「よくばり」ハンドブックの大炎上
広島県の「働く女性応援よくばりハンドブック」が大批判を受けて知事が釈明する事態になりました。
簡単に説明すると
主に以下2点についての批判が多かったと思います。
・女性が仕事と家庭を両立することを「よくばり」というのは不適切
・p26の上司や同僚、夫、祖父母の発言が不適切
私も、当事者であるはずの夫が「気遣われるべき周囲の人」扱いされているのは変だと思いました。
他にもいろいろ言いたいことはありますが、県では内容の見直しを検討中とのことなので、このブログで批判を書き連ねるつもりはありません。
- 「よくばり」ハンドブックの大炎上
- 簡単に説明すると
- コーヒーサーバーと「よくばり」の思い出
- 育児と仕事の両立についての認識の世代差
- 後輩を「よくばり」と感じてしまう先輩世代
- 若い人が無欲だったら怖い
- 私も「最近の若い子は…」と感じる日が来るのだろう
- 「悔しくないと言えば嘘になるけど」
- おまけ:もっと一緒にいたかった
コーヒーサーバーと「よくばり」の思い出
さて、「よくばり」という言葉で思い出したのが、私の職場にあるコーヒーサーバーです。
共有スペースにちょっと良いコーヒーサーバーが置かれていて、誰でも自由にホットコーヒーを無料で飲むことができます。
私が新入社員だった頃には無かったのですが、あるとき設置されました。背景にはコーヒーサーバー設置のために動いてくれた人たちがいたようです。
私はコーヒーの味にあまりこだわりがないのですが、美味しいコーヒーだなと思っています。
ある日、私がコーヒーサーバーの近くで先輩と話をしていた時のこと。
若い社員2人がコーヒーを注ぎながら、
「なんでこのサーバー、ホットコーヒーだけなんだろうね」
「アイスコーヒーも欲しいし、どうせならカフェラテが出るサーバーにしてほしかったなあ」
「ほんとそれ!」
という会話をしているのが聞こえました。
そして先輩が「若い子って、よくばりだよねえ…」とつぶやいたのです。
もしかして先輩はコーヒーサーバー設置のために尽力した人のひとりだったのかもしれません(私は詳しくは知りません)。
そのとき私は、
①先輩世代:コーヒーサーバーが無い時代をよく知っている(コーヒーサーバー設置に尽力した人もいる)
②私の世代:入社したときにはコーヒーサーバーはなかったけど、気づいたらコーヒーサーバーがあったので「わーい」と思っている
③後輩世代:入社したときからコーヒーサーバーがあるので、あるのが当たり前だと思っている/もっと種類があったら良いのにと思っている
という3世代の存在を認識しました。
私には、「そもそも会社が無料でコーヒーを提供してくれていることに感謝もせずに、アイスコーヒーやカフェラテが出ないことに文句を言うなんて欲張りだな」と感じる先輩の気持ちは理解できます。
一方で、「アイスコーヒーもカフェラテもあってほしい!」という後輩の気持ちも理解できます。
育児と仕事の両立についての認識の世代差
そしてこの構造、育児と仕事の両立についての認識の世代差にも似ているなと思うのです。
①先輩世代:産休・育休制度がなかった時代、女性は子どもを産んだら仕事をやめなければならなかった時代をよく知っている/子どもを産んでも働き続けられるように尽力した人もいる
②私の世代:産休・育休制度は取得できるし、時短制度や在宅勤務などで「子どもを産んでも働き続けられる」ようになってきた
③後輩世代:産休・育休を取得できるのは当然で、男性も育休をとったり家事育児を分担するのが「当たり前」だと思っている
※私の父の世代でも育児をしていた男性はいるし、私の世代でも子どもを産んだら仕事をやめざるを得ない状況にある女性はいるし、後輩世代でも「育児は女の仕事」と思っている人は存在し得ると思いますが、あくまでも世代全体でみたときの傾向の話です
先輩世代の方から、「おたまさんはいい大学でて、結婚して子供も2人産んで、仕事もつづけるなんてすごいよね、すべてを手に入れてるよね」「私の時代にはそんな人いなかったよ」と面と向かって言われたこともあります。
同世代・後輩世代の男性が(職場によっては)勇気を出して、もしくは(職場によっては)当たり前のような顔をして「子どもが生まれるので○ヵ月育休とります」「子どもが熱を出したので早退します」と言う姿もよく見聞きします。
後輩を「よくばり」と感じてしまう先輩世代
女性が子どもを産んでも働き続けて、しかもマミートラックにはまらずに仕事のやりがいも持ったまま、しかも子どもと過ごす時間も大事にしたいなんてよくばりだ、と感じる先輩世代の気持ちは理解できます。
男性が「子どもが熱を出したので早退します」といったときに「奥さんはどうしたの?」とつい思ってしまう先輩世代の気持ちも理解できます。
