おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

この世には2種類の人がいる。レ・ミゼラブルを読んだ人と、読んでいない人だ。

読んだ人は幸せである。「レミゼを読んだ人」として生きていけるのだから。

読んでいない人は幸せである。レミゼを初めて読む感動を、これから味わえるのだから。 byおたま

 目次

 

レミゼのオマージュ作品たち

今年に入ってまだ1ヵ月だというのに、「レ・ミゼラブル」をオマージュした作品に立て続けに3つも触れることになり驚きました。

小説「ホワイトラビット」

ひとつめは伊坂幸太郎の「ホワイトラビット」です。

 小説としては「さすが伊坂幸太郎!」という感じで面白かったのですが、随所に出てくる、レミゼを読んだ人間だけが「わかる」文章。冒頭からしてレミゼの文章が引用されています。

「そう、難しいのは、どうやってここに止まるかということだな」

「いや、違います」とフォーシュヴァンはこう言った。「どうやってここから出るかということです」

ジャン・ヴァルジャンは心臓の血が逆流するのを感じた。

「ここから出る」

「そうです。マドレーヌさん。はいり直すには、まずここから出なくてはならないのですわい」

レ・ミゼラブルより

「パリの下水道事情の説明に一章つかう」と本家レミゼを笑いつつ、ヴィクトル・ユゴーのように物語の随所にしゃしゃり出てくる筆者、伊坂幸太郎…。いやー、面白かったです。レミゼ好きな人で、まだホワイトラビットを読んでいないなら、軽い読み物としてはとてもオススメです。

 

ドラマ「終わりなき旅路」

ふたつめは、フジテレビ開局60周年特別企画「レ・ミゼラブル 終わりなき旅路」。レ・ミゼラブルの登場人物とストーリーをなぞりつつ、見事に現代日本を舞台とした3時間の大作ドラマになっていて驚きました。ディーンフジオカ演じる「馬場 純(=ジャン・バルジャン)」が主人公で、阪神・淡路大震災と東日本大震災を物語に組み込みつつ、投資詐欺、臓器移植、シングルマザーの子育てなどの現代的な課題が新たなレミゼの世界を作り上げています。テナルディエの宿が悪徳無認可保育園として描かれていたのは秀逸でした。

コゼットは梢(こずえ)ちゃんで、ちゃんと幼いエポニーヌにいじめられるシーンあり。そして全国のレミゼファンがドキドキしながら気にしていただろう、「マリウス・ポンメルシーの名前は日本名でどうなるのか問題」については、「碓氷慎(うすい・しん)」ですよ。うまい…。

再放送の予定がないようなので、あまりアツく語るのは申し訳ないんですが、FOD(フジテレビ オンデマンド)なら見られますので、関心ある方は是非。初月無料です。

下記バナーからFOD公式サイトにとびます。

 

テレビCM(リクナビNEXT)

そして3つめが、リクナビNEXTのCM。もう完全にミュージカル「レ・ミゼラブル」のアンジョルラスです。民衆の歌です。どこにもレミゼのオマージュとは説明されていませんが、間違いないと思います。

※YouTubeのリンクが切れたので削除しました。良いCMだったのに残念!

 

レミゼ経験が人生を面白くする

この3つの「レミゼ・オマージュ作品」に立て続けに触れて、思ったことがあります。クリエイター、特に小説家や劇作家には、レミゼを読んだ人が多いのだろうと。そして、その作品を受け取る側が「レミゼを読んだ経験があるかどうか」で、その作品をいかに面白がれるかが劇的に変わってしまう。

あ、私は小説だけでなく、ミュージカルのレ・ミゼラブルも大好きです。好きすぎて、ほぼ全曲とも英語で歌えます。ヒュー・ジャックマン主演の2012年の映画レ・ミゼラブルも素晴らしかったです。でも、これらの舞台や映画には描かれていないことがあまりに多い。例えばガヴローシュがテナルディエ夫妻の息子であることも、ファンティーヌが子どもを産むまでの経緯も、バルジャンが改心する最後のきっかけになった少年プティ・ジェルヴェも、舞台や映画には出てきません。

舞台や映画を観て感動した人は、是非とも本で「レ・ミゼラブル」を読んでいただきたいです。主要登場人物の背景にとどまらない、当時のフランス社会について(フランス革命から、パリの下水道事情にいたるまで)綿密に描かれていて驚かれると思います。

「レミゼを読んだ人」の人生は、「読んでいない人」のそれよりもきっと豊かなものになると思います。勝手に断言します。

 

