ひとつ前のブログ(下記)で「日本でのスマホ依存/ネット依存についてもう少し知りたくなったので、FBの友人でこの分野の専門の方にオススメいただいた2冊も読みました」と書きました。
日本でのスマホ依存/ネット依存について読むべき2冊
読んだのは『スマホ依存から脳を守る』『ネット依存症から子どもを救う本』の2冊です。いずれも、今読んでおいて良かった…と思いました。
一度スマホ依存/ネット依存になってしまうと治療は大変なようです。できれば「予防」で済ませたいです。これからの時代を生きる子どもたちを育てる親として、我が子にPCやスマホを持たせる前にこうした本を読めたことは幸運だったなと思います。
私がこれらの本を読んで特に書き残しておきたいと思ったことを備忘録代わりに下記に残しておきますが、すごく良い本だったので関心のある方は是非本も読んで欲しいです。
『スマホ依存から脳を守る』、2020年出版
2019年5月27日、新聞の朝刊に世界保健機関(WHO)の報告が載りました。25日の総会で、電子ゲーム依存症が国際的に「ゲーム障害」という疾患として認められたという記事です。一言でいうと、ゲーム依存症が、ギャンブル依存症などと同じ精神疾患に分類されたのです。
「ゲーム依存症は疾患である」
この事実を認める以前に、社会はゲームそしてそのプラットフォームとなるスマホ(スマートフォン)を受け入れすぎたー。
(『スマホ依存から脳を守る』p4より引用)
「自己責任」「親の育て方が悪い」で済ませてはいけない
著者は久里浜医療センター精神科医長としてネット依存症やゲーム依存症の患者を診て来られていて、こうした依存症を「自己責任」「親の育て方が悪い」と言ってしまうことに警鐘を鳴らしています。
・子供はテレビや雑誌の広告、友人から強い影響を受けてスマホやゲーム機器を欲しがる
・しばしば親は仕事や家事・育児に疲れているので、子供(特に思春期以降)の強い要求に負けてしまい、スマホやゲーム機器を買い与えてしまう
・「その子どもにとって適切でない、もしくはリスクの高い依存物であるスマホを買い与えるように、周囲に巧みに誘導されているのです」
・スマホ依存症になると、特に中学生以降の世代では、親がいくらうまく立ち回ろうとも、それだけでは依存症の改善や重症化を阻止できないことがある
・未成年者に対する実効性のあるゲーム使用に関する法律はなく、国や自治体は子どもたちが深夜までスマホやゲームをするのを容認している(家庭の自主性に任せている)
・これから社会を背負って立つ未成年者の依存症は何がなんでも防がなくてはならない、そして依存症からの回復を「社会全体」で応援すべきである
(『スマホ依存から脳を守る』p187〜188)
本書では2019年に都内の公立小中高へのスマホ持ち込みを東京都教育委員会が容認したニュースについても触れられていて、「学校という、依存物であるスマホを持ち込まなくてもよいほとんど唯一の聖域が消えてしまう事態」を強く懸念されています。
よく言われる意見と、それへの反論
また、下記のQAがとても参考になりました。
・スマホやオンラインゲームにのめり込んでいる子供に「何かに集中するのは良いことだ」「とことんやらせたらそのうち飽きる」という意見もあるようですが?
→とことんスマホやオンラインゲームをさせるようなことは避けるべきです。ネットやゲームは依存物に該当し、やればやるほど「負の強化」が進行する(p45)
・ゲームやネットを幼年期に禁じていると、のちにできるようになった時に”反動”でのめり込んでしまうのではないか?
→そんなことはない。人間は快楽を我慢する(=ゲームによって得られる快楽を我慢する)ことはそれほど困難ではないが、不快を我慢し続ける(=ゲームをしていない不快)ことは困難である。遅くにゲームやネットを与えて依存するのであれば、もし早期からそれらを与えられていたら、もっと激しく依存していたのだろうと考えられる(p86)
子どもにいつスマホを持たせるのか
子どもにスマホを(習慣的に)使わせるのはなるべく遅くしましょう。少なくとも中学卒業まではスマホを持たせなくても問題ありません。
(『スマホ依存から脳を守る』p217)
私は子どもにスマホをいつ持たせるのかまだ明確な答えは持っていませんが、スマホが強力な依存物であり、特に未成年者はそれに抵抗する力がまだ弱いのだということはよくよく認識して今後の方針を考えたいです。
なお私が初めて携帯電話を持ったのは大学1年生、スマホデビューは大学4年生でしたが、私が中高生の頃にスマホがそれほど普及していなかったことはとても幸運だったと思っています。
そしてもう一冊の本がこちらです。
『ネット依存症から子どもを救う本』、 2014年出版
日本の中高生の実態
・厚生労働省の研究班が2012年4月に、初めての「インターネット依存」に関する全国実態調査を実施
・インターネットへの依存性が極めて高く、「病的使用」と考えられる中高生は8.1%に上る(約51万8000人と推計) ←欧州ではネット依存症が強く疑われる割合は4.5%なので、日本の数字は「かなり深刻な状態と言える」
・男子はオンラインゲーム、女子はSNSに依存しがち。病的使用と不適応使用を合わせると、男子の約2割、女子の約3割が危険領域にあると考えられる
※いずれも『ネット依存症から子どもを救う本』参照
なお、最新データが知りたくなったのでちょっと検索してみたところ、厚労省研究班の調査は2017年にも実施されたようです。
下記記事で引用されているのは2017年度の推計で、ネット依存が疑われる中高生の数が93万人とされています。2012年で約52万人だったので、この5年間で激増していますね。
厚生労働省研究班の2017年度の推計によると、オンラインゲームやSNS(交流サイト)などに没頭する「ネット依存」が疑われる中高生は国内で93万人に上り、7人に1人の割合だ。新型コロナウイルスによる在宅生活が長期化したことで、さらに依存傾向が強まる恐れがある。
コロナによる依存傾向の高まりは私も懸念しているところです。
PCやスマホの使い方ルール
「ルールは家庭ごとに異なっていて良い」という前提で、ルールの例が掲載されています。
・パソコンはリビングに置いて家族で使う
・使用時間は1日2時間まで
・夜の使用は10時まで
・オンラインゲームはしない
(中略)
・どんなサイトやサービスを利用しているか、親に報告する
・約束を破ったら1日使わない
(引用:『ネット依存症から子どもを救う本』p121)
私も息子たちにスマホやPCを使わせる場合には、事前にルールを話し合わないといけないなと思っています。ルール作成にあたって、この本はとても参考になります。
ネット依存度チェック
厚労省の調査で使用されたインターネット依存の診断質問表を、下記で誰でも試すことができます。自分が当てはまるものをクリックしていけばネット依存度が判定できるので、関心ある方はぜひ試してみてください。
IAT(インターネット依存度テスト) | 依存症スクリーニングテスト | 病院のご案内 | 久里浜医療センター
そしてネット依存症の専門病院は数が少なく、心療内科やメンタルクリニック、スクールカウンセラーに相談したら「様子をみましょう」などと言われて依存症が悪化していくこともあるとのこと。
ネット依存症の専門病院としてこの本に掲載されているのは久里浜医療センター(神奈川県)、成城墨岡クリニック(東京都)、大阪市立大学医学部附属病院、東北会病院(宮城県)、希望ヶ丘病院(熊本県)です(2014年時点)。ご参考まで。
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