ドキュメンタリー映画『ママをやめてもいいですか!?』が2月29日(土)から公開されました。
映画『ママをやめてもいいですか!?』(通称:『ママやめ』)公式サイト
小泉進次郎大臣も昨年末、公開前にこの映画を夫婦で鑑賞され、「産後うつってこういうことだったのか」と男性育休の必要性を本気で理解されたそうです。(参照)
私は子どもが小さいので映画館でこの映画を観るのは諦めていたんですが、なんと新型コロナウイルスの拡大防止のため急遽オンラインでも公開することになったそうで、子どもの昼寝中に自宅のPCから見ることができました。(2人一緒に90分間まとめて寝てくれたうちの子どもたち、素晴らしい!)
オンライン上映、1900円で3日間見放題になるとのことなので結構オススメです。是非ご夫婦で見ると良いのではないかと思います。オンライン上映は3月13日(金)24時まで。
【追記】オンライン上映期間が5月末まで延長されました
ママをやめたくなる瞬間、あります
タイトルは『ママをやめてもいいですか!?』という強めの言葉ですが、実際に登場するお母さんたちは本気でママをやめたいわけではなく、「子どもは可愛いし大切だけど、ママをやめたいと思ってしまう瞬間がある」ということです。とても共感します。
ドキュメンタリー映画なので、ものすごくドラマチックなストーリーがあるわけではなく、実際の子育て家庭がいくつか紹介されます。床に飛び散るふりかけ、トイレの便器に手を突っ込む子どもなど、「子育てあるある」シーンでは思わず笑ってしまいました。
登場するのは、産後うつで通院中の女性や産後うつを乗り越え3人目を妊娠中の女性、産後うつで自死してしまった女性、過去のトラウマから子どもを抱きしめることができない女性など。そして、不器用ながら妻と向き合おうとする男性や、産後うつで妹を亡くしたお兄さんも出てきます。
産後うつになるのは女性だけではない
映画内で女性の産後うつの発生率は約9%、10人にひとりの女性が産後うつを発症すると紹介されます(出典はH25厚労省調査)。これほど多くの女性が産後うつになるということ、私も数年前までは全く知りませんでした。
映画に登場するノリコさんは2度の出産で2度の産後うつを経験していますが、当時ノリコさんが泣いている姿をみてご主人は全く別の捉え方をしていたそうで、「(妻は)子育てが楽しいのかなと思っていた。毎日忙しそうだけど充実しているようだし、子どもができて嬉しくて泣いているのかなと思ってた」と話します。一番近くで見ているはずの旦那さんにもなかなか分かってもらえなかったんですね。
この映画では、男性の産後うつについても紹介されます。実は男性も女性とほぼ同じ発生率(8.4%)で産後うつになるとのこと(出典は2016年カナダの研究、たぶんこれ)。これはカナダの調査なので日本でどのくらいの男性が産後うつを発症するのかは分かりませんが、映画ではパパたちが一家の大黒柱としての責任を背負いながら、いいパパになりたいと頑張りすぎて追い詰められる姿も描かれています。
例えばこんなパパの言葉がありました。
パパ「やっぱり認めてもらいたいんですよね。誰よりも、奥さんに。助かったよとか、ほんのひとときでも楽だったとか、言ってもらいたいなと思って色々やるんですけど、そうならないので…そうならないときに落ち込んだりとか、苦しんだこともありました、僕も」
専門家の方の解説で、「パパたちには、家事育児だけが家族のための活動ではない、という気持ちがある」「仕事というのは、家族を養うため、子どもが受けたい教育を受けられるため。嫌なことがあっても一生懸命仕事をしている。稼いだお金の大半は家族のために使われている。それを家族のための活動と認められないのは苦しい。」というパパ側の気持ちが説明されました。
特に奥さんが専業主婦の家庭では、外で働く苦しさを妻に分かってもらえない、というパパの苦悩もあるのかなと思いました。共働きの場合はどうなんでしょうね。
夫婦の話し合いの難しさとか
