おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

35歳から創る自分の年金

是枝俊悟著『35歳から創る自分の年金』を読みました。先週出版されたばかりの本です!

本書は、今年、2020年に35歳になる1985年生まれの著者が、同世代の35歳前後の読者が65歳になり年金を受け取り始める2050年頃までを見通して書いた「私たちのための年金の本」です。

(『35歳から創る自分の年金』p3より引用)

 

公的年金への不安がなくなりました

私は1988年生まれなので、著者より3歳下ですが、ほぼ同年代としてこの本を読みました。私の世代は「年金はもらえないかもしれない」というぼんやりとした不安を持っている人が多いと感じていますが、この本を読むとその不安が払拭されます。(世界がうらやむマクロ経済スライド、そして積立金の存在!)

本書では、公的年金の仕組みの解説と、日本全体の経済成長と労働参加のシナリオごとの「自分がもらえる年金額」の試算、そして資産形成の必要性(NISAとiDeCoの解説つき)が分かりやすく書かれています。

自分と配偶者がどれにあてはまるのか(①高収入男性、②高収入女性、③中収入男性、④中収入女性、⑤低収入男女、⑥出産退職パート復帰)、そして①目標シナリオ、②国力維持シナリオ、③衰退シナリオの場合、夫婦でどのくらいの年金がもらえるのか、一度見ておくと安心だと思います。

 

私がこの本を読んで得た結論

①まずは公的年金をベースに(もらえる前提で)老後の計画を立てて良いんだな

②とにかく共働きを続けよう

③つみたてNISAを始めよう (←やらなきゃやらなきゃと思って数年経ちました。やります)

 

私たちの親世代は、結婚出産で仕事をやめる女性が多数派でした(詳しくは本書p98)。政府が年金支給額の目安としている「モデル世帯」は、高齢者夫婦2人の世帯で、夫は会社員/公務員で40年間厚生年金に加入し、妻は40年間専業主婦というものです。

妻が働けば当然年金額は増えるので、モデル世帯に比べて、夫婦共働き世帯はより多くの年金がもらえます。もし日本経済が目標通りに成長せずに衰退シナリオになってしまっても、夫婦ともフルタイムで共働きを続ければ、現在の高齢者と比べ遜色ない年金額を受給できる、というのは嬉しい情報でした。

ただし公的年金には弱点もあるので、それを補うために「世帯年収1000万円以上の共働き世帯が、現在の高齢者並みの所得代替率を目指すのであれば、つみたてNISAとiDeCoの両方を夫婦で限度額いっぱいまで使うくらいの積み立て投資を」行うことがオススメされています(p215)。

 

共働きを続けるために

p127には、夫婦とも正社員で6歳未満の子がいる世帯の生活時間が掲載されています。

これは表でみたほうが分かりやすいんですが、夫が週に52.4時間を仕事に使っている一方で、妻の仕事時間は27.4時間です。夫婦とも正社員なのに、妻の仕事時間はほぼ半分です。これは妻が時短勤務にしていたり、子どもの病気で休んだりしている影響のようです。

そして家事・育児の時間は夫が11.6時間、妻が41.9時間。パッと見ると、夫は長く働く代わりに家事育児が少なく、妻はその逆なんだな、と思います。

しかしここで著者がしている面白い算数が、「仕事」と「家事・育児」の合計時間の比較です。

…仕事と家事・育児の合計時間でみると、夫の63.9時間に対し、妻は69.3時間と、妻の方が週5.4時間長くなっています。 

休養・娯楽等の時間をみると、夫が週19時間に対し、妻は週12.8時間と3割ほども少なく、睡眠時間も妻の方が短くなっています。妻は自分の時間を削って、かなり無理をしているのです。

(p128より引用)

妻がストレスに耐え切れず、不本意ながら仕事を辞めることになれば、1人分の収入がぱったりなくなってしまうリスクがあります。

(いまTwitter上で流行っている#100日後に死ぬワーママというタグを検索すると、ものすごい無理を重ねている現代日本の働く母親のリアルを見られます)

たとえ夫が家事・育児のために早く退社することで残業代が減ったり昇進が遅れたりしても、夫婦で働き続ける道を選ぶことを著者は勧めています。共働きを続けるというのは夫婦の選択なので、メリットもデメリットも夫婦で分担したいところです。

著者自身、2度の育休を取得して「育児休業を夫の家事・育児力の強化期間に」と実践にもとづく提案をされています。

この本はまさに子育てしながら書かれたようで、本書の結びに、「…元気に過ごしてくれた我が子、我が子を大事に預かり育てていただいた保育園の先生方に、心からの感謝の意を示し…」と書かれています。本の謝辞に保育士をあげる著者、珍しいですよね!

同世代の父親を見ていると、「仕事も家事も育児もやるのが当たり前」という人が多いので、時代は良い方向に変わっているのだな、と感じています。

 

おまけ:この人は信頼できる、と思ったところ

p108に、2013年当時著者が前著で書いた予想が外れた(短時間労働者の厚生年金加入が予想より多かった)ことが明記されています。以前、下記のブログでも「間違えました、すいませんと言える強さ」と書きましたが、何冊も本を出している人が最新の本で「前著に間違いがありました」と書いてくれると、「この人は信頼できる」と感じます。

www.shiratamaotama.com

著者の全著作を綿密に読んでいる人は少ないので、著者本人がこういう書き方をしなければ誰も気づかないかもしれないのに、あえて自分の誤りを明記する、という姿勢がとても好きです。

 

オススメです

信頼できる本だと思うので、年金に関心ある30代の方にはとてもオススメです。

 

上述したほかにも、

・年収850万円以上になったら生命保険を見直そう(遺族年金をもらえなくなるので)

・45歳なら今からでも正社員になれる

・独身を貫くと年金はどうなる?

・配偶者に先立たれたら

・子どもや孫のことを考えるなら、年金の支給開始年齢はなるべく繰り下げる

・本業あっての副業

・専業主婦になりたい人へ

・現役時代に使う可能性があるお金はNISAで、60歳まで取っておきたいお金は確定拠出年金で

・我々世代は、政府にマクロ経済スライドの無条件適用を訴えていくべき

・若い世代が希望する子ども数を持てる社会に

など、読みごたえある内容ばかりです。全部書くのは諦めたので、関心ある方は是非本で読んでください~

 

35歳から創る自分の年金

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