おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

ゲーミフィケーションの面白い事例集

「『依存症ビジネス』のつくられかた」という本に載っていたゲーミフィケーションの事例(「第3部 新しい依存症に立ち向かうための3つの解決策」に掲載のもの)が面白かったので、全部ネットで調べました。 

本を読んでいてイメージが湧きにくかった事例も、動画などで説明されているのを見つけて非常に理解が進んだので、関心ある方のために共有します。

 

目次

 

ゲーミフィケーションとは

・ゲームではない体験をゲームにしてしまうこと

・2002年にコンピュータープログラマーのニック・ペリングが考案した造語(p371)

・2010年にグーグルとベンチャーキャピタル大手数社に着目されたことで日の目を見る

 

街をきれいにし、人々を健康にした「楽しいキャンペーン」

スウェーデンの広告会社DDBストックホルムが2009年に実施し、世界中で話題になったようです。フォルクスワーゲンのエコカー発売に伴うキャンペーンとのこと。(Fun Theory, p366)

本で紹介されている3事例を検索したら動画を見つけたので動画も貼っておきます。

 

電子ピアノの階段

・地下鉄のオーデンプラン駅の階段を電子ピアノに変身させた

・エスカレーターより階段を選ぶ人が通常より66%増えた

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世界一深いゴミ箱

・ゴミを投げ込むたびに、そのゴミがはるか下まで落ちていくかのようなヒューっという効果音が流れる

・公園にある通常のごみ箱には毎日80ポンド(約36キロ)のごみが捨てられるが、この「世界一深いゴミ箱」には2倍のごみが集まった

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ビンの回収ボックスをゲーム機に

・正しくビンを入れると、ライトが光って得点が表示される

・近くにある普通の回収箱に正しいリサイクルゴミを投入するのは1日2人程度だったのが、ゲーム機になった回収箱には毎日100人以上がビンを捨てにきた

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面白いですね。このFun Theoryキャンペーンはもう終わってしまって公式サイトも無くなっているようですが、YouTubeで動画を見られて良かったです。

 

単語の暗記という苦痛を進んでさせた伝説のサイト

・freerice(https://freerice.com/

・ユーザーが単語問題で正解を出すたびに、サイトがコメ10粒を食糧支援の慈善団体に寄付する

・ゲームのレベルを60段階に細かく分け、勝ち進めば単語が難解になる。正解すると木製のお椀のイラストにコメ粒がたまっていく巧みなグラフィック

・単語学習クイズでアクセスを多く集めることでサイトに載せる広告の単価が上がり、広告収入が増える

・チームプレイも可能。最高スコアのグループと個人のランキングが毎日更新される

 

私も試してみましたが、だんだん英単語の難易度が上がっていく感じが絶妙ですね。自分が楽しいだけでなく慈善団体への寄付になるというところも上手に設計されているなと思いました。

 

運動を続けるのに、ゲーミフィケーションをこう使う

・2011年に立ち上がったウェブサイト「FITCRACY

・ユーザーが自分の運動記録をサイトに入力するとポイントがたまり、一定の目安でバッジが授与される

運動を1人でしたいタイプはサイトを個人的な運動記録として利用し、社交の機会にしたいタイプはサイト内の交流機能を活用する

 

私は最近リングフィットにはまっていますが、運動習慣の継続とゲーミフィケーションの相性はすごく良いなと思います。私は運動を社交の機会にしたいと思っていないのでひとりで黙々とリングフィットを続けていますが、フレンドにポイントを贈れる仕組みなど、社交の機会にしたいタイプへの配慮もあるようですね。

www.shiratamaotama.com

 

 

電動歯ブラシのスマホアプリ

・電動歯ブラシのフィリップス・ソニッケアーから2015年に発売された「ソニッケアー・キッズ」

・歯磨きをするとポイントがたまり、キャラクターにエサをあげることができる

・「子どもが気に入って遊びすぎてしまい、なかなか寝ようとしない」問題が生じたため、アプリを修正し、歯磨きが終わったらキャラクターが疲れて寝るようにした

 

私は長らくソニッケアーの電動歯ブラシを使っていますが、歯のツルツル感がすごく良いです。

ソニッケアーキッズの対象年齢は4歳からなので、私もそろそろ長男に買ってあげたいです。(下記ブログでもソニッケアーキッズに触れてます)

www.shiratamaotama.com

 

