活や不妊治療のこと。子どもがいない人のもつ背景は本当に千差万別で、そしてとてもデリケートな話題なので、仮名とはいえここまで個人的な話をしてくれることに驚きました。著者のインタビューがとても丁寧だったことが窺われます。

インタビュー対象者の年齢は37〜61歳。61歳の方からは「この年になれば、みんな子育てを卒業しているので、子どもの有無は関係ないつきあいができるようになりますよ」という言葉がありました。

 

子どもがいない女性の意識調査結果

また、p126~p144(第3章)は子どもがいない女性85名の意識調査結果が掲載されています。

・もう子どもを産むことは無い、と思うのは40代前半が35.3%でトップ

・約7割が、子どもがいる女性との距離感を感じている

・約2割が、養子をとることを考えたことがある

・子どもがいる人から言われて傷ついた言葉(産んでいない人にはわからない、子どもは産んだほうがいい、子どもがいないと自由で気楽、子どもがいないことへのあわれみ) など

 

最近は子育て支援や少子化対策の文脈で子どものいる女性対象に様々な調査やアンケートがなされている一方で、子どものいない女性を対象にしたこうした意識調査は私は初めて見ました。大変勉強になりました。

 

専門家からの見解と、人生を好転させるヒント

p146からは、脳科学、不妊、母性、心理学、社会学の5つの分野の専門家による「子どもがいない女性」に関する見解が掲載されています。また、p188からは「人生を好転させる9つのヒント」が書かれています。

 ・子どもを産むことで成熟する脳と、産まないことで成熟する脳がある。産んでいない女性のほうが、脳の客観性/公平性に優れる傾向にある

※母乳育児中に分泌されるプロラクチンは「ものを深く追求していこうとしたときに、どうでもよくしてくれるホルモン」でもある。出産後一時期は集中力が落ちる。また、子どもを産むとテストステロンの分泌が抑制され闘争心が落ちて「丸くなる」とのこと。

※p155に「育児の時短制度は権利だからと、同じお給料をもらって平然と帰っていたら、周囲からの信頼を失っていきます…」と書いてありますが、時短だと普通はお給料が下がるのではないかと思います。私の場合は時短にしたことで毎月の給料が10万円下がりました

 ・子どもがいない女性にも母性(親性)はある。子どもに限らず、高齢者やペット、親しい友人の心配をしたり手伝うことで親性を発揮できる

・今後、子どもを産まない女性が約5割になると推測。子どもがいない後輩女性のための道を整備してあげよう

・子どもがいない人生に合わせたライフプランの見直し(保険など)、未産女性の体のリスク(婦人科系の疾病の発症リスクが上がるため、検診をきちんと受ける)

・「子育てを免除された人生を、これからどう歩んでいこうか」考える

など。

特に、子どもを産まない女性は月経回数が多いためエストロゲンにさらされる時間が長くなり、女性疾病の発症リスクがあがるため、こまめに検診でチェックすべしというのはとても有用なアドバイスだなと思いました。

 

私が思ったこと 

・子どもを授かる前の私がこの本を読んでいたら、もう少し心が楽だっただろうなと思う

・私が今後、不用意な発言で人を傷つけないために、この本を今読めて良かった

ああ、もっと早く読みたかったな、と思っています。

 

このテーマに関心のある方、子どもがいる方にもいない方にも、オススメしたい本です。

 

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www.shiratamaotama.com