話題の中学受験マンガ、『二月の勝者』を読みました。大変勉強になりました。
早期受験が一般化する昨今、もっとも熱い中学受験の隠された裏側、合格への戦略を圧倒的なリアリティーでえぐりだす衝撃の問題作!
(『二月の勝者』Amazon内容紹介より引用)
このマンガを読んで初めて知ったこと
・中学受験生のうち、第一志望に受からないのは7割
・全国の小学6年生の数は110万人、東京都だけで10万人。都内で中学受験をする児童は約2万5千人。つまり4人に1人が中学受験をする。(2月1日にいつも通り登校したら、クラスの1/3が受験で休んでいた、という子も)
・東京の私立中学は183校。このうち、御三家などのいわゆる「トップ校」約20校に受かる人数は受験生の1割。
・6年生が1年間に塾に落とす金額は平均150万円。高いと200万円。ひええ。
・公立高校が高校募集をやめて中高一貫校になる流れがあり、「中学受験せず、高校受験から」の選択肢は減少傾向にある
・中学受験の偏差値は、高校受験の偏差値よりも10~15ポイント低く出る(高校入試は同学年のほぼ全員の成績から偏差値を出すが、中学入試は上位二割の生徒を母体として割り出すので、中学受験における「偏差値50」は同学年全体の平均よりずっと上の位置。御三家でも偏差値64くらい。)
登場人物が話した内容で印象的だったこと
・凡人こそ中学受験をすべき(プロのサッカー選手になれる確率は約0.21%しかないが、中学受験で御三家に受かる可能性は2.58%。憧れの難関校くらいまで入れれば10%弱。さらに勉強は努力のリターンが得やすい)
・スポーツなど「粘って頑張った経験のある子は、受験でも強いですよ」
・鉄道など文科系寄りの部活は、女子の目がない男子校の方がのびのびと活動している
・「勉強ができる」特技は、「足が速い」「ピアノが弾ける」のように、クラスのみんなから褒めてもらえない。「頭いいアピール」と嫌われることもある。
→勉強ができることが当たり前に褒められる世界、「できる」ことを本音で話しても平気な仲間、というのを学校で得られない子にとって、塾の居心地はとても良い
・夫婦の意見が一致していないと、中学受験は失敗する(子どもの前では「受験を応援している」というスタンスだけは統一する必要がある)
・子どもに課金して強いキャラに育てようとして何が悪い!受験は「課金ゲー」
・塾講師は「教育者」ではなく「サービス業」。すべて公立校のみで目的地(大学)に向かうのが在来線普通列車の旅なら、中学受験は「特急券」。塾は特急券を買う手伝いをするところ。まれに「公立中高から東大」のような特殊事例があるが、原則としてはお金をかけた者が圧倒的に有利。
→私はまさに「公立中高から東大」パターンなので、普通列車で「素晴らしい目的地」にたどり着いた真面目コツコツタイプのようです。そういう「特殊な事例を参考にしてもダメ」とばっさり切られてしまったので、とりあえず私は私自身の事例を我が子に当てはめようとするのは控えよう…と思いました。
面白かったです
こうした内容を、漫画を面白く読んでいるだけで「へえ~」と思いながら知ることができたので、なかなか良かったです。
もちろん出版年が2018年なのでうちの子が小学生になるころにはまた情勢が違うのでしょうが。
また、塾からみた受験業界(お金の話やノルマ、転塾をどう防ぐか、合格実績をどう出すか、など)についても初めて知ることが多かったです。すごい世界だなあ。
私は2巻までしか読んでいないのですが、続きも気になるので読んでみようかなと思っています。(でもここまで読んでも、「はあ~中学受験、自分はしたことないからよく分からなくて怖いよ~できればさせたくないよ~」と思っております…)
私の今の気持ちはこんな感じです。
我が子を公立小中学校に通わせたい、多様なクラスメイトと一緒に育ってほしい(私も夫も公立の小中高出身)、という気持ちと、
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) July 7, 2020
我が子にとって最適な学習環境を提供してあげたい、という気持ちと、
教育熱心な親がみんな子どもを私立に通わせたら公教育はどうなるのよ、という気持ちと。
この漫画で一番私の琴線に触れたのは、塾が「勉強ができることが当たり前に褒められる世界」というところですね。私自身は公立小学校&公立中学校出身ですが、私の記憶にある限り、勉強ができることで嫌味を言われたり嫌な思いをしたことはありません。結果論ですが、私には塾は必要なかったのだろうと思います。
でももし子どもが学校に通い始めて、「勉強ができるやつは嫌い」「勉強を努力するのはかっこわるい」という雰囲気で、それが合わなくてつらいようだったら、もうひとつの居場所としての塾、というのも検討する価値がありそうだなと思いました。(※もちろん親バカなので我が子は勉強が得意に違いないと思っています笑)
ただし、大学受験が大きく変わる可能性も
コロナ禍の影響で大学は大きく変わるかもしれない。そのモデルの一つを、ちょうど今日「木曜)の経済教室で柳川先生が書いておられます。内発的にこの10年以内に大変化が起こると予想したら楽観的に過ぎるでしょうが、米国の大学が先に大きく変われば、国際競争をする日本の大学も変わらざるを得ない。— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) July 16, 2020
玉井先生に教えて頂いた記事(7月16日の日経新聞『経済教室』)を読みました。(有料会員限定記事です)
簡単に要約すると、
・オンライン講義の広がりで、講義の受講者数を制限する必要がなくなってきた(講義を受けるだけなら、選抜せずに希望者全員に学ぶ機会を提供できる)
・ただし、実験や少人数での双方向での議論はリアルな集まりが望ましいし、オンラインでも双方向性の強い授業を行う場合は人数を制限する必要がある
・オンライン過程での受講が、入試プロセスに代わる新たな選抜になる
世界の主要な大学は、世界中の様々な境遇にある人々に対して無料でオンライン授業を提供し、そこで探し出された優秀な学生をキャンパスに呼んで学習させる。そういう方向性に変わっていくはずだ。
(日経新聞7月16日朝刊 経済教室より引用)
日本の教育はあまりにも入試に比重がかかり過ぎて、皆がその成果だけを気にする点が大きな問題とされてきた。また、その結果として、受験勉強にお金をどの程度つぎ込めるかが結果を左右するという格差問題も指摘されてきた。
ここで述べたオンラインを通じた新しい選抜と教育の形は、それらの問題をかなり改善させる可能性をもつ。
(日経新聞7月16日朝刊 経済教室より引用)
すごく良い記事でした。もともとあったオンライン講義への流れがコロナ禍で一気に加速して、私が受けたような「大学入試」は無くなるのかもしれない、と思いました。
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