健康促進のゲームアプリ

・健康管理アプリ「Keas」 ※調べてみたところ、2016年にWelltokに買収されたのでもう存在しません

・ユーザーが質問に答えて、ワークアウトのメニューと食事内容を入力すると、その生活が健康にどう影響しているかアプリが分析して説明する

・法人用アプリも提供しており、社内でチーム対抗戦にすることを推奨

・世界最大の製薬企業ファイザーも導入し、健康的な社員が増加した

 

・低所得地域に住む子供の健康増進を狙いとする「ヘルスラボ」は非営利で運用されている ←これ、検索してもそれっぽいものを見つけられず…

・米国政府も、全国的に児童の健康習慣を促進するためにゲームの活用を検討している

 

勉強をミッションに変える

・2009年にニューヨークで誕生した新しい学校「Quest to Learn」(Q2L)

・習得する知識は普通の学校で習うものと同じだが、Q2Lの生徒はこれをゲームを通じて勉強する(例:6年生と7年生が人体について学ぶ際、主人公が小さくなって患者の身体に入り、内側から治療する。13週間で7つのクエストをこなす)

・ニューヨーク市の学力試験で、Q2Lの生徒の成績は平均より約50%も高い

・Q2Lの生徒の8年生から10年生にかけての知的成長は、平均的な大学生が4年かけて実現する成長とほぼ同じ

・平均的な生徒の出席率はなんと94%で、教師の定着率も90%

 

なるほど、学校での勉強をゲームにすることで成績や出席率が向上するんだ…と大変興味深く読みました。私自身は伝統的な日本の公立小中学校の授業が苦でなかったタイプなので勉強のゲーミフィケーションにそれほど価値を感じませんが、子供のタイプによっては素晴らしい効果がありそうだなと思います。

 

小中学生だけでなく、大学生にもゲーミフィケーションは有効なようです。

・2011年にNYのロチェスター工科大学が導入した「Just Press Play」プログラムは学年全体で追求するクエスト(例:新入生の90%以上が無事に単位を取得出来たら全員に褒美が出る)

 

コールセンターのモチベーションを高めるには?

・カギは内発的動機

・2000年にIT系企業家4人が立ち上げたコールセンター委託請負サービス「liveops(ライブオプス)」は、ゲーム化を通じて内発的報酬を実現

・スタッフは30分単位の好きな時間で在宅で働く

・スタッフのモチベーション維持のためにゲーム化したダッシュボード(管理画面)を導入

・スタッフ一人一人の専用ページに進捗状況を表すグラフがあり、売上につながった割合、特定の売り上げ目標に達成したことを示すトロフィーやバッジ、個々人の課題などを表示。売上トップのスタッフを紹介するリーダーボードもある

・ゲーム要素を導入してからサービスの評価が10%向上、電話の待ち時間が15%短縮

 

これはすごいですね。在宅勤務だとモチベーション維持が難しいというのはコロナ禍で全世界的に課題になっていると思いますが、進捗状況グラフやトロフィーの表示など、ゲーミフィケーションの活用でモチベーションを高められるというのは良いなと思います。コールセンター以外の職種で応用しようとすると評価基準など色々考えることが多そうですが。

 

芝刈りのゲーミフィケーション

・貧困層の青年を雇用し、無料の芝刈りを提供する「Raining Men & Women Lawn Care Service」 ←本では「Raising Men Lawn Care Service」と書かれていましたが、その後「Women」が追加されたようです

・資金はクラウドファンディングで集めている

・柔道のような色分けシステム:白いTシャツからスタートし、芝刈りを10回やったら橙色のTシャツに昇給。20回で緑、30回で青、40回で赤、50回を超えれば黒Tシャツになれる

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研修をゲーム化すると、仕事のパフォーマンスも定着率も向上する

・ヒルトン・ガーデンインは、ゲーム開発会社Virtual Heroes(バーチャルヒーローズ)に依頼してホテル従業員のバーチャル研修プログラムを開発させた

・3Dのバーチャル映像で表現されたホテルで、制限時間内に宿泊客の世話をする内容

・実際のホテル勤務で従業員が評価される指標(スピードや適切さ)を利用

この動画の開始後1分くらいから実際のゲーム画像が見られます。面白い!

