おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

公式SNSの「企業ファンのつくり方」と炎上について

タカラトミーの炎上、すごかったですね。

公式アカウントから謝罪が出ています。 

 

炎上の経緯をご存じない方へ

炎上のもとになったTweetそのものは既に削除されていますが、記事が色々出ています。

公式アカウントは21日、「#個人情報を勝手に暴露します」というハッシュタグをつけて、「(とある筋から入手した、某小学5年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね...!)」に続けて、リカちゃんの誕生日や身長・体重、「リカちゃんでんわ」の電話番号などのプロフィールを投稿していた。

さらに「久しぶりに電話したら、昨日の夜はクリームシチュー食べたって教えてくれました。こんなおじさんにも優しくしてくれるリカちゃん...」とリプライで続けていた。これらのツイートは24日11時現在で、すでに削除されているが、Googleキャッシュには残っている。

(引用:タカラトミー「不適切ツイート」を謝罪 物議の「リカちゃん個人情報を暴露」投稿か: J-CAST ニュース【全文表示】

 

さらに、このアカウントが過去には、「8(ぱん)月2(つ)日」にちなみ、「ぱんつ!ぱんつ!」と言っている人の形をした絵文字に添えて、人形の下着の商品をPRする投稿をしていたことも発覚し、批判がさらに広がった。

(引用:リカちゃん暴露騒動から見えるもの 世界と乖離する日本:朝日新聞デジタル

 

私がリアルタイムで思っていたこと

私は当初、「#個人情報を勝手に暴露します」とリカちゃんの身長体重や電話番号を掲載したTweetが回ってきたときに、強い違和感と懸念を持ちました。

小学生女子の個人情報を勝手に暴露するという「冗談」が面白いとは思えなかったし、このような発言が小児性犯罪者の認知の歪みを強化してしまうのではないかという危惧を抱きました。そして最近のキッズラインのベビーシッターによる性犯罪事件40代男性教諭による女子児童への強制わいせつなど、子どもが性犯罪の被害者になったいくつもの事件を思い出しました(小児性犯罪は年間1000件以上起こっています:参照)。

その後、大騒ぎになってTweetの削除と謝罪へといたりましたが、「良かった、あのような発言が社会に受け入れられないということが明確になったんだ」という感想を持ちました。

 

タカラトミーを擁護する声も

タカラトミーからの謝罪Tweetに対し、たくさんの擁護のコメントがついているのを見ました。

一部抜粋すると、「ヒステリックな親が多い」「あの程度の事で騒ぎ過ぎ。タカラトミーさんは何一つ悪くないです」「形式的に謝罪と自粛はしないといけないんだろうけど...特に気にするほどの事ではないので、担当者の方の処分が軽くなる事を祈ってます」「息苦しい世の中になったものですね」など。

なるほど、こういう意見の方々がタカラトミーのフォロワーには多いのか、彼らに「ウケる」ツイートをしていたんだな、と思いました。

 

リカちゃんの購買層は、あのTweetを受け入れられない人が多そう

リカちゃん人形を購入する人の多くは、娘を持つ親なのだろうと思います(参照:リカちゃん公式サイト)。彼らは、小学生女子の個人情報を勝手に暴露するという「冗談」を面白いとは思えないだろうと思います。

一方で、タカラトミーの今回のTweetは、小学生女子の個人情報を勝手に暴露するという「冗談」を面白いと思える人に向けて発信されたのだろうと思います。

リカちゃん等のタカラトミー商品の「ファン」と、Twitterタカラトミー公式アカウントの「ファン」とが、随分ずれてしまっていたんだな、と感じました。 

 

本を読みました

さて、こんなタイミングで、こんな本をあえて読んでみました。

自由すぎる公式SNS「中の人」が明かす 企業ファンのつくり方』というタイトルで、今年の6月に出版されたものです。

 セガ、キングジム、タカラトミー、タニタ、東急ハンズ、井村屋と、6社の有名な企業公式Twitterアカウントが紹介されています。

いずれも面白かったので、順に紹介します。

 

セガ

セガ公式アカウント🦔 (@SEGA_OFFICIAL) | Twitter

・中の人は女性

・ひとり編集会議でRT数やいいね数の予想と結果の差異を確認、PDCAサイクルを回す

・災害時にはツイートを控えることも(被災地の人が必要な情報にアクセスしやすくなるように、ノイズを減らしたい)

