先日、大竹文雄著『行動経済学の使い方』を読んで「子育てにナッジを応用したい」というブログ記事を書きました。
著者に褒められてしまいました
なんと、著者の大竹先生ご本人が私のブログ記事を読んでくださいました。
『行動経済学の使い方』を読んで下さって、子育てへの応用を提案されています。私も勉強になりました。→子育てにナッジを応用したい - おたまの日記 https://t.co/KF1TOFf5mb
— 大竹文雄 (@fohtake) July 9, 2020
「私も勉強になりました」ですって…!褒められてしまった!良かったー!
これは本を読んでブログを書く人に共通する不安だと思いますが、「自分の解釈が間違っていたらどうしよう」「勝手にこんなことを書いて著者に怒られないかな」という不安を大なり小なり抱えながらブログの「公開する」ボタンを押すんですよね。
もちろん大竹先生が私の前記事の一言一句をチェックしてくださっているかは分かりませんが、少なくともざっと読んで看過できないほどの間違い・解釈違いはなかったということかな、とひと安心しているところです。
行動経済学がご専門の先生によるコメント(嬉しい)
大竹さんの「行動経済学の使い方」の内容を、育児にどう応用するかについてのブログ記事。自分が読んでも為になる。 https://t.co/hb7L9287JX— むろ (@nii_tsuku) July 11, 2020
そして、大竹先生が上記Tweetに対しての返信でこんな研究を教えて下さいました。
子育ての行動経済学で私が子育てをする前に知っておくべきだったと思ったのは、航空管制官の子育てに関する研究です。忙しかった日の子育ての質が低下するというもの。オイコノミアでは紹介したのですが、本に書いてなかったかもしれません。https://t.co/C1IsTl4ZU6
— 大竹文雄 (@fohtake) July 12, 2020
教えて頂いたのは、この研究です。
Short-term and long-term processes linking job stressors to father-child interaction
この研究は15人の男性航空管制官とその子ども(4~10歳)を対象に行われました。仕事が大変(demanding)だった日は、家庭で子どもに対して非社交的(withdrawn)になる傾向があったとのこと。さらに、職場で不快な経験があると、その後の子どもとのコミュニケ―ションにおいてより怒りっぽくなったり、しつけに厳しくなったりするというエビデンスも得られたそうです。ストレスの多い、否定的な雰囲気の職場環境は、長期的に父親と子どもとの関係に悪影響をもたらすこともあるとか。
この研究の対象は男性(父親)だけですが、例えば女性(母親)であっても仕事で忙しかった日は子育ての質は同じように低下するのか、ここに男女差はあるのかが気になりました。
私自身について考えると、仕事が大変だった日は当然疲れているので、疲労によって子育ての質が低下する可能性は高そうだなと思います。一方で、職場で不快な経験があった場合、保育園に迎えに行って子どもが笑顔で「おかあさーん!」と駆け寄ってきてくれたりすると、「ああ、やっぱり私の居場所はここにあるんだ。子どもとの時間、癒しだなあ」と感じ、どちらかというと子どもに優しく接するような気もします。とはいえ日によって違うだろうし、「不快な経験」の程度問題かもしれません。
この研究結果をどう活かすか
共働き家庭の増加で、職場→子どもの影響は強まっていくのかなと思います。
個人のレベルで考えるなら、この研究について知っておくことで短期的には「今日は職場でストレスが多かったから子どもに意識的に優しくしよう/子どもに事前に説明しよう(今日は仕事で大変だったから、ちょっと不機嫌に見えたらごめんね。あなたのせいではないんだよ)」とか、長期的には「ストレスの多い職場にいると自分が辛いだけでなく、我が子にも悪影響があるかもしれない」と判断して異動や転職を検討する、という対応もとれるかなと思います。
企業や政府のレベルで考えるなら、子どもの健全な発達にはその保護者(父母両方)が健全な職場環境で働ける必要がある、ということかと思います。
「静かにして」の代わりに「アリさんの声で」
これは私のTweetをRTしてくれた方によるコメントです。
子育てへのナッジの応用といえば てぃ先生
— 松木 一永 (@KazunagaMatsuki) July 12, 2020
子供に「うるさい」や「静かに」は
抽象的で分かりづらく、何をすればいいかが伝わらないし、心理的リアクタンスも起きやすい
だから行動の見本を与え、悪い行動を止めさせるのではなく、正しい行動に変換させるために「アリさんの声で」
勉強になるなあ https://t.co/zmIDknLhX4
動画ではコツも紹介されています。
普段から「アリさんの声ってどんな声かな」「小さいから、こんな声じゃない?(ささやき声)」「象さんの声はどんな声かな」「象さんはこんな声じゃない?(大きな声)」という会話を子どもとしておくのがポイントとのこと。
静かにしてほしいときだけでなく、子どもにもっとはっきり大きな声で話してほしいときは「象さんの声で話して」と言うのが有効だそうです。
※余談ですが、この情報量を得るのに動画を5分見ないといけないのがちょっと苦痛でした。私は動画より文字を読んで情報を得るのが好きみたいです。YouTube、流行ってますけどね…。。
苦い薬を飲ませるには「味あてクイズ」にする
これは私が「子育て ナッジ」でTwitterを検索してみつけたものです。
子供への薬の飲ませ方と行動経済学(1/3)
— じゃぐ@食品研究 (@food_juggle) January 16, 2020
苦い薬を幼児に飲ませるのに困っている方必見!今回行動経済学のナッジで解決策を考えました
ナッジとは強制せずとも自発的行動を促す仕掛けの事
とある工夫で
絶対飲まない😖🤮
↓
次まだー?😀😆
と大口を開ける程の行動変容を促すことに成功しました!
(3/3)
— じゃぐ@食品研究 (@food_juggle) January 16, 2020
その後、普通のゼリーと薬入りゼリーの⚪︎×クイズに切り替えます
特に序盤に砂糖やゼリーを与えて楽しませることが重要
つまり、子供の目的がクイズを解くことにすり変わります
薬で苦味を感じつつも、次の問題が待ち遠しい😆の状態に
結果楽しく薬を飲み続け、薬がなくなっても続きました笑
まとめ:子育てにナッジを応用したい
このブログ記事で紹介した行動経済学/ナッジの活用は下記3点でした。
・仕事で疲れた日は子どもに意識的に優しくする/事前に説明する(不機嫌に見えたらごめんね。あなたのせいではないんだよ)
・「静かにして」の代わりに「アリさんの声でお話して」
・苦い薬を飲ませるには「味あてクイズ」にする
まだまだ応用可能性はありそうですね。
私の子どもはまだ3歳と1歳です。子育ての先は長いので、今後も行動経済学やナッジの考え方を子育てに応用できないか考えていきたいなと思います。「子育て×ナッジ」が流行して、偉い行動経済学者さんたちがみんなこのテーマで発信してくれないかな~と期待しております!
ナッジについて学びたい方は大竹先生の『行動経済学の使い方』を是非どうぞ。
さらに、育児×経済学だと中室牧子先生の『「学力」の経済学』が有名ですね。これもすごく面白いのでオススメです。
【合わせて読みたい】