おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

ブランコをこぐ息子の背中をみながら、高みを目指せと念じる

3歳長男が、ブランコを自分でこげるようになってきました。今までは私や夫に背中を押してもらっていましたが、足を動かすとブランコのふり幅が大きくなることに気付きつつあるようです。

子どもの成長は嬉しいような寂しいような…という感じですね。

 

長男の背中を見ていたらあるミュージカル曲について熱く語りたくなってしまったので、語ります。知名度の低い曲なのであまり日本人でご存知の方はいないと思いますが、素晴らしい名曲なので是非知ってください。

Allegianceというミュージカルの、Higherという歌です。

 

とりあえず聴いてください

1曲を3分半で聴けるので、ブロードウェイのYouTubeをどうぞ。さすがLea Salonga、すごい歌唱力です。彼女はKei Kimuraという日系米国人(3世)の役を演じています。

www.youtube.com

 

英語の歌詞を勝手に翻訳しつつ、少し解説します。英語の歌詞はCDアルバムの歌詞カードから、日本語は私の勝手な邦訳です。scaredがafraidになっていたり、ちょっと歌詞カードが上記のYouTubeと違うところもあるのですが、一応歌詞カードに忠実に引用します。

 

There once was a little girl playing on a swing set

One her grandpa built by the sycamore tree

Near the rusty farmyard gate

ブランコで遊ぶ少女がいた

祖父がつくってくれたブランコは、プラタナスの木の隣にあった

農場の錆びた門のそばに

この少女は、主人公Keiの幼少期です(歌っている本人の回想です)。

ブランコが置ける広い庭、良いですね。ブランコと木と門の位置関係が英語のテストに出そうだなと思いました。笑

byとnearだと、byのほうが距離が近いですよね。こんなイメージ。

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And while her mama pinned the laundry

The little girl would cry out loud:

"Push me higher, push me higher! Push me, I can't wait!"

母親が洗濯物を干すあいだ、少女は大声で叫んだ

「押して、押してよ!早く押してよ!」

少女は何歳なんでしょうね。話は脱線しますが、我が家の3歳長男は「10秒待ってね」と言うと待ってくれます。

「ちょっと待って」の代わりに「いいよ、10秒数えて」と言うようにしています - おたまの日記

 

Her mama would push her a couple times

But there was laundry still to do

So she learned to use her own strength 

Pull her own weight, push on through

母親は何度か押してくれたが、まだ洗濯物が残っている

そこで少女は自分でブランコをこぐことを覚えた

そうそう、自分でこげるようになると楽しいですよね。私はブランコをこぐことはできますが、どういう原理で振れ幅が大きくなっていくのかよく分かっていません。物理を学べば分かるのかしら。

 

To swing higher, higher than before

Higher, but scared to reach for something more

Higher

Higher towards the sky

Until the day she bent to kiss

Her mama a last goodbye

高く、前よりも高く

でももっと高くこぐのは怖かった

空に向かって高く

お母さんに最期のキスをする日まで

母親は、少女の弟を産んで亡くなってしまいます。気持ちよくHigherを歌いあげた直後、静かに「Until the day...」と言われると胸が詰まります。「Until」ということは、お母さんが亡くなってから彼女はブランコに乗らなくなってしまったのでしょうか。

私が母親だったら、こんなに早く最期が来てしまうと分かっていたのなら洗濯物なんて放り出してもっと娘と遊んであげれば良かったと思うのかな。。

 

There once was a little boy who loved that swing set

He had a licorice twist from the store in town

And two knobby skinned-up knees

少年はそのブランコが大好きだった

彼は街の店で買ったリコリス菓子をもっていた

少年の骨ばったヒザはすりむけていた

リコリス菓子、Wikipediaによると北米では古くから親しまれているグミのようなお菓子だそうです。画像をみたらあまり美味しそうではなかったです。米国人の友人によると「プラスチックみたいだけど美味しいよ。黒より赤が好きだね」とのこと。うーん。

knobbyは「骨ばった」、 skinned-upは「すりむいた」とのことで、少年はやせていて、活発な子どもだったのでしょう。

自分が乗らなくなってしまったブランコで遊ぶ弟をみて、少女は何を思うのでしょうか。母親に遊んでもらった記憶のない弟が可哀そう、私が母親代わりになってあげよう、と思うのかな。

 

While his sister pinned the laundry

That little boy would cry out loud:

"Push me higher! Push me, higher!

Push me, pretty please?

