おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

AIに負けない子どもを育てる

新井紀子著『AIに負けない子どもを育てる』を読みました。

面白すぎて、電車内で叫びだしそうになりました。本を読んでこんなに興奮したのは久しぶりです。

 

新井先生の前著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』がものすごく面白かったので、その続編となる本書はワクワクしながら読みました。

www.shiratamaotama.com

 

前著を読んでいなくても本書は面白く読めると思いますが、「新井先生が言っている読解力とは何で、なぜ大事なのか(AIには読解力が無い)」は前著を読まないと今ひとつ分からないと思います。


前著への不満・要望

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』はとても良い本でしたが、下記の不満がありました。

・読解力が重要なのはよくわかった。でも、実際、AIに負けない読解力を身につけるにはどうしたら良いのか分からない

また、

・自分の読解力をちゃんと試したい。新井先生が開発した「リーディングスキルテスト(RST)」というのを受けてみたい

とも思っていました。

 

この続編『AIに負けない子どもを育てる』は、上記の不満・要望に見事にこたえてくれるものでした。

 

読解力テスト、満点とれる自信があったのに…

本書p50~80には「体験版リーディングスキルテスト」(略称:RST)が収録されています。7項目4問ずつ、合計28問の簡単なテストに回答することで、自分の読解力を測ることができます。

実は私は満点がとれる自信がありました。なぜなら前著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』に出てくる「読解力を試す問題」(AIには解けない)は易々と全問正解できたからです。

ところが、意気揚々と体験版RSTを解いてみたところ、1問だけ間違えました…。

もしこれからこの本を購入してRSTを体験予定の方がいたらネタバレしたくないので、私が間違えたところについては下記に白文字で書いておきます。読みたい方は反転させて読んでください。スマホの方はコピーしてメモ帳などに貼り付けると読めると思います。

 

【Q21】

私の回答:②、④

正解:①、②、④

間違えた理由:「教育を受けること」が「生活に必要な物資などを使うこと」だとどうしても思えなかった。教育は「生活に必要」か?大学の学費に消費税かかったっけ?と考えすぎたことが敗因。なお、国税庁によると「学校教育については、社会政策的配慮から授業料等を非課税として」いるそうです。

 

結果として、私は70点満点の69点となりました。

・係り受け解析、照応解決、同義文判定、推論、イメージ同定、具体列同定(理数)は満点(10点満点中、10点)

・具体列同定(辞書)は、9点(10点満点中)

悔しい…!!!

 

まだRSTを体験されていない方、是非やってみてください。本書によると、小学5年生でも満点をとる子はいるそうです。

所要時間は15~20分くらいだと思います。私は朝の通勤電車で解きました。

 

RSTを受けることで分かること

本書には、下記のように書いてあります。

この本を手に取っているあなたは、たぶん、少なくとも一つの項目で、6点以上の点がついていると思います。どれも6点を下回っている場合、この本だけでなく、教科書や新聞、ましてや契約書を正確に読むことが、そもそも苦痛でしょう。

(本書p79より引用)

 そして、RSTの点数を見ることで、自分の「読みの傾向」を把握することができます。本書内では代表的なタイプ「前高後低型」、「全分野そこそこ型」、「全低型」、「前低後高型」、そして「すべて10点満点型」について分かりやすく分析されています。

自分がどのタイプにあてはまるか、そしてその背景にはなにがあるのか、今後どのような能力を高めるべきなのか考えるととても楽しいと思います。

 

耳の痛い指摘

本書では貧困な生育環境が読解力低下に結びつく可能性を指摘しつつ、下記のようにも書かれています。

金銭的余裕があるパワーカップルの中にも、保護者があまりに多忙なせいで、子どもが起きている時間に『大人同士の会話を聞く機会』『大人とのコミュニケーションを取る時間』を十分に確保する時間が取れずに、語彙や推論力が十分に身につかないケースもあるでしょう。

 (本書p105より引用)

これ、夫婦共働きの我が家には大変耳の痛い指摘です。大人同士の会話を聞く機会を意識してもつようにしようと思いました。

 

