おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

なぜ世界のエリートは美意識を鍛え、美術館にいくのか

山口周著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読みました。

 

そして、ものすごく似ているタイトルの本があったので興味本位でこちらも読みました。岡崎大輔著『なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』です。

 

アートが気になるお年頃

最近、私の周りでは「アート」の話題が良く出てきます。子育ての文脈でも、ビジネスの文脈でも。

なんとなく「アートは大事なんだな」と思いつつ、もう少しこのテーマについてきちんと考えてみたいなと思ったので読んだのですが、結果的に「これは読んで良かった…!」と思ったのでブログに書くことにしました。ちなみに、2冊とも読む価値があると思います。

読む順番としては、上にあげた順で読むと良いと思います。なぜなら1冊目で「アートはこんなに大事なんだ!」「でも具体的にはどうしたら良いの?」と思い、アートを学ぶモチベーションが高まったところで2冊目を読むと「なるほど、こうしたら良いんだ!」という解に出会えるからです。

 

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

1冊目では、美意識を鍛えることの重要性が様々な具体例とともに描かれています。p14-21には「忙しい読者のために」として簡潔に主張がまとまっているので、忙しい人はここだけ読めば3分で結論を得られると思います。少し引用します。

グローバル企業が世界的に著名なアートスクールに幹部候補を送り込む、あるいはニューヨークやロンドンの知的専門職が、早朝のギャラリートークに参加するのは、虚仮威し(こけおどし)の教養を身につけるためではありません。彼らは極めて功利的な目的のために「美意識」を鍛えている。なぜなら、これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからです。

(『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』p14より引用) 

 

美意識を鍛える方法

そして、p212からはどうやって美意識を鍛えるのか具体例が簡潔に書かれています。いわく、

絵画を見る(医大生にアートを用いたトレーニングを実施したら、皮膚科の疾病に関する診断能力が56%も向上した!)

哲学に親しむ(哲学は、システムを懐疑的に批判するスキルである)

文学を読む(「偏差値は高いけど美意識は低い」人は、文学を読んでいない)

詩を読む(詩を読むことでメタファーの引き出しを増やすことができる。そして優れたリーダーは、優れたメタファーを用いて、最低限の情報で豊かなコミュニケーションを行う)

とのこと。結構納得しました。

私はこの本を通勤電車内で読んでいたのですが、どんどん背筋が伸びていき、読み終えて電車をおりる頃にはつい「美しい歩き方」を追求してしまいました。美意識を高くもち、自分なりの「真・善・美」の基準をもって生きたいと思います。

 

なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?

1冊目の「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?」では「絵画を見る」方法について5ページ程度でさらりと書かれていましたが、2冊目の「なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?」では「絵画を見る」方法についてじっくりこってりまるまる1冊を使って丁寧に解説されています。

1冊目を読んで「美意識を鍛えたい!」「絵画と向き合いたい!」と思った人は、すぐに美術館に向かう前に、まずこの2冊目を読んでおくと良いのではないかと思います。

この本の構成

巻頭に8枚の絵が美しいカラー印刷で掲載されており、「作者名と作品名を伏せた状態で、あなたは、これらのアート作品から何を読み取りますか?」と書かれています。

よし、と気合を入れてじっくりアート作品と向き合ったのですが、その時最初に味わった面白さを1とすると、それから本文を読んで、事実と解釈を分けてみたり、模擬的に対話型鑑賞に参加することで、面白さが一気に1000くらいに跳ね上がりました。絵を見るってこんなに楽しいんだ!

アートとアート作品は違う

この本では、「アート」と「アート作品」を下記のように定義しています。

アート作品:アーティストが制作した作品。基本的に、モノ。

アート:アート作品と鑑賞者の間におこる不思議なコミュニケーション。モノではなく、コト。

本文に従って様々なアート作品と向き合うことで、通勤電車の中で「アート」を体験することができ、とてもワクワクしました。

今後してみたくなったこと

・美術館にひとりで行って、作品を一通りざっと眺めて、その中から自分が「面白いな」「きれいだな」と感じた作品をひとつ選び、「なぜ自分はこの作品が気に入ったのか?」と自分自身に問いかけてみる(1作品に30分くらいかけてみる)

・逆に、美術館であえて「素通りしていた作品」を選び、「なぜ、自分はこの作品が気にならないのか?」をじっくり考えてみる

・職場の同僚と一緒に「対話型鑑賞」を実践してみる

・家族(とくに子どもたち)と「対話型鑑賞」を実践してみる。とくに「ブラインド・トーク」をやってみたい

 

ちなみに私、幸運なことに一度だけ「対話型鑑賞」を体験したことがあります。時間は短かったのですが、ファシリテーターが非常に優れた方だったので、そのときに感じたワクワク感や、新たな発見に高揚した気持ちは忘れられません。

対話型鑑賞を試してみたい方は、著者の岡崎氏が所属するACOP アート・コミュニケーション研究センター|京都造形芸術大学のセミナーや、お近くの美術館等で開催されるイベントに参加されると良いと思います!

 

まとめ

書きたいことが多すぎてまとまりのないブログになってしまいました。すいません。もうまとめるのは諦めて、色々オススメして終わります。

 

とりあえず都内の人はゴッホ展とかどうですか。1月13日まで東京開催です。

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あと、こんなことを言われてしまうと、絵を実際に描いてみたくなりますよね。

20世紀の歴史において最も強力なリーダーシップを発揮した二人の政治家、すなわちウィンストン・チャーチルとアドルフ・ヒトラーがともに本格的な絵描きであったことは偶然ではありません。

絵を描くことはリーダーに求められる様々な認識能力を高めることがわかっており、実際に自ら芸術的な趣味を実践しているという人ほど、知的パフォーマンスが高いという統計結果もあるのです…(後略)

(『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』p70より引用) 

 真っ白な画用紙に突然絵を描き始めるのはハードルが高いですが、この「名画の続きを描く」塗り絵は、大人にも子どもにもオススメです!

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1冊目には、詩を読むことが大事とも書いてありましたが、詩に苦手意識がある方に熱烈にオススメしたい本がこちらです。

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谷川俊太郎の「生きる」の絵本もかなり良いです。

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そして文学に親しむというと、私は真っ先に「息子たちにレミゼラブルを読ませねば!」と思います。登場人物のあの人やあの人の生きざま/死にざまには「真・善・美」が詰まっているな、とか。

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以上です!!!長くてすいません!

良いお年をお迎えください。