おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる

友田明美著『親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる』を読みました。

 

大反響を得た『子どもの脳を傷つける親たち』の第2弾。脳研究に携わる小児精神科医である著者が、本作では「親の脳とこころ」に焦点をあてていく。子どもの脳を傷つけ、健全な発達を阻むマルトリートメント(不適切な養育)から彼らを救うために、脳科学ができることとは何か―。

(Amazon説明文より引用)

 

私は去年、前著『子どもの脳を傷つける親たち』を読みました。親に加害の意図がなくとも、子どもに手をあげたり怒鳴ったりすることで子どもの脳は傷ついてしまうとのことで、大変勉強になりました。当時書いたブログ記事がこちらです。

www.shiratamaotama.com

 

『親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる』は、前著『子どもの脳を傷つける親たち』に続いて出版されました。

虐待の連鎖を止めるために書かれた本です

・日本では平均すると1週間に1人以上の子どもが虐待死している(p5)

・虐待死がこれだけ存在するということは、虐待被害を受けている子どもの数はもっと多い

・親を責めても解決しない。親の支援・親の治療こそが子どもを守ることにつながる

 

本書では、第1章で前著『子どもの脳を傷つける親たち』の復習を兼ねて、過度なストレスがおよんだときの子どもの脳や心身への影響を、第2章では虐待の世代間連鎖のメカニズムが説明されます。

そして第3章は虐待の世代間連鎖を断ち切る方策・治療法を、第4章では脳科学を用いた親支援や最新研究が紹介され、巻末には児童精神科医の杉山登志郎先生と著者の対談が収載されています。

 

全体を通して著者の問題意識(虐待の連鎖を止めたい)が伝わってくる良書だと思いますし、日本に住むすべての大人とこの本の問題意識を共有したいと思いました。私も子どもの虐待死のニュースをこれ以上見たくないです。

 

私もペアレント・プログラムを受けてみたい

友田先生の診療では、親を褒めたり共感したりすることで親の自己肯定感を高めたり、子育てプログラム(ペアレント・トレーニング、PT)などの機会を設けたりされているとのこと。PTで親の子どもに対する意識や行動を変えることで、子どもの発育が劇的に変わるそうです。

PTは当初は発達に障害のある子どもの親に向けたトレーニング法だったそうですが、子育て不安に悩む養育者の増加にともない、現在では広範囲で活用されているとのこと。PTを簡略化したPP(ペアレント・プログラム)もあるそうで、私も受けてみたい…と思いました。

少し調べてみたら、いろんな自治体の子育て支援事業としてペアレント・プログラムが提供されているようです。例えば神奈川県逗子市の事業はこちら。

ペアレントプログラム | 逗子市

自分の住んでいる地域でこうした機会があれば、是非受けてみたいと思います。

 

 

また、本書には私自身の子育てにも活かしたいと思うことがいくつか書かれていました。

 

日本では6割が体罰を容認するが、軽度な体罰でも子どもには有害

・日本社会では6割の人が体罰を容認し、「しつけのためならある程度の体罰はあってもよい」と考えている(p96)

・「加減せずに頭を叩く」行為を容認する人は1割だが、「お尻を叩く」「手の甲をたたく」行為は7割が容認。軽い体罰は仕方ない、という意識があるのではないか

・しかし、軽い体罰でも子どもの心は傷つく

・また、体罰はエスカレートする危険性がある

・軽度の体罰(例:お尻を叩く)であっても、子どもの問題行動につながる(例:攻撃的になりやすい)(p99)

厚生労働省の調査データを用いて、日本の子ども2万9000人の「育ち」を分析したところ、3歳半の頃に親から「お尻を叩く」などの軽い体罰を受けていた子どもは、5歳半になると「落ち着いて話を聞けない」「約束を守れない」などの問題行動のリスクが、まったく体罰を受けていない子どもと比べ、1.5倍ほど高まると言います。

 (2017年、東京医科歯科大学の藤原武男氏、ハーバード大学公衆衛生大学院のイチロー・カワチ氏が発表した研究による。本書p100より引用)

