『「依存症ビジネス」のつくられかた 僕らはそれに抵抗できない』という本を読みました。 2019年の本です。
世界中が絶賛した話題の書、ついに上陸!スマホ、フェイスブック、インスタ、ネットフリックス、ゲーム、メール…。新時代の依存症「行動嗜癖」の衝撃。悪用厳禁!のめりこませる手口とその仕組みの全貌を暴く!!
(『僕らはそれに抵抗できない』Amazonサイトより引用)
私は小学生の頃にテトリスに没頭し、大学生の頃にmixiにハマり、2016年から2年ほどポケモンGOに熱中し、今は毎日Twitterをチェックしています。どれも依存症と呼ぶほどでは無い(と思う)ものの、ずいぶんな時間を消費しました。
私にとっては本当に耳が痛くそして勉強になることの多い本でした。依存症ビジネスの巧妙さを学んだことで、私が今後の人生を豊かに生きていくために気をつけるべきこと、そして自分の子どもたちが依存症ビジネスの犠牲者にならないために親として気をつけるべきことを知ることができました。
特に書き残しておきたいこと
・依存症になるリスクが最も高いのは成人になりかける頃である。思春期に依存症にならなければ、のちに発症する確率はかなり低い(p81)
・仕事用メールの70%は受信から6秒以内に読まれている。メールのために中断した作業に集中力が戻るまで25分かかると言われている。仮に1日の中で均等な間隔で25通のメールを開くとしたら、理論上、生産性を最大限に発揮する時間はゼロということになる(p123)
・アップルウォッチなどのウェアラブル端末は運動の履歴を追跡してくれるが、身体が示す疲労のサインに気づく力を阻害する。カロリー計算や歩数計算は、内発的動機を曇らせる。数値目標を達成することでしか健康になれないというシグナルを送っているから。(p226)
・子ども時代にスクリーンを眺めて過ごす時間の長さは、その後の人生における世界とのかかわり方を左右する(p304)
健全なスクリーン使用の3条件
アメリカ小児科学会(AAP)は「2歳未満の乳幼児はテレビその他の娯楽メディアに触れさせるべきではない」としていますが、この本では現代の子育てで多少はスクリーンに接することは避けられないとして「健全なスクリーン使用の3条件」を挙げています。(p307)
①スクリーンで見ているものを現実の世界の体験に結びつけてとらえるよう、親が子どもを促していくこと(転移学習)
②受動的な視聴よりも能動的な関与がある方が望ましい(見ながら動作をしたり、親とコミュニケーションをとったりしながら遊べるアプリを選ぶ)※テレビ視聴でも、スポンジボブのような展開の速い番組は受動的に浴びることになってしまうが、セサミストリートのようなスローペースの番組であれば画面の前で子供が呼びかけに答えたり体を動かしたりしながら見ることができる
③スクリーンの使用はコンテンツの中身で決めるものであって、テクノロジー自体の面白さに流されて使うのは避ける(デバイス操作に心を奪われて延々と没頭するのではなく、じっくり話の展開を追う体験にする)
我が家の息子たちにはスクリーン時間が長くなりすぎないようにしているつもりですが、この3条件は今後も意識していきたいです。
親の態度
子どものネットとの関係について望ましい親の態度は、「近づきやすい態度」「穏やかな態度」「子どもの状況について知ろうとする態度」「現実的な態度」をとることだと書かれています。(p312)
こうしてみると当たり前のように感じますが、いざ自分の子供がネット依存の兆候を示したときに「怖い態度」「キレる態度」「よく理解していない態度」をとってしまいかねないので、理想的な態度を普段からキーワードにしておきたいです。
「動機付け面接」のカウンセリングアプローチがすごく良い
1日に何十回もインスタグラムをチェックせずにいられない16歳の少女を例に、カウンセリングアプローチが書かれていてとても勉強になりました。(p323)
①最初の質問
・0から10の数字の中で、0は「行動を変える気にならない」で、10を「行動を変えようという意欲がある」だとしたら、今のあなたはどの数字ですか。
②数字を答えたら、その理由を探る(「変えたくない」と判断することも許容する)
③オープンエンドの問い
・インスタグラムを利用することのメリットはなんですか?
・あなたの希望としては、何がどうなってくれたら嬉しいと思いますか?
・インスタグラムは、あなたの幸せにどう影響していますか?
・どんなやり方なら、自分はもっと楽になると思いますか?
私自身の行動を変えるにも、私が将来的に子どもの依存症に悩んだ場合にも、このアプローチは活用できそうだなと思います。
私はインスタはあまり使いませんが、上記の「インスタグラム」を「Twitter」「ブログ」「Facebook」などに置き換えれば、私にとってより良い使い方を実践していくための指針ができそうです。
おまけ:面白い取り組み
依存症を克服できないのは意志が弱いからではない。環境の問題だ、とのことで、環境を変える面白い取り組みがたくさん紹介されています。
・オランダのデザインスタジオ「ヘルデルグローエン」では、夕方6時になるとデスクが自動的に天井へ消えていく(PCを物理的に使えなくする)
・ドイツの自動車メーカー「ダイムラー」では、休暇を取る際、受信メールが自動的に削除される設定にできる(送信者には自動返信で緊急の場合は別の社員が対応する旨が案内される)→休暇明けにメールボックスがいっぱいにならないので、休暇中にメールチェックしなくなる
・目覚まし時計「スヌーズ・ン・ルーズ」はネット経由で所有者の銀行口座とつながっていて、スヌーズボタンを押して二度寝するたび、決まった金額が口座から引き落とされ、自分が好まない慈善団体に寄付されてしまう(例えば民主党支持者なのに、共和党支援団体に10ドル寄付してしまう)
・「パブロック」というデバイスは、しないと決めた動作(例:Facebookへのアクセス)をした場合に軽度の電気ショックを与える。このデバイスを使って禁煙に成功した人も。
・「MOTI」は小動物を思わせる可愛いガジェットで、持ち主が望ましい行動をしたときにボタンを押す(ジョギングや早寝、水分補給など)。しばらくボタンを押さないと不満げな光と音を発する。
とりあえずここまでにしますが、本書にはさらにゲーミフィケーションを利用した面白い事例もわんさか載っています。関心ある方は是非読んでみてください!
日本の話
上記の本は米国の著者によるものでしたが、日本でのスマホ依存/ネット依存についてもう少し知りたくなったので、FBの友人でこの分野の専門の方にオススメいただいた2冊も読みました。
長文になりすぎるのでまた5日後に公開します〜。(既にここまでで3000字弱で、日本の話について書いたらさらに3000字を超えてしまいました)
→公開しました!
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