姉が洗濯物を干すあいだ、少年は大声で叫んだ

「押して、押してよ!一生のお願い!」

”Pretty please”というお願いの仕方を初めて知りましたが、子どもが可愛くお願いするときに使われるそうです(参照)。

母親が生きていた頃にはブランコで遊んでいた少女が、母親亡き今は洗濯物を干しているんですね。おじいちゃん、お父さん、少女、弟の4人家族なので、紅一点として母親代わりに家事を引き受けていたようです。20世紀前半、まだまだ性別役割分業が根強い頃ですね。

 

The girl would push a couple times

But there was laundry still to do

Then she watched amazed 

As suddenly he pulled his own weight through

少女は何度か押してあげたが、まだ洗濯物が残っている

ふと弟をみて驚いた…弟は自分でブランコをこぎ始めたのだ

少女はすっかり母親代わりをつとめているのですね。弟の成長を、お母さんにも見せてあげたかっただろうな。

 

To swing higher, higher than she'd dared

Higher, he flew so high but wasn't scared

Higher

He could touch the sky

昔、少女がこいだ高さよりもずっと高く

弟はちっとも怖くないようだった

空にとどいてしまいそうだった

怖くてあまり高くこげなかった姉と、恐れずにどんどんブランコをこいでしまう弟。これは性別もあるだろうし、個性もあるだろうし、第一子と第二子の違いというのもあるんでしょうか。ちなみにうちの1歳次男は怖いもの知らずで、3歳長男は慎重派です。

 

Right then she knew

That he would also

One day tell her goodbye

その瞬間、少女は悟った

弟もいつか、私にさよならを言う日がくるのだと

弟とはいえ、亡き母の代わりに世話をしているため、息子のような気持ちになることもあるのでしょうか。弟の自立の予感、姉を超えて遠くへいってしまうのだろうという予感。ちなみにこの予感は当たります。弟が日系米国人の地位向上のために志願して戦争にいくのを見送る日がきます。

 

That little boy, he seemed so sure

Was it something never taught to her

How the years pass quickly by 

That girl's a woman still afraid to try

少年は確信しているようだった

彼女には決して教えられなかったなにかを

年月が経つのはなんと早いことだろう

少女は大人になったが、まだ挑戦することを恐れている

長年、母親代わりをつとめてきてしまったため、彼女は自分の楽しみやしたいことを後回しにしてしまうクセがあります。Allegianceの他の歌でも弟から「姉がもっと自由に生きられたら良いのに」と言われています。長女気質って損なことが多いですよね。

 

Is it too late to start again

Get back that feeling I had then?

But now my life is upside down

There's no more farm, there's no more town

And no use asking why, but I won't let it pass me by

Life won't pass me by

I'll fly

また始めるには遅すぎるだろうか

あの時の気持ちを取り戻して

でも今の私の人生はひっくり返ってしまった

もう農場も町もない

理由を聞いても無駄だが、私はそれを見逃すつもりはない

人生に私を通り過ぎさせはしない

私は飛ぶんだ

なぜ農場も町もないのか…について。

このミュージカルは第二次世界大戦のときに日系米国人が強制収容された史実にもとづいています。20年以上住んできた農場も家もタダ同然の価格で隣人に売却し、劣悪な環境の収容所に収容されました。日系人である、という理由で母国(アメリカ)にこのような扱いを受けたことを、「見逃すつもりはない」ということだろうと思います。

ちなみに、ここまでずっと自分のことを「The girl」「Her」と第三者のように呼んでいたのに、ついに「I(私)」と言い始めましたね。

 

Get back on that swing 

Higher

Soaring higher up than anything

Higher

I want something more

あのブランコに戻って

もっと高く

なによりも高く舞い上がり

「もっと」欲しいと言おう

少女の頃は「scared to reach for something more」と、「もっと」を怖がっていたわけですが、ついに「I want something more」と言えるようになったのですね。大きな成長を感じます。

 

I dreamed I'd reach for greater things

My eyes upon those golden rings

I'll take what chance the future brings

And soar!

もっと大きなものに手を伸ばして

太陽をみつめて

未来がもたらすチャンスをつかんでいこう

私は飛ぶ!

golden ringは太陽のことだと思うんですが、複数形になっているのでちょっと自信がありません。分かる方いたら教えて下さい。(things, bringsと韻を踏むために複数形にしただけなのかな?)

結婚指輪を意味しているとすると、恋した相手を諦めないぞ、という意味にもとれますね。

劇中で、彼女は恋した相手と結ばれますが、これが結果的に彼女の家族をひきさいてしまいます。悲しい。

 

 

長くなりましたがこれで歌の解説は終わります。

私は息子たちがブランコで遊んでいるところをみると、この歌を思い出して「Higher!」と歌いたくなってしまいます。

 

高みを目指してほしい 

長男にも次男にも、Higherを目指してほしいです。社会的地位に限らず。貪欲にsomething moreを追求してほしい。人として高みを目指すことを恐れないでほしい。

そしていつか私がいなくなる日がきても、強くたくましく生きていってほしいです。

 

 

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