おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

ブロードウェイミュージカル”Allegiance”(忠誠)が本当に素晴らしいので是非見てください

Allegianceの舞台を生で見たことがある日本人はきっと少ないはずなので、あえて日本語でこのミュージカルについて熱く語らせてください。

 ※allegiance:アリージャンス、忠誠

 

なぜなら、ついに日本で上演されることが決まったからです。2021年3月!!!

 

是非とも客席を満員にしたいので、今このブログを読み始めたあなたにも「これは観たい」と思ってもらうために3つの情報を書きます。

(人気になりすぎて私がチケットを買えなくなったらどうしようという恐怖はありますが、もう私利私欲は捨てます。微力ながら全力でAllegiance日本公演の成功を祈ります)

 

目次

 

あなたにこのミュージカルを「観たい」と思わせるための情報

①伝説のミュージカルです

私の周囲にはミュージカルの熱狂的なファンが何人か存在しますが、2016年当時、彼らに私が「NYでAllegianceを観てきた」と伝えたときの反応はものすごいものでした。

「ずるい」「うらやましい」「Allegiance目当てで渡米した?」「私も観たかったのにもう終演…いつか再演されますように…」などなど。

NYブロードウェイで正式に開幕したのが2015年11月8日で、閉幕が2016年2月14日。上演回数はわずか111回で終わってしまったのです。確かにテーマは硬派でライオンキングやオペラ座の怪人のような華やかさは少ないものの、素晴らしい舞台だったのに。なんという短命。

私がそのうちの1回を観劇できたのは、本当に幸運でした。その後、舞台公演を撮影して作られた映画版も日米で上映されましたが、この上映ももう終わってしまったので、もう二度とAllegianceを観ることは叶わないのだ…と多くのミュージカルファンが嘆き悲しんでいた訳です(少なくとも私含め何人かは)。

ははは、まさか2021年に日本で日本語で上演されるとは。しかもキャストも濱田めぐみさんとか…超一流…!

 

②今だからこそ見るべき舞台です

米国のトランプ大統領のための「指定席」が、このブロードウェイ公演中ずっと用意されていた、という逸話があります。

こちらはAllegianceの主演ジョージ・タケイ氏のTweetです。「歴史を学ぶときですよ、トランプさん」とでも訳せるでしょうか。

Allegianceの上演期間は、ちょうど2016年米国大統領選挙に向けた指名争いの最中でした。結局最後までトランプ氏がAllegianceの指定席に訪れることはありませんでしたが、もし鑑賞したとしても彼が考えを変えることは無かったのかな、と私は思っています。メキシコとの間に壁を作るとか、戦時中の日系人強制収容への肯定的な発言など、人種差別的な言動が目立つトランプ氏。米国に住む米国人が「日系である」というだけの理由で壮絶な迫害を受けた二次大戦中の歴史を知っても、「だって日本と戦争してたんだから仕方ないだろう」と言いそうだな…と思います。

でも、Allegianceのカンパニーが、トランプ氏のために毎日指定席を用意して観劇を呼びかけた、という事実は大きいと思っています。当時はこの指定席についての報道やSNSでの話題も多く、米国において「忘れられた歴史」になりつつあった第二次世界大戦中の人種差別について、人々が「現代の米国の人種差別」と結び付けて考えるきっかけになったのではないかと感じています。

さて、2020年11月3日に次の米国大統領選挙がありますね。トランプ大統領が再選されてしまうのか、私はドキドキしながら見守っています。2021年3月にAllegianceの日本公演が始まるころにはもう結果が出ているわけですが、私たちはどんな気持ちでAllegianceの舞台を見ることになるんでしょうね。Allegiance、観ましょう。こんなに感動して泣けて歴史を我がことのように学べる舞台はなかなか無いと思います。

ちなみにAllegianceは、ブロードウェイ史上初の「アジア系米国人がつくり、アジア系米国人が演出し、キャストのほとんどがアジア系の」ミュージカルです。(参照

 

③主演のジョージ・タケイの実体験にもとづくミュージカルです

主演かつプロデューサーのジョージ・タケイ氏(現在82歳)は、超有名人です。しかし、お恥ずかしいことに私がジョージ・タケイの名前を初めて知ったのはAllegianceでした。これは年代にもよると思いますが、少し年上の人々はジョージ・タケイを「スタートレックのスールー役」と認識されているようです。スタートレックは米国の大ヒットSFドラマシリーズ。当時の米国のテレビ界で、アジア系俳優が主要キャストになるのは史上初だったそうです。人種差別を乗り越えてスターになったジョージ・タケイ氏、すごいです。なお彼は同性愛者であることを公表しており、日系人かつ同性愛者という二重のマイノリティとして米国で生きるのは苦労が多かっただろうと思います。

ジョージ・タケイ氏は日系三世の米国人で、少し日本語が話せます。日系米国人の地位向上に多大な貢献をされてきた方で、2004年には旭日小綬章を授与されています。2011年の東日本大震災の時は日本への支援を全世界に呼びかけてくれました。

2016年のブロードウェイ公演時の年齢は78歳。ジョージ・タケイ氏の人生に基づくミュージカルで、彼自身が現役で出演した舞台を見られたこと、私は本当に幸運でした。彼は日本での上演も望んでいたそうなので、是非とも今回の日本上演にも出演してほしかったですが、さすがにご年齢的にも使用言語的にも難しいですよね。

