おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

21世紀の新しい絵本に、子どもと一緒に出会う

「オリヴァー・ジェファーズの新刊が日本語で出たんだよ!」と言われて、「おおっそれは読まなくては」と思う方はどのくらいいらっしゃいますかね。

 

オリヴァー・ジェファーズとは

数々の受賞歴を誇る世界的な人気作家にして、イラスト、コラージュ、パフォーマンス、彫刻など、幅広い芸術作品を手がけるアーティストとしても活躍。ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーランキングで1位を獲得した『クレヨンからのおねがい!』(ほるぷ出版)のほか、好奇心とユーモアあふれる絵本の数々は、これまで累計45か国語以上に翻訳され、1200万部を超えるベストセラーとなっている。ニューヨーク在住。

(『ヒューイたちの あたらしいセーター』著者紹介より引用)

 

『クレヨンからのおねがい!』(2014年発行)

上記の著者紹介で触れられている『クレヨンからのおねがい!』は有名なので読んだことがある方が多いかもしれません。

未読の方のためにちょっと紹介しますね。

主人公のケビンはある日、自分のクレヨンたちから大量のお手紙をもらいます。 

赤のクレヨンは「クレヨンのなかで、オレがいちばんはたらいてるとおもうんだ」「ちょっとやすませてほしいんだ」と訴え、黒のクレヨンは「みんなのためにくろいせんをひくのはもうあきちゃいました」とわがままを言い、黄色のクレヨンと橙色のクレヨンは「自分こそがおひさまの色だ」とケンカをしています。

うちの3歳長男は、身につけていた紙をケビンが全部はがしちゃったので「はずかしくってクレヨンのはこからでられません」と怒る、うすだいだいのクレヨンのページが一番気に入っているようです。

最後にケビンがクレヨンたちの訴えに応えて描いた新しい絵が載っています。とても素敵な絵です。長男はこの絵本を読むと自分もお絵かきがしたくなるそうで、いそいそとクレヨンを出してきます。

 

新シリーズ、ついに邦訳

さて、この『クレヨンからのおねがい!』を手がけたオリヴァー・ジェファーズ氏の新シリーズ2冊の日本語版が、2020年10月に出版されました。

「ヒューイ」という謎の生き物が登場します。

 

『ヒューイたちの あたらしいセーター』(2020年発行)

子どもの個性が伸びる絵本!

「ちがう」って「おもしろい」ーー!

ここは、みんながみんな見た目もやることなすこともそっくりおんなじな、ふしぎな生き物ヒューイの世界ーー。
「ヒューイってね、みんな そっくり おんなじだったんだ。そのなかの ひとりが、すてきな セーターを あむまでは……」

(Amazonサイトより引用)

この絵本、なかなか一筋縄ではいかない絵本です。

読み始めたときは「うんうん、すてきなセーターを編んで、世界に多様性がもたらされる…というストーリーなんだろうな」と思ったのですが、そう単純な話ではありませんでした。

私はこの絵本をもう10回以上読み聞かせていますが、著者がなにを伝えたいのか、私にも明確には分かりません。現代社会への皮肉かもしれないし、子ども自身に「人と違う」というのがどういうことなのか考えさせたいのかもしれない。「自分だったらこうする」と親子で話すきっかけにしてほしいのかもしれない。「なぜ『考えることが同じ』はずのヒューイたちの中でルピーだけが新しいことを『思いつく』ことができるのか」、疑問を持ってほしいのかもしれない。

 

私はこの絵本を読んでいて、有名なTEDトーク「社会運動はどうやって起こすか」を思い出しました。「最初のフォロワーの存在が、1人のバカをリーダーへと変える」という話です。

www.ted.com

 

うちの息子たちはこのTEDトークを見るはるか前に、ヒューイの絵本でリーダーシップとフォロワーシップを学んでいることになります。いつかTEDトークを見せたとき、きっと息子たちは「ああ、これはあの絵本に出てきた話だな」と思うのでしょう。楽しみです。

 

子ども自身にヒューイのセーターをデザインさせてみる

原著(英語版)のAmazonレビューを見ていたら、こんな素敵なレビューを書いている方(学校の先生?)がいました。

A lovely book that can get your children thinking about what is good about being the same or different. In my class we talked about what makes us all special and how we should celebrate our differences. They then designed their own jumpers for a Huey which they loved. A delightful book to share.

Amazonサイトより引用)

同じであること、違うこと、それぞれの良さを子どもに考えさせてくれる素敵な本。私のクラスでは、何が私達を特別な存在にしているのかなどについて話し合いました。そして子どもたちはヒューイのために新しいセーターのデザインをそれぞれ考えました。

(私の勝手な邦訳です)

このレビューを読んで試してみたくなったので、息子たちにもヒューイのセーターの色塗りをさせてみました。ヒューイの形はシンプルなので、お絵かきしやすそうです。

下の写真に映っているのは、私が色塗りしたセーターです。

f:id:shiratamaotama:20201112163858j:image

 

そしてもう一冊がこちら。

 『ヒューイたちの はんたいはなーんだ?』(2020年発行)

子どものことばが広がる絵本!

すべての「はんたい」は きみの見方次第ーー。

「『はじまり』のはんたいってなーんだ」
ふしぎな生き物ヒューイたちはその答えを見つけようと、いろんな「はんたい言葉」を探していく。
「うえ」の逆は「した」、「ツイてない」の逆は「ツイてる」・・・。
じゃあ、コップにおなじ量のジュースが入っていたらなんて言う?「はんぶん『も』ある」?「はんぶん『しか』ない」?

(Amazonサイトより引用)

こちらも同じ生き物「ヒューイ」が登場しますが、みんな色や大きさが違います。『ヒューイたちの あたらしいセーター』とは違う世界線なのか、多様性が生まれたあとの世界なのか、気になるところです。

こちらの絵本は3歳長男はクイズのように読んでいて、私が「上の反対はなーんだ?」と言ったら「した!」と即答してくれます。対義語の概念を学ぶには良さそうです。原著(英語)も買っても良いかもしれません。

実は最初のページが私には当初よくわからなくて、「始まりの反対を訊かれて、なぜ返答が『はい』なの?このトンチンカンな受け答えはピンクのヒューイが『反対』の概念を知らないということ?『はい、かな?』への返答が『いいえ、ちがいまーす』なのは、あえて対義語で返答したということ?」と脳内に疑問がたくさん浮かびました。

全体的に、説明を「あえて」していない絵本なんだなという印象です。一度読んだだけで分からなくてもいい。何度も読んでいるうちに子どもの言葉が広がっていくことを信じている、という感じ。 

 

もしかしてあらゆる絵本には、大人が一度さらっと読んだだけでは分からないことがたくさんあるのかもしれません。

 

21世紀の新しい絵本に興味津々です

私は、自分が小さい頃に読んでいた絵本を子どもに読むのも大好きですが、新しく出版された絵本に子どもと一緒に初めて出会うのも大好きです。 

何十年も読み継がれてきた古典絵本には、確かな魅力がありますが、絵本は時代の空気、社会を反映する文化でもあります。今を生きる大人が、今を生きる子どもたちに向けて送り出した21世紀の絵本。その新しい表現と傾向に注目してみてください。

(引用:第6章 21世紀の子どもの本 その1 絵本 | 日本の子どもの文学―国際子ども図書館所蔵資料で見る歩み

 

今回読んだヒューイの絵本2冊は、原著が出版されたのが2012年(The New Jumper)と2015年(What's the Opposite?)。日本語版が出たのが2020年です。

21世紀の新しい絵本を読んでみたい方にはとってもオススメです。

 

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