労働時間の長さから、なかなか夫婦での話し合いの時間がとれないというのも多くの家庭で共通するようです。それでもこの映画内では夫婦で話し合いをするシーンも映されています。話し合い、難しいです。
例えばこんなシーン。
ママ「もう少し自分の時間を減らしてくれても良いのかなって。お風呂に15分とか20分はいってないで、そういう日はシャワーだけにしてもうちょっと子どもの面倒みてくれないかな…」
パパ「わかってるよ。わかってるんだけど、そういう風に言われると、なんか嫌な感じがするんだよ…」
(私の感想)うーん…じゃあどういう風に言われたら良いんだろう…。奥さんなりに結構気を遣って話してると思うんだけどな…。
パパ「(きみは)朝から晩まで娘の相手して、ほんとに楽しんでやってて」
ママ「楽しくないよ…」
パパ「えっ、楽しくないの?!」
(私の感想)うん、楽しい瞬間はあるけど、基本的には乳幼児期の子どもと遊ぶのって楽しくないよね。
夫婦ともに映画に出ることを承諾されるくらいなので基本的に夫婦仲は良い方々なんだと思いますが、それでもこうした話し合いの風景を見ると心がささくれます。夫婦の話し合いって難しいですよね。
産後うつで亡くなった方について
産後うつで家族を亡くされた方が、「産後うつの現実をもっと知ってもらいたい」という想いから撮影に協力。しかし残された家族の傷がいえておらず、本人と特定される映像は使いたくないとの意向で、子どもの頃の写真を使ってナレーションがはいりました。
可愛い女の子の写真を見ながら、この子が大きくなって母親になって、産後5ヵ月で自ら命を絶ってしまったんだ、と思うのはなかなかつらいことでした。
専門家の方からは、産後うつによってお母さん本人が自殺してしまうこともあるし、母子ともに亡くなることもあるし、子どもへの虐待につながることもあるとの説明がありました。
産後うつで妹を亡くしたお兄さんから「困っている方がいたら絶対に勧めたいのは入院です。周りの目とかお金を気にせず、とにかく死なせないこと」「とにかく生きてください」との言葉がありました。
妹さんは快活で明るくて勉強もスポーツもできた子だったそうです。私の身近にも産後うつの経験者がいますが、本当に誰でも産後うつになり得るんだな、と思います。
その他、印象的だった言葉たち
自宅で映画を観ながらスマホにメモを取ったので、一言一句完璧ではないのですが、私が共感したり、印象に残った言葉たちです。
・いつか良い思い出になるよ…と言われても、今辛いの。今助けてほしい
・子どもになにかあったらすべて母親の責任
・社会から隔離されたような孤独感
・一日中子どもの世話と家事をして、はっと気がつくと、私、今日、声を出していない
・ママなんだからやって当然、という空気
・もっと頑張らなきゃいけない。母親なんだから
・よく、頑張らなくていいよって言われるけど…頑張らないで頑張る方法ってあるのかな
・お母さんになってから、熱いコーヒーが飲めないんですよ。いっつもぬるくなってるんですよ
観終わったあと、夫にも子どもにも優しくしたくなりました
映画を観たからと言って、ずばっと何かが解決されるわけではないのですが、育児の悩み、理解されない苦しさを多くの母親が抱えていて「わたしだけではないんだな」と思えたこと、旦那さんが上手に表現できないながらも妻のために力になりたいと思っている姿をみて夫の気持ちに思いをはせたこと、子どもたちがたとえ完璧なお母さんでなくともお母さんを大好きなんだと客観的にみて強く感じたこと、色々あいまって、映画を観終えたら夫にも子どもにも優しくしたくなりました。
私はまだ子供が1歳と2歳なので思春期の育児がどんなものなのか想像するしかないのですが、子どもが小学校高学年になっても、たまには抱きしめて「大好きだよ」と言いたいな、と思いました。
映画『ママをやめてもいいですか!?』、是非みてください!
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