人から勧められて読んだ本が素晴らしかったです。
私自身は現時点で介護はしていませんが、今後の人生で「仕事と介護の両立に悩んで退職する」ことにならないために、今この本を読めてよかったと思います。
『ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由』
「自立とは依存先を増やすこと」、これは介護に限らず人生のあらゆる局面にあてはまると思います。
そしてこの本では「介護とは自立支援である」という信念のもと、要介護者の依存先を複数に分散する(=特定の人への過度な依存を避ける)ことの重要性やその具体的な方法が書かれています。
介護が必要な親と同居するリスク
たとえば私は、なんとなく「親の介護が必要になったらまずは同居してしばらく家族が介護して、それでも難しくなったら施設に入ることになるのかな」と想像していました。
しかしこの本を読んで初めて知ったのですが、
・同居家族がいると原則として生活援助系の介護サービスが介護保険では使えなくなる
・特別養護老人ホームに入りにくくなる(同居家族がいると優先順位が極端に落ちる)
とのこと。
ほかにも生活リズムの変化や環境変化による親の心身の状態悪化など、介護が必要になった親と同居し始めることのリスクが説明されています。
なるほど…知らなかった…。
介護離職は可能な限り避けるべき
さらに介護生活は少なくとも10年程度は続く(いつまで続くかはわからない)ので、筆者は基本的に「介護離職は可能な限り避けるべき」というスタンスです。一度介護離職してしまうと介護を終えても再就職は難しく、運よく再就職できても年収が半減することも。介護離職をきっかけに生活保護の受給が必要になる人もいるそうです。
親のために仕事を辞めて介護に専念することが、本当に親のためになるのか。私が親の立場で想像してみたら、自分の介護のために子どもがキャリアを諦めて肉体的・精神的・経済的に追い詰められていくのは望まないだろうなと思いました。
持続可能な介護を
この本を読んだおかげで、(可能な限り)介護を理由に同居せず、(可能な限り)介護を理由に離職せず、自分の生活を守った上で介護保険サービスを活用して、長い介護生活を持続可能な形で過ごしていくイメージをなんとなく持つことができました。
介護虐待についてのデータ
p35に、高齢者に対する家庭内虐待についての研究報告が引用されています。
柴田准教授の研究報告によれば、虐待をする人に共通する特徴としては
①息子か夫である
②要介護者と同居していたりして常時接触している
③介護に関する知識が不足している
(以下略)
引用:『ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由』p35
ちなみに「虐待をされてしまう人に共通する特徴」のひとつには「75歳以上の女性である」という特徴があるそうです。ひええ…
息子か夫が介護を主に担っている家庭で虐待のリスクが高くなってしまうとしたらなにが原因なのだろう、と考えながら読み進めました。p91には私の疑問に答えるかのように「男性介護者は、周囲に相談することが苦手」「うまく介護ができない自分を責める傾向が強い」などの傾向が述べられています。
男性こそ意識して家族会に参加してもらいたい、という著者からのメッセージには深くうなずきました。筆者自身が男性で、お母様の介護を20年以上続けてこられたからこその説得力がありました。
ぜひ読んでください
この本は、ほかにも
・育児と介護はぜんぜん違う(p59~62)
・親が元気なうちに、親の人生について聞いておくべきこと(p152~155)
など、勉強になることがたくさん書かれています。
いま介護の当事者である方にも、今後誰かの介護をする可能性がある方にも、そしていつか自分が介護される立場になる可能性がある方にも、おすすめしたい本です。
介護はある日突然始まるので余裕があるうちに備えておくべき
ちなみにちょっと自慢ですが、この本では「地域包括支援センターにも足を運んでみることを強くオススメします」と書かれてます。
実は私、3年前に地域包括支援センターに行ってみたんですよね。
そのときのブログを貼っておきますのでよろしければ読んでみてください。
おまけ
蛇足ですけど、介護における寝具のクリーニングは、多くの自治体が無料~1,000円程度の低価格で受け付けてくれるそうです。すごくないですか?
汚れた布団を洗うのって大変ですよね。子ども用布団だって重いし洗うの大変なのに、いわんや大人サイズをや。
この制度を知らずに、汚れてしまった寝具を自分で洗っている人も少なくないとのことで、これはもっと広まってほしい知識だなと思いました。
【2022年5月20日追記】
Twitterで仲良くさせていただいている方が、今まさにお母様の介護をされる中で「同じ子育て世代に知ってほしい」という趣旨で「やってよかった10個のリスト」を公開されてます。任意後見契約や資産の確認など、確かに必要だなと思うことばかり。大変勉強になりました。
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