・企業としての情報発信8割、日々のおしゃべり2割

・個人として「ちょっとしんどい」とTweetしたこともある。どこまで個を出すかは悩ましいが、このTweetでフォロワーとの関係性が深まった

・「女の子はぜひ~」など、玩具の対象の性別を限定するツイートは控えるようにしている

特に子どもへの配慮が素晴らしいなと思ったのは下記ですね。

お子さまの場合は、ゲーム大会の優勝写真などは別として、掲載OKが出ていても真正面は避けます。将来的に嫌になるかもしれないので。

(p28 セガグループ「中の人」より抜粋)

また、タカラトミーさんにはこちらのセガさんの言葉を贈りたいなと思いました。

企業公式アカウントが、予想を超えたことをして面白がってもらうには、踏み越えてはいけないラインをまず把握しておくことが大切です。

(p42 セガグループ「中の人」より抜粋)

 

このTwitter世代分類も面白かったです。

・Twitter第1世代:10年前のTwitter黎明期。企業アカウントは定型文発信

・Twitter第2世代:2011年の東日本大震災でTwitter人口増加、企業アカウントが私的投稿もするように

・Twitter第3世代:今、企業ブランドと公式Twitterアカウントの乖離が修正されてきた段階

 

東急ハンズ

東急ハンズ (@TokyuHands) | Twitter

・中の人は男性(たぶん)

・毎日午前10時に朝のあいさつをする(予約機能は使わない)

・「中の人」ではなく、お客さんのすぐ近くにいる「そばの人」という感覚が良い

・情報発信2割、おしゃべり8割 ←これ、セガとまったく逆なのが面白いですよね

・企業アカウントは凹んではいけない。企業アカウントがネガティブな投稿をするメリットは何一つない

・常連さんとの会話はほどほどに。一見さんが入りやすいように

・ハンズ公式での炎上経験はないが、ハンズネットのアカウントでインフルエンザの予防接種を拒絶する不適切な内容を投稿してしまい、炎上(Tweet本文はこちらで見られます)。

→公式が対応してなんとか鎮火。炎上時は①迅速性、②誠実性、③透明性が重要。

 

キングジム

キングジム (@kingjim) | Twitter

・中の人は女性

・中の人が美大卒で、Twitterの140字のスペースを生かしたアスキーアートを投稿。今や「お家芸」と言われるまでに

・キングジムの2大製品はキングファイルとテプラで、ほぼ法人ユーザー向け。キングジム社の固いイメージを払拭するため、日々の雑談を大切にしている

・商品情報3割、雑談7割

・東日本大震災後、半年程度は宣伝を封印してコミュニケーションに集中した運用を続けた

・ここ3年くらい、「Twitterでキングジムを知って入社しました」という若手社員が増えている

 

なお、キングジムの「中の人」に非常に好感をもったので、こちらの本も読みました。地味な文具メーカーなのにフォロワー36万人の巨大アカウントとなった「つながる作法」が書かれていて、とても面白かったです。

 

井村屋

井村屋(株)公式アカウント(´∀`) (@IMURAYA_DM) | Twitter

・中の人は男性

・あずきバーは有名だが、「井村屋」の社名をもっと広く知ってもらうためにTwitterを開設

・販促ではなく、認知度・ブランディングに着目した(Twitterは「買って」と言ってそう簡単に買ってくれるメディアではないので)

・Twitterは「無料でできるABテストを毎日やっているんだ」と割り切り、どんな投稿が良い反応を得られるか、試行錯誤を続けた

・あずきバーをレンジでチンしてぜんざいになる過程をTwitterでレポートしたら、500人だったフォロワーが1万人を超えた

もともと、あずきバーという商品自体が、ぜんざいをそのまま凍らせてアイスにするというコンセプトなんです。社内の人間にとっては常識でも、世間的には知られていない、サプライズだったりすることがあります。

(p145 井村屋「中の人」より引用)

なお、あずきバーが固いのは「無添加・無着色で素材を凍らせているため」とのこと。初めて知りました。

 

