おっさんずラブ -リターンズ-、最終回まで見ました。
面白かったし、数年ぶりに見た春田さんと牧と黒澤部長は懐かしかったし、新たな登場人物も魅力的で、エンターテインメントとしてはとても満足して視聴しました。
ただ、2018年に初めて「おっさんずラブ」を見たときほどに心が動かなかった、というのが私の実感です。どうしてだろう。
2018年に興奮冷めやらぬ私が書いたブログが下記です。
このときのブログでは、こんなことを書いてました。
・コメディ要素ありつつ、ゲイをネタとして使わない本気の恋愛ドラマ
・でも「親に孫の顔を見せられない」など、同性愛ならではの悩みも組み込み
・でもリアル現代日本よりずっと同性愛に寛容な周囲の人々。私もカミングアウトされたらこういう普通な反応でいたい
そうか、2018年の私は「笑いのネタとしてではなく、本気の恋愛ドラマとして描かれた同性愛者のドラマ」で、「周囲の人間が同性愛に寛容である」ということにすごく未来を感じたんだ、と思います。
私が子どもの頃のTVでは、「ゲイ」は笑いのネタとして扱われることが多かったけど、今はこういう描き方をするドラマがあるんだなあ、すごいなあ、と。
それから6年ほど経ちました。
私は…覚えている限りでも「弟の夫」をNHKオンデマンドで見たり、「きのう何食べた?」のドラマを見て原作漫画も買って、「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか」のドラマを見て原作漫画も読み始めて、男性同性愛が物語の大きな要素を占めるドラマや漫画を、とくに珍しいと思わずに見るようになりました。
そのなかで交わされる会話から、同性カップルが法律婚できないことでさまざまな制約を受けていることも知りました。私の身近なところでも同性愛者であることをカミングアウトした友人や後輩がいて、異性愛前提の社会で圧倒的少数派として生きることの困難さを聞かせてくれたりもしました。
実家の母とはこんな会話をしました。(私はプリズムは未視聴です)
実家の母が最近プリズムというドラマを観てるそうで、「同性愛のカップルは病院で家族として扱ってもらえないんですって。そういえばおっさんずラブもそうだけど、なんでドラマには男性同性愛しか出てこないのかしら?女性同性愛は観たことないわ」と聞かれたんですが、なにか理由があるんですかね?
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) August 23, 2022
そして、女性同性愛のドラマって見たことないな…と思っていたところ、「作りたい女と食べたい女」というドラマに出会いました。
見始めた当初は恋愛ものだと気づいていなくて、女性同士の友情の話だと思っていました。
もしかしてこのふたり、このあと恋愛関係になるんですかね…?
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) December 2, 2022
おお…「シスターフッド×ご飯×GL」って書いてあるわ。
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) December 2, 2022
これは母に教えてあげなきゃ。NHKで女性同性愛のドラマなんて画期的なのでは。https://t.co/KZxa5DEpEm
このドラマもつい最近最終回を迎えたのですが、とても良いドラマでした。
主人公の女性2人(野本さんと春日さん)がお付き合いを始めて、2人で住む部屋を借りようとするところで、「同性カップルが不動産を借りること」の大変さを知りました。
2人入居可、としている物件は家族やカップルを想定しており、この場合の「カップル」は結婚(法律婚)前提であることが建前になっていると。同性カップルはすぐに別れて出て行ってしまうのではないかと心配して部屋を貸してくれない大家さんもいるそうです。主人公たちはLGBT当事者が運営する不動産会社と出会って、ついに部屋を借りることができました。
知らなかった。
おっさんずラブの主人公2人は不動産会社に勤めているので、この辺の困難についてもちょっと触れてあったら良かったな、とふと思いました。
そしてこちらのブログを読んで、同性愛者の方が「おっさんずラブ」に抱く思いの一部を知りました。
「おっさんずラブ」に感情を引き裂かれているゲイの断末魔 - kokeのブログ (hatenablog.com)
現実世界ではいまでも同性愛者は結婚できないのに、「おっさんずラブ」の世界では「結婚」という言葉を無邪気に使いすぎているのではないか。当事者の苦悩を無視して同性愛作品をつくることは、マジョリティによるマイノリティの消費なのではないか、と。
なるほど…。
2018年には絶賛の声が多かった「おっさんずラブ」に比べると、特に当事者の方々を中心に2024年の「おっさんずラブ -リターンズ-」への批判の声を多く見かけたように思います。
それはおっさんずラブのファンたちのこのドラマにかける期待の大きさの表れでもあり、この6年間で日本社会が進歩したということでもあり、いまだに同性婚ができない日本社会への憤りでもあるのかもしれません。
春田さんと牧の末長い幸せを祈りつつ、野本さんと春日さんの末長い幸せを祈りつつ、現実世界の日本でも同性婚が法律で認められることを祈っています。
結婚の自由をすべての人に - Marriage for All Japan -
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