さて、ジョージ・タケイ氏がAllegianceのサウンドトラックCDに書いているメッセージを勝手に私が翻訳します。

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1941年の日米開戦を受けて、タケイ一家は日系人強制収容所に収容されました。

私が5歳のとき、 武装した兵士たちが私たちの住むロサンゼルスの家に来て、外に出るよう命じました。母が赤ちゃんを抱いて泣いていたのを覚えています。手で持てるだけの荷物しか持ち出しを許されませんでした。
私たちの罪は、「真珠湾を攻撃した人々に似ている」ということでした。そのために、私の家族と12万人の日系人は、起訴も裁判もないままに収容所の有刺鉄線の柵の中に何年間も投げ込まれました。私は収容所内の学校の窓からこの柵を眺めながら「忠誠の誓い」を宣誓したことを覚えています。「すべての人に自由と正義を」という言葉は、後になってようやく完全に理解した苦い皮肉でした。これが私たちがAllegianceで伝える物語の背景です。
過去の過ちを決して忘れさせないこと、そして繰り返させないことが私の人生の使命だと思っています。父はかつて私に「民主主義国家としての米国は、そこに住む人々と同じくらい偉大であり得るが、同時に誤りを犯す可能性もある」と言いました。私たちに起こったことは重大な不正義であり、米国が守ると主張しているすべての原則を覆すものでした。しかし、Allegianceの物語は、この暗い歴史の章だけではありません。人間の魂の強さと、愛、贖罪、そして許しの物語でもあるのです。
収容所内で母が教えてくれた日本語があります。それは収容所のコミュニティでよく唱えられました。"gaman(我慢)"という言葉です。「尊厳を持った忍耐」という意味で、私たちがあの悲惨な時代と、その後、ゼロから生活を再建しなければならなかった時代を生き抜くための指針でした。この不屈の精神こそ、私が人生を通して持ち続けるべく努力してきたものです。私はこの物語を何度でも何度でも語りたい。Allegianceを、尊厳をもって耐え忍んだ収容所のすべての人々の記憶にささげます。

(Allegiance Original Broadway Cast Recording歌詞カード内のメッセージを私が勝手に日本語訳しました)

 

もとの英文が読みたい人は是非CDを買って下さいね。来年3月の日本語上演までに是非英語版でAllegianceの世界を堪能して下さい。 

今年で終戦から75年を迎えます。あの戦争をリアルに体験した世代の方から直接話を聞くことがどんどん難しくなってきました。Allegianceの日本上演が、5年後や10年後ではなく2021年であるおかげで、「このミュージカルで感動した人が、その後、戦争経験者の声を生で聞くことができる最後のチャンス」にもなり得るのかなと思います。

 

Gamanについて

ちなみに”Gaman”は日系米国人の歴史を学んでいると本当によく出てくる単語です。日系米国人が収容所内でゴミを再利用してコツコツ作った芸術品の数々が、米国で”The Art of Gaman”として展示されたこともあります。私は幸運にもこの展示をワシントンDCで観る機会に恵まれましたが、美しく精巧で、作った人たちの強さを思わせる作品たちでした。

Allegianceで歌われる曲のひとつに”GAMAN”というタイトルの歌があります。「あらゆる希望が失われたように思えても、尊厳をもって耐え忍ぼう」という歌詞です。とても美しい歌です(YouTube)。

様々なGamanを重ねてきた日系米国人の人々に、来年のAllegiance日本公演が満席になっている様子を見せたいな…と夢想しています。日本に住む日本人が、日系米国人の歴史にちゃんと関心を持っていると伝えたいです。

 

Allegianceの内容(とてもざっくり)

ブログが長くなり過ぎたのでどんな内容のミュージカルなのかは時間ができたら改めて紹介しようと思いますが、キーワード的に少しだけ書きます。

・第二次世界大戦中、「日系であること」を理由に日系米国人が強制収容された史実にもとづく

・母国である米国への忠誠と、祖先の国である日本および天皇陛下への忠誠とを、「テスト」されたことで日系人たちが分断され、争う

・米国への忠誠を示すために、日系米国人の若者たちが志願して欧州戦線で闘った442部隊(多くが戦死。日系人の地位向上に貢献したとされる)

・異人種間の結婚が「違法」だった時代に収容所内で白人女性と恋に落ちる日系男性

・収容所内では満足に医薬品も手に入らず、乳幼児を死なせてしまう母親

・日本との戦争が米国の勝利に終わり、祝賀ムードに沸く米国内で、ほぼすべての財産を失い、広島・長崎の親族の安否に心をかき乱し、様々な形で家族を失った日系人たちの嘆き

・ラストシーンで描かれる「最後のチャンス」

 

予習したい人へのオススメ小説

さて、観たくなってきましたでしょうか。

観劇までにこのテーマを予習したい方には山崎豊子の名作『二つの祖国』を熱烈にオススメします。これを読んでからAllegianceを観たら、全てのシーンが10倍くらい胸に迫ってくると思います。

 

2021年3月が楽しみです!!!

まだチケット販売開始前ですが、ここまで読んでくれた方、ぜひぜひ観に行ってくださいね。そしてAllegianceの歌の素晴らしさとか、ちょっと笑える盆踊りシーンとか、原爆シーンの演出のすごさとか、ラストシーンの感動について語りましょう。

 

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