ある日の会話
母「お父さんが読んでる小説がおかしいのよ、試しに読んでみたらもう面白くて面白くて、声上げて笑っちゃったわ」
私「へー。どういう本?」
母「家事も育児もなーんにもしてこなかった主人公が定年退職して、妻にも娘にも見捨てられそうになるのよ。フゲンビョウって知ってる?」
私「知らない。お母さん、あとは説明してくれなくて良いわ、ネタバレしないで!面白そうだから私も読む」
で、読んでみたら私も声をあげて笑いました。めっちゃ面白かったです。フゲンビョウは夫原病でした。
定年オヤジ改造計画
大手石油会社を定年退職した庄司常雄。夢にまで見た定年生活のはずが、良妻賢母だった妻は「夫源病」を患い、娘からは「アンタ」呼ばわり。気が付けば、暇と孤独だけが友達に。そんなある日、息子夫婦から孫二人の保育園のお迎えを頼まれて……。定年化石男、離婚回避&家族再生を目指して人生最後のリベンジマッチに挑む!
(Amazon商品説明より)
60歳で定年退職した主人公は、30歳の息子(既婚、2人の子持ち)と33歳の娘(独身、実家住み)の父親でありながら、子育ても家事もほぼ妻にまかせっきりで仕事一筋の人生を歩んできました。何の悪気も無く「母親というものは子供の世話をしているときが最も幸福を感じるものなんだよ」と言ってしまう人です。
家庭のことは妻に任せきりだったが、イザというときは父親の出番だと思ってきた。だが、そう思っていたのは自分だけではなかったか。誰も期待などしていなかったのではないか。というのも、イザというときなんて今まで一度もなかった。そして子供二人はいつの間にか成長して今や三十歳を超えている。
(本文より)
この本は、主人公が、娘に叱られたり孫の世話をしたり兄姉に諭されたりしながら「もしかして自分が思い込んでいた色んなことは、間違いだったのだろうか」と気づいていく話です。
我が子のオムツも替えたことが無いのに、孫のウンチオムツを替えるはめになるシーンなど非常にリアルで面白かったです。女は子供のウンチを臭いと感じないはずだと思っていたらしいですよ。
読み始めたときは「いやあこれは熟年離婚不可避だわ…」と思っていましたが、読後感はとても良いものでした。
想定されている読者は女性?男性?
著者が女性(1959年生まれ)なので、男性主人公の小説でありながら「女性のための女性の本」という面があります。(家事育児を一手に引き受けてきた)女性が読むと「それそれ!」と共感できる、すかっとするシーンが多いと思います。一方で、(家事育児をしてこなかった)男性が読むと、心当たりがある人はちょっとドキドキするのではないかと思います。
私の父がどんな気持ちでこの小説を読んだのか、興味はあるのですがまだ直接聞けてません。父は、この主人公よりは家事も育児もしてきた人だと思いますが、父にとって耳の痛い指摘も随所にあったことと思います。この本を両親ともに読んだことは、両親が仲良く老後を過ごすためには良かったのではないかな、と感じています。
私「…ちなみにお母さんは熟年離婚とか考えてるの?」
母「ないない!たしかにお父さんは仕事が忙しくて家事も育児もあんまりしなかったけど、当時はそれが普通だったからね。今の若いお父さんたちは偉いわよ。」
私「よかったー」
母「それにね、お父さん最近は私が仕事でお父さんが休みの日には洗濯物を取り込んでくれたりするのよ。たたまないけど。」
よし。今度、父に洗濯物のたたみ方を教えてあげよう、と思いました。
【合わせて読みたい】