おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

谷川俊太郎の『生きる』が絵本になっている。これは、良い絵本。

谷川俊太郎の『生きる』が絵本になっていると初めて知りました。2017年出版と、かなり新しいです。

生きる   谷川俊太郎


生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ

 (後略)

 

ひとつ前のブログに『生きる』を引用しましたが、文字で詩を読んで大変感動したのでつい絵本にも手を出してしまいました。

www.shiratamaotama.com

 

絵本を読むのがちょっと怖かった 

前回のブログでも書いた通り、『生きる』の詩は私に「生の実感」を想起させました。

しかし、この絵本を読んでしまうと、『生きる』の詩から自分が受ける映像的イメージにかなり絵が影響してきそうだな、という懸念がありました。ひとたび絵本を読んでしまったら、絵本に描かれている絵しか思い描けなくなってしまうのではないか?それはもったいないな…。読まないほうが良いかしら…。

 

大丈夫でした

しかし実際に読んでみたら、その心配は杞憂に終わりました。

てっきり、『生きる』の一言一句に対応した絵が描かれた絵本なのだろうと思っていたのですが、全然違いました。

絵本全体が小学生の姉弟を中心とした「ある家族の夏の日」を描いており、とても懐かしい感じがします。家電(薄型テレビ)等の描かれ方をみると2010年代が舞台のようですが、もう少し昔、私自身が子どもだった頃よりももう少し昔の日本を舞台にしているような雰囲気を感じました。

最初のページをめくった瞬間から、夏の終わりのセミの声が耳いっぱいに聴こえてくるようです。これはあまりくどくどと絵本の内容説明をするのも無粋だと思うので、関心がある方は是非読んでください。

 

2歳長男のお気に入りになってしまった

詩『生きる』に先入観を持たせるのももったいないかなと思い、あまり子どもに見せる気はなかったのですが、本棚に置いておいたら2歳長男に「読んで」と言われてしまいました。

一度読んだらすっかり気に入ったようで、何度も読まされています。

この絵本は細部まで面白い工夫がたくさん施されています。主人公の姉弟のほかの登場人物も、うまくできた舞台の群衆役のように皆がストーリーをもって動いています。

 ※例えばp8で「既に青信号なのに押しボタンを押したがる子ども」とか、「ああ、わかる~!」という感じです。また、p10で描かれている家におじいさんはひとりで住んでいて、p33の写真にいるおばあさんはもう亡くなっているのかな。p38でおじいさんが帽子を持っているということは、夜だけど一人暮らしの家にこれから帰るのかな。とか。あと、裏表紙までしっかり見てください…!

 

長男への読み聞かせ

実際2歳長男にこの絵本を読むと、こんな会話になりました。

私「いきる」

長男「あっ、セミだ!」

私「谷川俊太郎」

長男「たにかわしゅんたろー」

私「生きているということ」

長男「セミ、しんでる」

私「死んでるね。いま生きているということ」

長男「ありさん、セミたべるんだよね」

私「よく知ってるね。それはのどがかわくということ」

長男「このこ、なにやってるの」

私「ロープを握ってね、上にのぼってるんだよ。木もれ陽がまぶしいということ」

長男「あっ、すべりだいのぼってる」

私「ほんとだね。ふっとあるメロディを思い出すということ」

(中略)

私「かたつむりは、はうということ」

長男「かたつむり?どこにいるの?」

私「かたつむり、見えないねえ。ここのどこかにいるのかな。人は愛するということ」

長男「これ、なにしてるの」

私「おじいちゃんのお誕生日のお祝いだよ」

長男「なんでねんねしてるの」

私「夜だからだよ。あなたの手のぬくみ」

長男「ぬくみ?」

私「ぬくみ」

長男「長男くん、ぬくみ、たべたい」

私「そっか、ぬくみ、たべたいか。いのちということ。おしまい!」

長男「あっ、セミ!」

私「セミ、穴から出てきたね」

 

こんなに会話しながら読める絵本、最高じゃないですか?(ちょっと親バカ)

・子どもが楽しく読めて

・かつ読んでいる大人も楽しい

すごく良い絵本だな…と思っています。

 

長男は基本的に絵本を読むのが好きなようですが、この絵本は特に面白いらしく、このようにずっとしゃべりながら絵のあちこちを見つめています。まだ10回くらいしか読んでいませんが、毎回新たな気づきがあり、読んでいて私も面白いです。

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これは長男が寝る前に「またあしたよむから、まっててね」と絵本をイスにおいていった様子です。

きっと明日の朝も読まされます。

 

ここで突然の短歌 

ぬくみをば

たべたいという子の

手のぬくみ

あなたのことを

たべてしまいたい

(おたま、心の短歌) 

※「友蔵、心の俳句」のマネです、念のため!

 

 

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