新井紀子先生、好き

全体としてこの本は前著を上回る面白さで、かつ、具体的な処方箋がたっぷり入っていて大変参考になりました。我が家のバイブルにしていこうと思います。まず夫にも読んでほしい。

そして全編を通して感じたのが、新井先生の誠実さと、大きな危機感でした。新井先生は分からないことは分からないと明記しつつ、現時点で判明している情報に基づいて、読解力向上への具体的な取組みを提案・実施されています。

中には「こんなことを書いたら、不機嫌になる人がいそうだな…」ということも、事実は事実として淡々と書かれています。例えばp127には「小学校1,2年生しか受け持ちたくない」と言い張る教員が相当数いることと、ある自治体でそうした教員のRST結果が低かったことを明記されています。

RSTを受検する経験を通じて、教科書を読めないことが、高学年を教えたくない原因だったと、本人が自覚するだけで一歩も二歩も前進だと思うのです。

(本書p128より引用)

Twitter上ではこの記述について「低学年を受け持つ教員をバカにしている」などと憤慨されている方を散見しましたが、私はそうは思いませんでした。新井先生のような方が、科学的根拠にもとづいて自由に発言できる社会であってほしいと思います。

 

読解力低下と、その処方箋

前著では「読解力が低下していることを示す科学的な根拠はない」と書かれていましたが、新井先生の実感としては「読解力の低下」は実際に起こっているとのこと。

そして、その要因のひとつは、黒板に書かれた文字を書き写すようなある意味「昭和的」な授業から、穴埋めプリントやEdtechのような「先進的」な授業に移行してきたことではないかと指摘されています。

先生が黒板に書いた文章をひたすらノートに写すような単純作業が、実は読解力向上に寄与しているとは驚きでした。

 

本書の第8章では「読解力を培う授業」の例が3つ挙げられています。どれも大変納得いく授業です。一部の自治体ではすでに導入されています。

我が子が小学校に入学するまでに、このような授業をどこの小学校でも実施できるようになってほしいと切に思いました。

 

また、p280からは幼児期、小学校低学年、中学年、高学年それぞれの時期で読解力を高めるために重要であると思われるポイントが詳細に書かれています。大変参考になりました。すべて抜粋することはムリだししたくないので、関心ある方は是非本書を読んでください。

以下に少しだけ紹介します。

 

今後の我が家の子育て指針(幼児期)

・なるべくバギーにのせずに、歩かせるようにする(p277参照)

・身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やす(p280参照)

・同じ絵本を繰り返し読む(p281参照)

・子どもと買い物する際は、電子マネーでなく、現金で買い物をする(p281参照)

そして、

・紙の新聞をとりつづける(これはこの本には書いてありません。私がこの本を読んで勝手に決めたことです)

・自分のスケジュールをアプリで管理するだけでなく、壁掛けカレンダーで子どもにも共有する(同上)

・私自身の読解力を高めていく(同上)

→この訓練のために、「体験版RSTの解説を書いてみる」ことを試みました。

www.shiratamaotama.com

 これは、巻末の「菅原氏の体験談」に触発されたものです。菅原氏は、読解力が非常に低く、論旨が良く分からないメールや論文を書いていたそうですが、RSTレビューに取り組むことで劇的に読解力を向上させました。

私ももっと読解力を向上させたい!と思ったので、「もし息子が体験版RSTを受検して、間違えた問題について質問されたらこう回答しよう」という観点で、全28問の解説を試みたものです。

本書には解説が書かれていないので、体験版RSTを受検して間違えた問題があったが、間違えた理由がわからない…という方の参考にもなると良いなと思います。

 

この本は、是非買ってください

本書の印税は、すべてedumapの構築とメンテナンスに充てられるそうです。

edumapは、国公立・私立すべての幼稚園・保育園・小中学校・高等学校に対して、基本的なホームページを無償で提供するプラットフォーム(2020年春に向けて準備中)とのこと。

学校の行事や持ち物などの日常の連絡から緊急時の情報まで、そして日本語が母語でない家庭への情報提供などの観点から、こうしたホームページでの情報発信は非常に重要だと思います。応援したい。

この本は、図書館で借りようと思わずに、是非買って読んでください。

 

※こんな長文を最後まで読んでくれた人、とっても読解力が高そう。。