この本を読んだ理由:友人による熱烈な推奨
私は先日31歳の誕生日を迎えたんですが、尊敬する友人のひとりが「誕生日おめでとう。村木厚子氏の本読んだ?読んでない場合、31歳をこの本で始めることを勧める」とわざわざメッセージをくれたので、早速読みました。
村木厚子著「日本型組織の病を考える」です。
もっと良いタイトルがあったのではないか
読み終えて思ったのは、「この本のタイトル、失敗してない??」ということです。
村木厚子さんといえば、厚労省の郵便不正冤罪事件で逮捕・拘留され、無罪となったのちに事務次官にまでなった人です。彼女が「日本型組織の病を考える」というタイトルで本を書くからには、検察への恨み節とか、女性差別を受けながらも働き続けた厚労省の問題点を厳しく糾弾するとか、そういう本だと思うではないですか。
この本はもっとずっとポジティブで建設的で、日本社会をもっと生きやすくするために具体的に何ができるかを前向きに示してくれる本でした。
勝手ながら、タイトルはこういうほうが良かったのではないかと思いました。
タイトル案:「無実の罪で逮捕されたときは目の前が真っ暗になったけど、今はとっても幸せ!みんなにも幸せになってほしいから私の話を聞いて!」
頭の悪そうなタイトル案ですいません。
この本の概要
第1章で、無実の罪で逮捕・拘留された事件の経緯を詳述。これは非常に読み応えあって面白かったです。検事による証拠の改竄など、まさに「闇」の世界でした…。私はミスしたら隠さず上司に相談しようと心に誓いました。
第2章は、拘置所で初めて知ったことを読者に共有してくれます。薬物や売春で有罪となった幼い顔の女性受刑者たちの話など。村木さんのような賢くて知的好奇心の強い人が拘置所に半年近く拘留されると、こんなことに気づいて、こんなプロジェクトが始まるんだ、すごい!と思いました。
第3章は、おそらくこの本のタイトルから想像される内容に最も近い、「日本型組織で不祥事がやまない理由」について書いています。さすが事務次官まで勤め上げた人のいうことは説得力があるなと思いました。
第4章は、公務員の生き方について。公務員を褒めてあげよう、というのはとても納得。後述します。
第5章は、村木さんの半生の振り返り。1986年に男女雇用機会均等法が施行されるよりも前、1978年に新卒でキャリア官僚になった村木さんの職業人生はお茶くみで始まったそうです。そして村木さんは男女雇用機会均等法の普及に尽力したひとりです。
第6章は、退官後に村木さんが始めた「世直し」の活動について。困難な状況におかれた少女たちを支援する「若草プロジェクト」や累犯障害者を支援する「共生社会を創る愛の基金」など。素晴らしいです。
そして終章は、「闘いを支え続けてくれた家族へ」。私も村木さんのご家族のような家族を築きたいと思いました。
特に引用したいと思ったところ
その1 公務員を褒めよう
公務員を「褒めて」伸ばせば市民も得をする
公務員だった私からはなかなか言いにくいところもありますが、地方で政策の話をする時には、「地方公務員を褒めてあげて下さい」とよく言うんです。特に制度改正があった時などは、優秀な人がその分野を担当していることが多いですからと。
公務員は、それでなくても叱られて、責められることが多い。だから、良い仕事をしたと思った時には、どうぞ、ちょっと褒めてあげて下さい、そうすれば喜んでもっと仕事をしますからと話しています。
(p137より引用)
納得!!!
早速ですが、私が最近めっちゃ良いなと思ったのはこれです。母子手帳の電子化!厚労省えらい!
厚労省は母子の予防接種歴や血液型などの健康情報を電子管理できるシステムを開発する。今夏にも自治体に紹介を始め、20年夏ごろから提供を始める。自治体が導入にかかる費用の3分の2を上限に国が補助する。
(有料記事なので、一部だけ引用しました)
これについては先日ブログでも触れましたが、母子手帳の電子化はどんどん進めてほしいです。いま電子母子手帳のアプリを提供している企業はどうなっちゃうのかがちょっぴり心配ですが。
その2 30年前の日本の職場、やばい
日本初の「セクハラ研究会」を作った理由(中略…大蔵省にかなりキワドイ女性の水着姿のポスターが貼ってある話など)
次なるハードルは予算の権限を持つ大蔵省でした。(中略)「必要性はわかった。でも『セクハラ』という週刊誌ネタの言葉を神聖な予算の企画書に使うのはだめ、この言葉を一切使わずに企画書を今晩中に書き直してきたら予算をつけてやる」というので、みんなで必死に考えました。セクハラ研究会から「非伝統的分野への女子労働者の進出に伴うコミュニケーションギャップに関する研究会」に名称を変え、何とか、無事に予算をもらうことができました。
(p164より引用)
さすが、のー〇んしゃぶしゃぶとかしていた組織はすごいな…とか、セクハラという言葉を使わずにセクハラ研究会をうまく表現するものだな、とか。今、わたしは特にセクハラを意識させられることなく安心して日々勤務していますが、後進のために道を切り開いてくれた女性の先輩たちの努力に感謝です。
その3 50代になるのが楽しみ
「30代は子育てで大変、40代は責任が重くなって胸突き八丁、50代はこんなに会社が私の言うことを聞いてくれていいのかしらと思うようになる。60代、定年後は天国よ」 (中略)
企業で部長や役員として活躍している人たちが、こう話すのを聞いて、年を取るのも悪くなさそうだと思いました。
(p175より引用)
へー、そうなんだ!50代、60代になるのが楽しみ!
村木さんは2人の娘さんのお母さんでもあります。仕事と子育ての両立の大先輩がこんな風に言ってくれると、働き続けることに希望が見えるなと思います。
村木さんの「老後」、見習いたい
上述した、困難な状況にある少女たちを支援する「若草プロジェクト」は、村木さんが退官後にご主人や仲間たちと設立した一般社団法人です。プロジェクトの趣旨も素晴らしいけど、これを長年連れ添ったご主人と一緒に始めるところが本当に良い「老後の過ごし方」だなあと思いました。※まだ63歳の人に向かって「老後」って失礼だったらすいません
ウェブサイトも良い感じなので、関心あるかたは是非みてみてください。
あと、村木さんが設立した累犯障害者の支援基金はこちらです。
村木さんの本、他にもあるようなので読んでみようと思います。まずは最新刊、と思う方にはこちら大変オススメです。