黒川伊保子著『妻のトリセツ』(2018年出版)と、『夫のトリセツ』(2019年出版)を読みました。面白かったです。
妻のトリセツ
妻が怖いという夫が増えている。ひとこと言えば10倍返し。ついでに10年前のことまで蒸し返す。いつも不機嫌で、理由もなく突然怒り出す。人格を否定するような言葉をぶつけてくる。夫は怒りの弾丸に撃たれつづけ、抗う気さえ失ってしまう。
夫からすれば甚だ危険で、理不尽な妻の怒りだが、実はこれ、夫とのきずなを求める気持ちの強さゆえなのである(俄には信じ難いが)。本書は、脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた、妻の取扱説明書である。(Amazon商品紹介より引用)
夫のトリセツ
日本中の夫と妻に大反響を巻き起こしている『妻のトリセツ』。
「次はぜひ夫編を」
読者の熱い声に応えてついに登場。刊行1ヵ月で10万部突破!
「話が通じない」「わかってくれない」「思いやりがない」「とにかく気が利かない」……
腹立たしい夫を見捨てる前にこの一冊。今度は脳科学から男脳を解明。
夫婦70年時代のバイブル。(Amazon商品紹介より引用)
『妻のトリセツ』で納得したところ
井戸端会議はかなり知的な行為
・他人の経験談を自分の知恵として脳にしまい込み、将来に役立てる(例:子どもたちを危機から救う)。女の会話に「無駄話」はない。
→いままで私は「女の井戸端会議は無駄話だけどストレス解消になる」と思っていましたが、あながち無駄ではなかったのか、と思いました。
大切なのは夫が共感してくれたという記憶
女性は、共感されるとストレスが解消される脳の持ち主なので、共感こそが、相手の脳への最大のプレゼントなのである。(p26より引用)
→私もつい先日、夫からの共感の重要性を実感しました(保育園で子どもが暴力の被害者になったときの話 - おたまの日記)。自分が高ストレス状態にあるときに、「その気持ちはわかる」と共感されることでストレスが解消される、というのは良く分かります。
周産期・授乳期の妻への不用意な発言は「地雷」になり得る
p29~31にかけて、夫が悪気なく言いがちなセリフが書かれています。「楽なお産でよかったね」「今日一日何してたの?」「手伝ってるじゃないか」など。
これらは、夫からするとそれほど大したことを言っているつもりはないだろう。が、命がけで子どもを産み育てている妻を殺すひとことだ。
(p31より引用)
そして、「取返しのつかないひとこと」を言ってしまった場合には、たとえ悪気が一切なかったとしても「申し訳なかった」と伝えることが推奨されています。ふたりで穏やかな時間を過ごしているときに伝えるのが良いそうです。
※ちなみに無痛分娩が「楽なお産」だと思っている方がいたら、私の第一子出産のときの記録を読んでみてください。人生で一番「死ぬかもしれない」と思いました。
そのほか
思春期に妻と子どもが対立したら基本的に夫は妻の味方をしたほうが良いとか、事実は否定しても心は否定してはいけないとか、なんでもないメールが大事とか、「言われてみれば、なるほどな」と思うことがたくさん書いてありました。
子育ての最中には、御多分にもれず、「一緒の部屋の空気を吸うのもいや」と思ったこともあったけれど、あのとき、手放さないで本当によかった。あのとき、見捨てないでくれて、本当によかった。
多くの結婚35年超えの妻たちが口にする実感である。
(p148より引用)
私もこの境地に至りたいものです。
夫のトリセツで納得したところ
子どもを産んだら夫への感情が変わるのは普通のこと
ということで、子を持った妻は、夫の労力、意識(気持ち)、時間、お金のすべてをすみやかに提供してほしいという本能に駆られる。子どもには徹底して優しいが、夫には厳しい。これこそが、本当の母性本能である。(中略)母性とは、子どもを育て抜くための生き残り戦略だ。当然、大人の男に対しては、苛立ち、厳しくなる。妻たちは、命がけで「母」を生きている。
(p22より引用)
→これは我ながら夫への感情変化に自覚があったので、納得しました。夫が悪いわけではなく、私が変わったのです。
意識的に用事以外の会話をする
・夫だけでなく息子とも意識的に対話すべし。心がけて、「用事のない会話」をすること。