 

私自身は幼少期に母から「お尻100回叩き」などされて育ちましたが、私は息子たちを叩かずに育てようと思っています。

 

虐待は減らせるし、社会は変わる

・スウェーデンでは1979年に子どもに対するあらゆる体罰・心理的虐待を法律で禁止(世界初)(p138)

・法整備だけでなく、子どもをたたかずに育てるためのアドバイスを冊子にして配布したり小児科と協力した育児支援、啓発キャンペーンを実施

・1960年代には9割が体罰を行っていたが、2000年代には1割まで減少

・改正法成立から40年経ち、体罰の無い環境で育った子どもたちが親になり、次世代の子どもたちを養育している

・虐待が激減した結果、若者の犯罪(窃盗や器物損壊)も減少傾向にある

 

→日本でも2020年4月から親による体罰が法律で禁止されました(参照)。虐待の無い社会にしていきたいです。

 

共同子育ては子どもの脳を活性化させる

・産後の女性がひとりで赤ちゃんの世話をすることは、心身に大きな負担をかける(p152)

→これは「ワンオペ育児」の弊害として最近よく言われますね。そしてワンオペがつらいのは父親も同様とのことです。

父親もまた、子どもと一対一で毎日過ごしていくうちに、精神的な閉塞感が高まるほか、「誰にも認めてもらえない」「こんな毎日は耐えられない」といった気持ちを抱き、うつに似た症状になる人もいるといいます。

(本書p152より引用)

・人間は親子という閉鎖的な関係だけで日々を暮らしていくようにはできていない。

→これはコロナ禍で私も実感しているところです。

・親以外の大人たちとかかわりながら育っている子どもたちの脳機能はよく発達する(社会性が高まるなど)。かかわる養育者の数が多いほど、その傾向は顕著。

→祖父母が子育てに参加すること、幼い時から保育園で保育士とかかわること、学童保育などで親以外の大人とかかわること、などが例として挙げられています。(p153)

 

団塊世代は戦争のトラウマを引き継いでいるのではないか

巻末の対談で、非常に興味深い指摘がなされていました。団塊の世代(1947~1949生まれ)は、戦争のトラウマを抱えた親に育てられた結果、さまざまな「問題」を親から引き継いでしまった可能性があるというのです。最近問題の「老人暴力」、10~20年ほど前の「中年暴力」、1970年代安保で学生のストリートファイトなど、「団塊世代の一部はずっと荒れているという見方ができる」とのこと。

団塊世代の一部は、戦争で心が傷ついた親からマルトリートメントを受けて育ったことで、それがトラウマとなって表出したのではないか。

米国でも、80年代~90年代にベトナム戦争や湾岸戦争帰還兵が父親となり、家庭の中でいつも暴力の火種を抱えていたのではないかと書かれています。米国では2000年代にはいると親から子への暴力や性的虐待が減少しますが、これは「帰還兵たちが親世代を退いたから」といわれているそうです。

 

戦争が人の心を傷つけ、彼らが親になったときに子どもを虐待(マルトリートメント)してしまう。そして虐待が連鎖していく…というのは、恐ろしいことだと思いました。

※従軍経験者が全員子どもを虐待するとは書かれていません。念のため。私の祖父のひとりも従軍経験者ですが、優しい父親だったそうです。唯一子どもに手をあげたのは未成年なのに隠れてタバコを吸ったときだったと聞いたことがあります。祖父は特攻する予定だったそうで、8月15日で終戦してくれたおかげで私がいるんだなあと思っています。

 

まとめ

・虐待のない社会にしていくために、私も何かしたい

・私自身の子育てについては、①子どもを叩かない(お尻を叩くような軽い体罰もしない)、②なるべく多くの大人にかかわってもらって子育てする(祖父母、保育士、学童の先生など)、ということを意識しようと思います。

・また、近所でペアレント・プログラムが実施されたら絶対に参加します!

 

 

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