私のための政策ではない
先日、政府広報オンラインから投稿されたこちらのTweetが、子育て当事者のあいだで大きな話題になっています。
私のざっくり観測では、9割以上は批判的な声のようです。
妊婦さんや子育て家庭のみなさんへ!
— 政府広報オンライン (@gov_online) January 12, 2023
「伴走型相談支援」が始まります!
出産・育児の見通しを一緒に立てるため、お近くの相談機関で、妊娠届出時、妊娠8か月頃、出産後の3回面談を行います。
1回目と3回目の面談を受けたら、合計10万円相当のギフトがもらえます。
あー…。
つわりで苦しんでいる時期と、出産間近な時期と、産後の大変な時期に…役所で面談を受けると…10万円相当のギフトがもらえる、と…。
なるほど…。
うん、これはたぶん、私のための政策ではないのでしょう。
私のような人(=妊娠したら喜んで母子手帳を受け取りに行って、定期的に妊婦検診に行って、産後の生活の見通しも立っていて、自力で保活できる人)にとっては、「3回面談にいくのはちょっと面倒だけど、10万円相当のギフトがもらえるならいくか…」という話なんだと思います。
※とはいえ私の場合は妊娠8ヶ月ごろは切迫早産で絶対安静だったので面談には行けなかっただろうと思いますが
一方で、妊娠したけど母子手帳を受け取りに行かず、定期的に妊婦検診にいくこともなく、未受診妊婦としてリスクの高い出産に臨んでしまう人や、産後に手伝ってくれる家族もおらず生活がままならない人、そして「行政に相談する、頼る」ということができない人は存在します。
例えば下記は2009年の大阪での調査ですが、500人に1人が未受診妊婦、という調査結果です。
妊娠、出産にまつわるデータ集:第6回 未受診妊婦の割合 | ミキハウス 妊娠・出産・子育てマガジン
こういう人を行政が早期に発見して重点的にフォローするために、「伴走型相談支援」がスクリーニングの役割を果たすのではないか、とも思うのです。
「妊娠したら役所に行くと10万円分のギフトがもらえるらしい」という情報が多くの人に届くことで、これまで行政が介入できなかった人も役所に足を運んでくれるかもしれないと思えば、今回の伴走型相談支援には大きな意味があるのかもしれません。
とはいえ
これだけ多くの方が批判の声をあげている背景には、出産経験者たちが
・妊娠初期〜産後の体調不良を自分の身で経験しているから
・行政に「相談」しても役に立たなかった経験をしているから
・児童手当や扶養控除を削られて、「面談のご褒美に10万円」に理不尽を感じるから
という理由があるのではないかと思います。
私は一度だけ役所の助産師さんに相談した時に「頑張り過ぎないで」「上手に周りを頼って」といった精神論のみで具体的な支援策を何も示してくれず、「私はカウンセリングを受けにきたのではありません」と言ったことがあります。
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) January 18, 2023
あれ以来行ってないので、あの人が例外的なのかどうかわかりませんが。
相談に行ってファミサポと一時保育を案内されたが、ファミサポは登録者が少なく誰ともマッチできず、一時保育は予約が取れなかった、という方もお見かけしました(参照)。
せっかく伴走型相談支援を行うなら、窓口にたつ保健師さん・助産師さんが提供できるメニューをちゃんと充実させて、「相談に行ってよかった!」という人が増えるようにしてほしいなと思います。
オンライン面談が可能だと良いですね
厚労省のサイトを見ると、伴走型相談支援の欄には「SNS・アプリを活用したオンラインの面談・相談、プッシュ型の情報発信、随時相談の実施を推奨」との記載があるので、もしかすると(自治体によっては)オンライン面談が可能だったりするのかもしれません。
あくまでも「推奨」なのできっと自治体によって差が出てくるだろうと思いますが。
オンライン面談が可能なら、私のように切迫早産で安静が必要な妊娠8ヶ月の人も、産後に赤ちゃんを連れて役所に出向くのを避けたい人も(感染対策も大事!)、上の子がいて役所に行くのが大変な人も、助かるだろうと思います。
役所がオンラインで面談する場合、ツールはZoomかTeamsですかね。業務で使い慣れている人は良いけど、広く使ってもらうならLINE電話かなあ。
政府に意見を送れます
伴走型相談支援についてはこのページでフルの動画(4分弱)を見られますし、匿名で意見・感想を送れるようなので、政府に何か意見を送りたい方はぜひどうぞ。
妊婦・子育て家庭に寄り添う「伴走型相談支援」|政府インターネットテレビ
おまけ:「伴走型相談支援」の理想に一番近いのは明石市のおむつ定期便では?
明石市のおむつ定期便の仕組み、素晴らしいんですよね。
見守り支援員さんが3000円相当の赤ちゃん用品を毎月自宅まで持ってきてくれて、その場で子育ての相談ができるそうです。
見守り支援員(配達員)が赤ちゃんと保護者にお会いし、紙おむつなどの赤ちゃん用品を毎月無料でお届けします。子育ての悩みやお困りごとがありましたら気軽にご相談ください。相談内容に応じて、市の子育てサービスや子育て関連施設、関係部署を紹介し保護者と市の連携をいたします。
(中略)
この事業は、配達に合わせて赤ちゃんと保護者の見守りを目的としています。そのため、おむつ等の支給品は、見守り支援員と対面し受け取ることが必要になります。
もちろんこれは産後の話なので、「妊娠中から産後まで伴走する」今回の伴走型相談支援の代わりになるものではないと思います。
でも、「3回面談に出向くと/オンラインで相談すると10万円のギフト」より、「産後に毎月自宅まで3000円相当の赤ちゃん用品を持ってきてくれる」の方が、より育児に伴走されている感じが(私は)します。
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