先輩世代が30代だった頃には、それは「当たり前」ではなかったのだろうと思います。
でも私の世代、そして後輩世代がそれを「当たり前」だと思えるとしたら、それは社会が進歩しているから、良い方向に進んでいるからだろうと思うのです。
若い人が無欲だったら怖い
無欲な若い人って、最近よく話題になりませんか?若者が恋愛しない・結婚しない、家や車を欲しがらない、だから少子化になるんだ、だから不景気になるんだ、という文脈で。
躺平(タンピン)
例えばこれは中国の話。
近年、中国の若者に「躺平(タンピン)」という現象が蔓延しています。「躺平」とは、「横になる」という意味です。結婚しない、子供を産まない、家や車を購入しない、生計維持のための最低限の仕事しかしない、こうした「躺平」は、若者の間で瞬く間に幅広い共感と支持を集めました。
(引用:中国の若者に蔓延する「躺平」 – 看中国 / VisionTimesJP)
さとり世代
これは日本の話です。
さとり世代は「脱・ゆとり教育」を経験してきた1996~2005年生まれの人々のことを指すといわれています。(中略)
さとり世代の人たちの特徴としてよく挙げられるのが、欲がないという点です。欲には色々な種類がありますが、さとり世代の人たちには物欲や金銭欲、出世欲などが欠けていると言われています。
(引用:さとり世代の特徴5選。仕事への姿勢やゆとり世代との違いについて | 新潟県の人材派遣・求人・求職なら株式会社コーケン)
不景気だから無欲にならざるを得ないのではないかとも思いますが、若い人が無欲で「よくばらない」社会って怖くないですか。
私も「最近の若い子は…」と感じる日が来るのだろう
私も30代になり、「10代・20代の若い人とは感覚が違うな」と感じることは増えてきました。正直に言えば、後輩と話をしていて「強欲だな」と感じたこともあります(言わないけど)。
でも、自分よりも若い人が「よくばり」に見えるとしたら、それはとても良いことだと思うのです。
先輩世代が尽力してくれたおかげで創設された・定着した制度が「当たり前」になって、さらに良いものを次の世代が求めていくのはとても健全だなと。
そして付け加えて言うなら、私世代・後輩世代は、コーヒーサーバーを設置するために尽力した誰かのことを、ちょっと胸に留めておくのも大事かなと思います。
「悔しくないと言えば嘘になるけど」
例えば今年出産した人には「ロタの予防接種無料」「3歳以降は保育料無料」「フル在宅勤務できる」は当たり前かもしれません。でも3歳以降の保育料が無料になったのも、ロタの予防接種が無料になったのも、すっごく最近なんですよ。
そして諸先輩方の中には「在宅勤務さえ認めてもらえれば働き続けたかったのに…」「うちの子が小学生になった頃に、今くらい在宅勤務ができれば小一の壁は低かっただろうな…」という人、少なくないです。
私自身は、ロタの予防接種無料には間に合わず。でも3歳以降の保育料無償化のおかげで4歳長男の保育料は無料になっているし、昨年から在宅勤務が一気に普及したことで本当に助かっています。
ロタ予防接種、やっと無料になるのね。私は既に長男と次男に3回ずつ、合計6万円払ってしまったけど…でも定期接種になることは歓迎!悔しくないといえば嘘になるけど!!笑 https://t.co/5IGjsKV5bI
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) September 14, 2019
私はこの辺の制度の過渡期にいたので、「3歳以降の保育料無料」「在宅勤務できる」を「当たり前」とは思っていないです。でも後輩世代がこれを「当たり前」と思えるようになるのは大歓迎です。
おまけ:もっと一緒にいたかった
このブログ記事を最後まで読んでくれた人に、私がすごく好きな動画をシェアさせてください。180秒で見られます。
このツイートを見て真っ先に思い出したのが、#もっと一緒にいたかった の動画。
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) July 13, 2020
男性経営者7人が、我が子が幼い頃に自分は仕事ばかりして育児に関わらなかったという後悔を語り、男性育休を推進する動画です。
下の世代の男性にあんな経験をさせたくない、という思いを感じました。 https://t.co/yXvyN0ADnp
私も「よくばり」な次世代を暖かく応援・支援する大人でありたいなと思います。
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