おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

絶望からの立ち直り方

友人から突然LINEで質問されました

友「option B 読んだことある?」

私「ない」

友「読んで」

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めっちゃ良い本でした

この本は、 FacebookのCOO(最高執行責任者)であるシェリル・サンドバーグ氏が最愛の夫を突然失い、悲しみと絶望の日々を過ごし、そして立ち直った実体験にもとづいて書いた本です。

「人生の喪失や困難への向き合い方、逆境の乗り越え方」について具体的かつ説得的に書かれています。配偶者や子どもを失った人だけでなく、レイプ被害者や深刻な病気を抱える人、ホロコースト生存者など、様々な困難に直面した人が登場します。

完璧な人生なんてあり得ない。だからみんな、なんらかのかたちの「オプションB」を選ばざるを得ない。この本は、だれもがオプションBをとことん使い倒せるようにするための本である。

(『OPTION B』p17「はじめに」より引用)

 

夫を亡くした苦しみ

2015年5月に、シェリルの夫であるデービッド・ゴールドバーグ氏が心不整脈で急死します。生年(※)から勝手に計算すると、シェリル45歳、夫47歳、息子9歳、娘7歳のとき。シェリルは夫を失ったことで息もできないほどの虚脱感や悲嘆に襲われ、父親を失った子供たちの人生が不幸になることを恐れ、もがき苦しみます。

※シェリル1969年、デービッド1967年、息子2005年、娘2007年。お子さんたちの誕生日は分からないので、誕生日前と仮定しました

シェリルは、友人の心理学者に「親を失った子どもは驚くほど早く立ち直り、幸せな子ども時代を送り、精神的に安定した大人に成長する」とデータで示してもらったり、レジリエンス(≒回復力)の高め方を教えてもらったりしたことで、徐々に立ち直っていきます。(レジリエンスは鍛えることができる!)

 

下記は、シェリルが学び、実践してきた「レジリエンスの高め方」の一例です。

 

苦難からの立ち直りを妨げる「3つのP」について知る

・自責化(Personalization:自分が悪いのだと思うこと)

・普遍化(Pervasiveness:あるできごとが人生のすべての側面に影響すると思うこと)

・永続化(Permanence:あるできごとの余波がいつまでも続くと思うこと)

「この最低なできごとは自分のせいだ。何もかもが最低だ。この先ずっと最低だ」と思うことで、人は苦難から立ち直れなくなってしまいます。

失敗や挫折に対して「自分ひとりのせいではない。すべてではない。ずっとではない」と気づくことで、子どもも大人も立ち直りが早くなり、良い成績を残すことを多くの研究が示しているそうです。(この本には脚注がたくさんついているので、もとの研究を読みたい方は脚注に飛んでください)

 

シェリルは自分自身がこの「3つのP」を知ったことで立ち直り、さらにこの概念を他の人にも伝えていきます。

例えばあるレイプ被害者から相談を受けた際、被害女性の話をじっくり聞いたのち、この「3つのP」という概念を説明します。「暴行されたことを自分のせいだと思わないように。人生のほかの面には良いことがたくさんあるし、いまの絶望的な気持ちも、時が経てば必ず薄れる」とシェリルに言われたことで、被害女性は「ちょっと気が晴れ」てレイプ犯の起訴に動けたそうです。

 

3つのP、今後、自分が失敗や挫折に直面したときに思い出そうと思いました。また、誰かが助けを必要としていたら、これを教えてあげたいと思います。

 

辛いときに思い出したいこと3つ

①人はネガティブなできごとの影響が、実際より長く続くと予想しがち

・大学生を対象とした研究で、「いまの恋人と別れたら2か月後にどれくらい辛い気持ちか」予測してもらった

・その結果を、「実際に破局を経験した」学生が2か月後に報告した気分と比べたところ、現実に恋人と別れた学生は予測よりもずっとハッピーだった

・そのほかのつらいできごと(例:終身在職権を得られないこと、希望の寮に入れないこと)がおよぼすネガティブな影響も、過大に見積もられがち

今後、私が辛い出来事に直面したら、これを思い出したいです。「いま想像している辛さは、過大に見積もったものだ」と知るだけで、少しは楽になるだろうと思います。

 

②認知行動療法は有効

・自分を苦しめている考えを紙に書きだし、次に、その考えが誤っていることを示す具体的な根拠を書く、という認知行動療法がある

→まずシェリルが書いたのは「(父親を亡くしたことで)子どもたちはもう二度と幸せな子ども時代を送れない」という文章

→しかし、幼いころに親を亡くしながら、この予測の誤りを地で証明した知り合いがたくさんいることに気づいた

これはきっと、頭の中で完結させず、具体的に手を動かすことが大事なんですね。

なお、親を失った子どもがしっかりと立ち直り、幸せな大人になれる、ということについて、この本ではいくつかの論文が紹介されています。(例えば

 