また、トラブル回避のための色々な工夫をされているそうです。

・エープリルフールは2018年まで参戦したが、SNS上の全体的なエープリルフールに対する評価がネガティブに傾いていることを察知し、2019年はやめた

→この「世の中の空気」を敏感にとらえるところが、さすがだなという感じです。

・他アカウントとの会話は1,2レスで切り上げる

・食品を扱う企業であるため、言葉選びを慎重にしている(性的な内容が発祥のネットスラングは使わない、など)

 

タカラトミー

タカラトミー (@takaratomytoys) | Twitter

・中の人は男性

・試すのはタダ。トライアンドエラーを繰り返すことでヒットを狙う

・意識しているのは、①どこよりも早く最新情報を提供し、②双方向コミュニケーションに注力し、③毎日更新すること

・当意即妙なツイートをするには、トレンドワードを見て自社に関係することはないか、反射神経を磨いていく必要がある

突然浮上したハッシュタグに乗せられる話題があった場合、そのハッシュタグが盛り上がっているうちに投稿したほうがいいので優先度は高くなります。

(p193 タカラトミー「中の人」より引用)

→今回のリカちゃんの個人情報炎上は、トレンドにあがっていた「#個人情報を勝手に暴露します」のハッシュタグに対して「自社に関係することはないかな…、そうだ、リカちゃんの身長体重と電話番号だ」と反射してしまったのだな、と思いました

・フォロワーの熱狂ぶりは公式アカウントの中でも際立つ。多忙で投稿できない日でも、リプライは欠かさず返すようにしている

同社製品の多くは子供向けだが、公式Twitterのフォロワーの大半は親世代を含めた”大人”。そこでたまに発するほんのり”毒味”のあるツイートにも共感の輪が広がる。19年のバレンタインデーに投稿した「本日2月14日は仏滅」は2万5000いいね。そして19年のクリスマスを1ヵ月後に控えた11月25日の「くーりすますがおどしをかけてくるー」は、リツイート5万8000件、いいね数16万件超で過去最高を記録した。

(p205 タカラトミー「中の人」より引用)

→こうした「大人向け」「毒味のあるツイート」がウケた成功体験が、今回の炎上につながっているのでしょうか。中の人は試行錯誤を繰り返しながら「ウケる」ツイートを6年も探究してこられたわけで、それがいつのまにか「踏み越えてはいけないライン」を超えてしまっていた、というのは悲しい展開だな…と思います。

 

タニタ

株式会社タニタ (@TANITAofficial) | Twitter

・中の人は男性

・2017年に独立し、個人事業主として引き続き「中の人」業務を請け負っている

・Twitterでストレートな宣伝投稿はほとんどしない

・フォロワーさんが10年後の愛用者になっていただければ良い

・シャープの公式アカウントとの『君の名は。』再現即興劇や、人気「中の人」との旅行(タニタ式どうでしょう)など、他アカウントとのコラボに定評がある

・自分の好きなこと、興味あることをツイート(音楽やゲームなど)

 

コロナ禍の「中の人」たち

巻末には著者と6人の「中の人」とのオンライン座談会の様子が掲載されています。本当は2020年3月にリアルの座談会を予定していたのに、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてZoomでのオンライン座談会に切り替えたとのこと。

コロナ禍で、6人の「中の人」それぞれが活躍されていたようです。

タカラトミーは、多くの学校が臨時休校に入った20年3月2日、「今、我ら大人の長年の叡智を見せつけるとき!」だとして、「小中高生もできる『#休校中におすすめの過ごし方』をツイートしませんか……?」と呼びかけ、約4000本の映像を取りそろえている自社のYouTubeチャンネルを紹介。このハッシュタグには多数のアイデアが寄せられました。

(p268 「おわりに」より引用)

 

面白いので是非読んでください

この本、初めて知ることも多く大変勉強になりました。Twitterに関心ある方にはオススメです。

今回の炎上事件を、著者やここに登場される他の「中の人」たちはどんなふうにとらえているのでしょうね。

 

おわりに

タカラトミー公式アカウントの担当者が今後どうなるのか現時点では分かりません(担当者を変えたという報道が一部で出て、その後「そのような発表はありません」と訂正がありました)。

同じ「中の人」が続投されるにせよ交代されるにせよ、今回の炎上を「ヒステリックな親が多いな…」で終わりにせず、社会の一員としてモラルを守る大人の姿を見せてほしいな、と思います。

 

 

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