・「宿題やったの?」「早くお風呂に入って」などの目的志向の言葉だけでなく、「お母さん、こんなことがあってさ」「この映画、私はこう思った。あなたはどう思う?」などの対話をすること。息子を一人前の人間とみなして意見を聞くと良い
ルール/定番をつくろう
・「こういうときには、こう言ってほしい」をルール化すると良い
→私は体調が悪いときには「大丈夫?」と聞かれたいので、これは夫に提案します。また、共感してほしいときには「今から私が話すことに共感してほしい」と予告することにします。
・「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」はいつも同じトーンで、おだやかに。たとえケンカの最中でも。
そのほか
・息子にレディファーストの習慣を教えられるのは母親だけ
・男性に話しかけるときは、①まず視界に入る場所まで行って名前を呼ぶ、②2~3秒間を待って本題に入る、という2段階制御が大事。いきなりの早口には対応できない。
・結論から言う、数字を言う。経緯から話したいときは「経緯から話してよろしいでしょうか」と言う
・夫の言葉は裏読みしない(夫の言葉はそのまま受け取れば良い。下記の会話が良い例)
粗大ゴミが3つあって、(中略)夫が「このゴミ、全部、僕が片付けるの?」と聞いたという。
いつもなら、「私は他にやることがあるの。それくらいやってよ」とイラついたセリフを言うところだったが、はたと思いついて、「そうよ、お願い」と行ってみた。すると夫は、「おぅ」と言って、2往復してくれた。後で、「あれって、確認だったの?」と聞いたら「そうだよ。後1回なのか2回なのか、確認した」。「皮肉じゃなくて?」と念押ししたら「なんでそんなことするわけ?と答えたという。
(p77より引用)
・弱みを見せて、頼りあう。夫にも子どもにも弱音を吐いて良い。
・いってらっしゃいのハグはおすすめ
『夫のトリセツ』は、夫婦関係だけでなく息子を育てる母親へのアドバイスも書かれており、参考になりました。
不満なところ
『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』ともに、脳科学者が書いたわりには非科学的な文章だなと思います。「女性脳」「男性脳」など、特に定義なしに用語が使われたり、根拠が書かれていなかったりします。また、客観的な事実と著者の意見があまり区別なく書かれています。
この本を「擬似科学的」と批判する記事も出ています。
妻のトリセツが説く脳の性差 東大准教授は「根拠薄い」:朝日新聞デジタル
また、著者の年代的に仕方ないのかもしれませんが、女性像が古典的だなと思いました。(著者は1959年生まれ。女性は専業主婦が多い世代ですね)
それでも読む価値はあると思います
私は、こういう疑似科学的な本はあまり好きではありません。でも、2冊とも読んで良かったなと思っています。
おそらくこういうタイトルの本を手に取る人は、自分の夫婦関係に課題を感じていて、「どうにかしたい」という改善意欲があるのだろうと思います。そして、この本を読むことによって、「夫が悪いわけではないんだな」「もしかして夫もこんなふうに思っているのかもしれないな」という気づきが得られるとともに、「自分のしてほしいことを夫にこういう風に伝えてみると良いのかも」と具体的な行動がみえてきます。
基本的には女性は『夫のトリセツ』を、男性は『妻のトリセツ』を読むことが想定されていますが、私は『妻のトリセツ』を読んだことで共感欲求がかなり満たされました。私が感じている不安や不満は多くの女性に共通しているのだろう、と感じることで私のストレスはかなり解消されました。
無料で読みたい人はAudibleがオススメです
ちなみに『妻のトリセツ』は全文をAudibleで聴けます。最初の一冊は無料。下記バナーからAudible公式サイトにとべるので、関心ある方はどうぞ。
『夫のトリセツ』はまだAudibleにはいっていないようです。
本を2冊並べたら、夫と妻がよりそっているみたいになりました。タイトルの位置、あえて変えてるんですかね。
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