③「考え得る最悪の事態」を想像してみる

 ・辛い出来事に直面した時、「もっと悪い事態」を想像することが立ち直りを助けることもある

「冗談でしょう?これ以上最悪なことなんてないわ」

「デーブはお子さんたちを車に乗せているときに、不整脈を起こしていたかもしれないよ」

ほんとだ。3人とも失っていたかもしれないだなんて、考えたこともなかった。その瞬間、子どもたちが元気に暮らしていることに、途方もない感謝の念が湧いてきた。そしてこの感謝の気持ちが、悲嘆をいくらか和らげてくれたのである。

(『OPTION B』p34より)

荒療治だな、と思います。でも、これが有効であることはよくわかります。 

 

つらい思いをしている人に接するときに思い出したいこと:立ち入ったことをあえて聞いたほうが良いこともある

シェリルは、数年前に多発性硬化症という進行性の難病と診断された友人ジェフに、病気について直接聞いたことはありませんでした。しかし自分自身が夫を亡くした2か月後にジェフに会った際、思い切って病気について尋ねます。「あの、本当のところどうなの?どんな気持ちでいるの?怖い?」

ジェフは驚いて目を上げ、しばらく黙っていた。それから目に涙をためて、こういった。「ありがとう。ありがとう、聞いてくれて」。そして堰を切ったように話しはじめた。病気を告知されたときどうだったか。医師の仕事をやめるのがどんなに悔しかったか。病気の進行のせいで、子どもたちにどんなにつらい思いをさせているか。将来をどんなに不安に思っているか。そして、その朝テーブルを囲んでいた私やみんなとこの話ができて、どんなにうれしかったか。

(『OPTION B』p43より引用)

シェリル自身、夫を亡くしてから友人に会って「どうしてる?」と聞いてもらえないとショックだったそうです。(自分のことで頭がいっぱいの人もいれば、立ち入ったことを聞くのが気詰まりなだけの人もいる。)

 

私の反省と、今後の方針

この文章を読んで、私は自分の行動を振り返りました。つらい会話を避けてしまったことが何度もあるな…と思い至りました。つらいことを思い出させたくないとか、気まずい雰囲気になりたくないとか、そんな理由だったと思います。

この本では、夫を亡くした人も夫とのなれ初めを話したいし、子どもを亡くした親も我が子のことを話題にしたい(ことがある)と書かれています。「忘れないでほしい」「名前をだれにも呼ばれなくなるとき、息子は2度目の死を迎える」と。

東北ボランティアでの反省

もう9年前ですが、東日本大震災の直後に私は何度か東北にボランティアに行きました。私の祖父母宅はいずれも東北にあり、私もなにか役に立ちたいと思ったのが主な理由です。津波で泥水につかった家屋から泥をかきだしたりガレキを片付けるようなボランティアもあれば、お年寄りの話し相手になったり、子どもの遊び相手になったりするボランティアもありました。

当時とても戸惑ったのが、小学生の子どもたちが「津波でお父さんが死んじゃったの」「私はお姉ちゃんが死んじゃった」 と、亡くした家族の話を私にすることでした。私はなにを言ったらよいのか分からなくて、そっか、つらいね、と言うのが精いっぱいでした。

 9年経って、この本を読んで、やっと少し理解できたのは、あの子たちはただ家族の話を聞いてほしかったんだな…ということです。

自分の身に起こった悲しいできごとを、だれもがオープンにしたいわけではない。自分の気持ちを表すかどうか、いつどのような場で表すかは、一人ひとりが決めることだ。それでも、つらい経験を包み隠さず語ることは心身の健康増進に効果があるという、有力な証拠がある。友人や家族に語ることを通して、自分自身の感情を理解するとともに、人に理解してもらっていると感じられることが多い。

(『OPTION B』p54より引用)

もっと質問してあげれば良かった。せっかく家族の話をしてくれたのだから、お姉ちゃんの名前や歳を聞いたり、どんなお姉ちゃんだったのか質問すれば良かった。

この反省は、今後に活かしたいです。つらい思いをした人が、つらい出来事について話をしたいこともある。(もちろん、話をしたくないこともある)。覚えておきます。

 

まとまらないまとめ

『OPTION B』を読んでいると、①今後、自分が困難に直面した時に、この本を読み返そう、②今後、誰かが困難に直面した時に、この本を読み返そう、という2つの気持ちが何度も沸き起こります。シェリルの実体験に基づいたとても説得的なエピソードがいくつも出てきます。

ブログを書くにあたって、①と②を整理してちゃんと書きたかったのですが、なんだかまとまらないブログになってしまいました。

 

もしいまご自身や周囲の方が何かしら困難に直面している人には是非読んでほしいですし、今は困難に直面していないが今後のために備えておきたい、という方にもオススメです。

 

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