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・Virtual Heroesはヒルトンで成果を出したのち、テレビ局のディスカバリーチャンネル、エネルギー会社のBP、バイオベンチャーのジェネンテック、米国陸軍や国土安全保障省にも同プログラムを提供

・ゲーム性のある研修を受けた社員は仕事に対する自信と意欲が20%高かった

・受け身で指導されるのではなく、自分で能動的に、しかも実践的な体験を通して学ぶことで働く内発的動機に大きな差が出る

 

VRで「痛み」を軽減する ー医療への応用

・1996年にワシントン大学の研究チームが疼痛耐性に対するバーチャルリアリティ・ゲームの効果を研究

・火傷を負った患者は、患部の消毒や着替えの際に、日常的に強い痛みに耐えなければならない

・患者の一部に催眠療法がよく効いていたことに着目し、専用のバーチャルリアリティ・ゲーム「スノーワールド」を開発した(参照:http://www.vrpain.com/

・ペンギンやマンモスに雪玉を投げるバーチャル冒険ゲーム

・患者の苦痛の大半は痛みを予期することで生じるので、ゲームで気を紛らわせる効果は大きい

・火傷に包帯を巻く処置に「すさまじくつらい」と答えていた患者たちが、この没入型のゲームをしているときの気持ちを「楽しい」と答えた

・火傷以外の痛みにも効果があり、2001年9月11日の同時多発テロに巻き込まれた人の心的外傷(トラウマ)の軽減にも活用

 

痛みやトラウマを軽減させるためにゲーミフィケーションが活用できるんですね。私も痛いのが苦手なので、この辺の研究がどんどん進むことを願います。陣痛の軽減もできるのかな…?

 

トラウマの消し方:テトリスの活用

・オックスフォード大学の精神科医エミリー・ホームズは、2009年にPTSDに対する斬新な介入方法を実験

・意図的に心的外傷を与えるシミュレーション:交通事故などのトラウマ的コンテンツを12分間視聴→30分間待機(本物の被害者が救急外来に運ばれるまでのタイムラグを疑似体験)

・被験者の半分はテトリスを10分間プレイ、残りの半分はそのまま座って待ち続ける

・ビデオを観たあとに座っていただけの被験者は1週間で平均6回のフラッシュバックを体験したが、テトリスをした被験者は平均3回未満だった

・記憶を長期的な記憶に固定するために必要な意識の力が、ゲームに吸い取られていたため、最初のトラウマ的な記憶が固着しなかった

・週の終わりにふたたび被験者を調べると、テトリスをしていた被験者のほうはほとんど心的外傷の症状が見られなかった。ゲームが「認知のバキューム」の働きをした、と研究チームは表現している

 

辛いことがあったときに、テトリスのようなゲームをすることで長期的なトラウマになることを防げるかもしれないというのは朗報でした。

私は小学生の頃にテトリスに夢中になったことがありますが、本当によくできたゲームだと思います。

 

ちなみにネットで検索してみたら、実際の交通事故被害者71人に協力してもらった臨床実験も実施されていました。2017年の記事です。

www.ox.ac.uk

「外傷後、患者が病院の救急外来で待機している間に、短い行動介入の一部としてテトリスをプレイすれば、侵入的な記憶が少なくなる」とのこと。

 

※ちなみに上記のリンク先の画像はテトリスではなくカタミノですよね。画像を選んだ人が間違えちゃったんでしょうか?

カタミノ、私も持ってます。

www.shiratamaotama.com

 

ゲーミフィケーションへの批判

p389から、ゲーム化への批判も掲載されています。

①ゲームは本当に脳を活性化するのか?

→高齢者の認知機能の衰えを防ぐとして様々な脳トレゲームが開発されているが、「脳を鍛えるゲームが認知機能の衰えを防ぐ」という説得力ある科学的エビデンスは今のところ存在しない(2014年時点)。ただ単純なゲームが上手になるだけで、長期的期間の生活向上には寄与しないという指摘も。

②なんでもゲームにすればいいのか?

→たとえゲーミフィケーションに効果があるとしても、物事をゲーム化すること自体を批判する意見もある。ゲーミフィケーションは他の体験を「つまらないもの」に矮小化する。健康的な行動の大切さを軽んじてしまうのではないか。

③楽しいから良いのだというお墨付きが、動機をゆがめる

→ゲーミフィケーションがもたらす楽しさは、体験全体に対する認識を変えることで、大事な動機を排除してしまう可能性がある。楽しくなくなれば運動もやめてしまう。

 

結論:ゲーミフィケーションは諸刃の剣

ゲーミフィケーションはパワフルなツールだ。パワフルなツールは何でもそうであるように、これは諸刃の剣である。(中略)

ゲームで人を依存症にすることもできるし、患者の痛みを取り除き、退屈を楽しさに変え、遊び心と寄付活動を合体させることもできるのである。

(「『依存症ビジネス』のつくられかた」p394~395より引用)

 

ゲーミフィケーションの事例、この本に掲載されているもののほかにも続々と世界中でいろんなものが産まれているようです。

すごく面白いし、私もこのパワフルなツールをうまく使いこなしていきたいなと思います。

 

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