おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

育児は「誰でもできること」の集合だけど、ひとりではできないのです

小泉進次郎さんの育休、私は応援します

小泉環境大臣が2週間の育休を取得されるニュース、私は大変喜んでいます。男性の大臣が短期間とはいえ仕事を調整して育児に向き合うことで、きっと今後の日本社会にポジティブな影響を与えてくれるだろうと期待しています。

小泉環境相 育児休暇取得へ | NHKニュース

 

さて、この2日間ほど私のTwitterはこの嬉しいニュースの話題であふれているのですが、ちょっと気になるご意見を目にしました。竹田恒泰さんという昭和50年生まれの男性作家のTweetです。小泉大臣の育休取得に批判的。

 

この意見に対し、育児経験のある男性・女性から多くの批判が集まっており、炎上中といって差し支えないのかなと思います。気になる方は上記Tweetをクリックすると読み切れないほどのリプライが見られますのでどうぞ。

 

私が思ったこと:育児・育休への誤解がありそう

1.男性の育休への誤解

・もしかして、「男性の育休」について竹田さんは「父親が母親に代わって何日か完全に世話して、母親を休ませる」ことをイメージされているのではないか?

・その背景として、育児は「基本的に親がひとりいればできるもの」だと思っているのではないか?

そして、これらについては、実のところ子どもを産む前の私も良く分かっていなかったなと思っています。自分が母親になってみて初めて、「育児はひとりではできない」ことを痛感しています。父親が育休をとるというのは、母親に代わって育児を一手に引き受けることではなく、母親と一緒に家事・育児をするということなんです。特に初めてのお子さんなら、夫婦2人で分担してもかなり大変だと思います。

育児はひとりではできない(私も知らなかった)

そもそも人間は母親と1対1ではなく、集団の中で育ってきました。母親が1人で子どもを世話していたのは戦後の20~30年だけの話。歴史的にみると、親戚や地域での共同養育が「普通のこと」だったのです。(これは以前のブログ記事でも書きました)

私の第1子出産時、夫は育休を取りたくても取れなかったのですが、私は実家の母に何から何までお世話になってやっとの思いで生きていました。特に産後1ヶ月間は出産による身体的ダメージと、頻繁に起きて泣く新生児の世話のための細切れ睡眠と、ホルモンバランスの急激な変化による精神的ダメージとで、人生で最も「瀕死」な状況でした。私の母もかなり大変そうでした(いくら孫が可愛いとはいえ、新生児育児は本当に大変)。第2子出産時には夫が2週間の育休をとってくれましたが、夫・私・私の母、という3人の大人が力を結集しても、やっぱり育児は大変でした。

今は長男が2歳、次男が1歳となりましたが、やっぱり私ひとりでは育児はできないし、ひとりで育児せざるを得ない母親のストレスは大変なものだと思います。産後鬱のリスクがもっとも高いのは産後1ヵ月間。そして出産後1年未満の女性の死因トップは自殺です(参照)。

竹田さんと同じように「なんで子どもが0歳のときに父親が育休を取る必要があるの?」と疑問をもたれた方がいたとしたら、私は「一番大変なときだからですよ」と答えたいです。

 

2.育児についての誤解

「父親が力を発揮できるのは2歳から」という竹田さんの言葉が、「父親にしかできないこと(母親にはできないこと)で活躍できるのは2歳から」という意味なのであれば、言いたいことは分かります。でも育児は究極的には「誰でもできること」の集合なので、「父親にしかできないこと」の出番を待っていると、何もできない父親になってしまうと思います。

オムツ替えも沐浴も抱っこも、別に父親でなくとも母親でなくとも誰でもできることです。最初はちょっと戸惑いますが、特殊なスキルではないので、誰にでもできます。母親にしかできないのは、直接母乳をあげることだけですね。

でも、これらの「誰にでもできること」を毎日毎日繰り返しているうちに赤ちゃんとの信頼関係が築かれていくわけです。オムツ替えスキルも高まっていきます。

私の父は激務のため平日はほぼ母がひとりで(+近所のママ友と協力して)育児を担っていました。特に赤ちゃんが小さいうちの育児の作業ひとつひとつは「誰にでもできる」ことだけど、他に誰もしてくれないから、全部母親がやる。結果として母親のスキルが高まり、母親と赤ちゃんの信頼関係が高まり、「母親にしかできないこと」になってしまう、というパターンだったのではないかと思います。

そして父親にとっては、「誰でもできること」で、かつ「妻の方が得意そうなこと」をやるのは面白くないだろうと思います。

ただ、たぶん仕事でもそうだと思うんですが、誰にでもできるつまらない作業を避けていては「自分にしかできない」ことにはなかなかたどり着けないのではないかと感じています。

家庭のことは妻に任せきりだったが、イザというときは父親の出番だと思ってきた。だが、…(中略)…イザというときなんて今まで一度もなかった。そして子供二人はいつの間にか成長して今や三十歳を超えている。

(『定年オヤジ改造計画』より引用)

 ※『定年オヤジ改造計画』、結構面白いのでオススメです(熟年離婚は回避できるのか - おたまの日記

 

 

でも竹田さんの「父親が母親に代わって何日か完全に世話して、母親を休ませる」という発想には大賛成です!何日かと言わず、数十分であっても、「完全に世話して」くれるのであれば、是非休ませてほしいです。とっても嬉しいです。

是非休ませてください

職場の先輩パパいわく、とくにお子さんが男の子の場合は、2~3歳を過ぎた頃から「父親にしかできない/父親のほうが得意」なことの需要は一気に高まってくるそうです。体を使った激しい遊びとか、父親の得意なこと(スポーツでも、何かの専門分野でも)を子どもに教えて一緒に楽しむようなこととか。夫が長男と外遊びしてくれると私はとっても楽だし、外遊びをたっぷりして帰宅した長男はよく寝てくれるので本当に助かります。

また、母乳の時期さえ終わってしまえば(2歳にならなくても)父親が母親に代わって何日か完全に世話をして母親を休ませることは可能です。

夫は長男が1歳4ヵ月のときに父子2人で新幹線旅を実現しました。行先は夫の実家です。おかげで1年4ヵ月ぶりにひとりでゆっくり寝たのは本当に幸せでした(お腹の中には次男がいたので厳密には「ひとり」ではありませんでしたが)。

 

まとめ

私はあんまり竹田さんを批判しようとは思っていません。育児をあまり経験したことのない人は同じような発想になりやすいのではないかと思っています。

育児はひとりではできないということすら、私は28歳になるまで知りませんでした。育児が「誰でもできること」の集合で成り立っている(でも誰かひとりですべてやるのはムリ)という実感も、長男を育てて初めて感じました。

このたびの竹田さんTweetをきっかけに、男性が育休をとることの意義とか、育児を夫婦で協力する(夫が妻を「手伝う」のではなく、ふたりで協力する)こととか、議論が盛り上がるのは良いことだなと思います!

 

最後になりましたが、育児は大変だけど楽しいです。0歳児のふにゃふにゃした可愛らしさを味わえるのは本当に短い間です。あぁ新生児を抱っこしたい!

男性も育休を取るのが当たり前の社会になりますように。

 

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