レミゼを本で読むなら

さて、私の子どもとして生を受けたからには、うちの息子たちは胎児の頃からレミゼに親しむ運命にありました。One day moreはちょっと激しい子守歌です。

自分で本が読めるようになったら、まずは子ども向けの短い「ああ無情」から読ませようかな…と思っています。いま、将来の息子たちのために「ああ無情」と「レ・ミゼラブル」の邦訳を読み比べている最中です。 近所の図書館にいっぱいあって幸せ。

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そして、「ああ無情」を読み終えて、もう少し大きくなったら「レ・ミゼラブル」を読むのです。

福音館の抄訳版(素晴らしい)

私が初めて読んだ「レ・ミゼラブル」は、福音館古典童話シリーズでした。これは「童話シリーズ」と銘打ってあるものの、大人にも十分すぎるほどの素晴らしい抄訳(原文の一部を抜き出した翻訳)です。訳者は清水正和さん。原作の半分ほどの分量とはいえ、それでも分厚いし、子どもには難しめの表現も出てきます。小学校高学年の私が上下巻を読むのに数日かかった記憶があります。でも、数日かけてでも読み通してしまう魅力がありました。

小学生のときに初めて読んで、人は間違いを犯したとしても立ち直れるんだ、と当時の私なりに感動したと思います。中学生の時に再読、高校生の時にも再読、大学生になってからも再読し、そのたびに新たな気づきを得てきました。大学の友人たちに何度も貸しているうちにいつのまにか無くなってしまったので、うちの息子たちが大きくなったらまた買います。(最後に誰に貸したかも忘れるくらい、たくさん貸しました笑)

 

そしてたどり着く、完全版

社会人になって、Kindleで「完全版」レミゼが100円でダウンロードできると知り、初めて完全版を読みました。長い…!でも、面白い…!!

訳者は豊島与志雄さん。初訳版は1919年で、なんと大正時代(その後なんどか改訳)。ユゴーの文章自体、独特の癖があると思うんですが、それに加えて日本語としても古く、味わい深く、時代を感じさせる…。もはや日本の古典文学を読んでいるような気持になります。大変オススメです。

 

息子たちをレミゼの世界に引きずり込む作戦

というわけで、私としては息子たちにはまず「ああ無情」を家の本棚に置いておくことにします。読んだころを見計らって、福音館のレ・ミゼラブルを買います。そして私が読みます。きっと息子たちは気になって勝手に読むはず。そして福音館のレミゼにはまってしばらくして気付くのだ…この分厚いレミゼすら、原作の半分ほどの分量でしかないということに…。いつの日か完全版を読み終えた息子たちに、「ねぇお母さん、ユゴーさぁ、パリの下水道事情とかフランス革命について長々と語りすぎじゃない?」って言われたい。「おぉ息子よ…私もずっとそう思っていた!!」って固い握手を交わしたい。抱擁でもいい。

欲を言えば、息子のどちらかがフランス語を習得してレミゼ原作をフランス語で読んで、日本語版だけを読んでいたら気付かなかった面白いことを私に教えて欲しい。

「ねぇお母さん、日本語版しか読んでないのによくあんなに長々とレミゼを語ったね。」

お恥ずかしい!!!でも、レミゼを日本語で読めるようにしてくれた翻訳者の皆様、本当にありがとうございます!!!

 

最後に:レミゼの面白さ

レミゼの面白さはいまさら私が語るまでもないと思いますが、ほんっとに面白いですよ。原作は1862年に出版され、一般大衆に大受けしてます。あのトルストイやドストエフスキーもレミゼを読んで感動したそうです。古典名作と持ち上げられすぎてハードルがあがってる感がありますが、これだけ世界中で読み継がれる小説なんだから面白くないわけないです(本国フランスでは今も聖書に次いで2番目に読まれているベストセラー小説)。

でも、この面白くてしょうがない小説の中に、ユゴーの問題意識がぎっしり詰められているところがすごいと思います。最後に序文を引用して、この長すぎるブログの締めにします。この小説の問題意識は、21世紀にも通用すると思います。

はじめに

法律や慣習によるきびしい社会的制裁が存在するかぎり、つまり、神聖であるべき運命を人間がゆがめ、この文明社会のまっただなかに、宿命的な地獄をつくりだしているかぎり、また、今世紀がかかえている問題、すなわち、貧困による男の堕落、飢餓による女の転落、暗黒におびえる子どもたちの不幸、この三つの問題が解決されないかぎり、また、あちらこちらの地方で、社会的な窒息状態の生じる可能性があるかぎり、―要するに、この地上に無知と悲惨が存続するかぎり、このような性質の書物もけっして無益ではないだろう。

『レ・ミゼラブル(上)』福音館書店 より抜粋 

 

じゃあレミゼを読んでみようかな、という人のためにもうひとつブログ記事を書きました。

shiratamaotama.hatenablog.jp

 

 

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