つらくてTVを見られなくなりました。
ニュースを見てしまった5歳長男と3歳次男は「ちなちゃん、かわいそうだね」と言っていました。
牧之原市静波にある認定こども園「川崎幼稚園」では5日、河本千奈ちゃん(3)が駐車場に止められた通園バスの車内に、およそ5時間にわたって取り残され、熱中症で死亡しました。
水筒が空になっていたこと、上半身の服を自分で脱いだようだということ、発見されたときの体温は40℃だったということ。詳細な情報が伝わってくるたびに、閉じ込められたのが私の息子たちだったら…と想像せずにいられません。泣いただろう、苦しかっただろう、怖かっただろうと、やりきれない気持ちになります。
2021年7月には福岡の保育園で5歳の子が送迎バスに取り残されて熱中症で亡くなる事件がありました。
福岡 中間 送迎バス園児死亡事件 当時の園長ら4人を書類送検 | 事件 | NHKニュース
このニュースで私はすごく衝撃を受けたんですが、一方で「きっとこの事件を踏まえて全国の園で取り残し防止策が取られるに違いない」と思っていました。まさかまた起こるなんて想像もしませんでした。
もう「次」が無いようにしたい。
不十分だった再発防止と、諸外国では既に導入されている「置き去り防止の仕組み」
2021年の福岡の送迎バス園児死亡事件のあと、厚労省からは「安全管理の徹底」のお願いの紙が都道府県宛に出たとのこと。でも安全管理は徹底されず、今回の事件は防げませんでした。
一方で韓国では、2018年に同様の事件が起こってすぐに道路交通法を改正。バス車内の園児置き去りを防ぐ装置の設置を義務付けたそうです。同様の仕組みは米国やカナダのスクールバスにも既に導入されていると。
運転手は、エンジンを切ったあと、3分以内に車内の後部に設置されたボタンを押しに行かなければいけません。もし運転手がそれを怠ったら、アラームがなる仕組みになっています。
運転手の注意力に頼るのは限界があるため、運転手が後部座席まで歩いて見に行くための仕組みを導入したわけです。
もし日本でも韓国のように法律を改正してバス車内への置き去りを防止する仕組みができていれば、今回の事件は防げたのではないかと思うと悔しくてなりません。
どうして私は去年の事故のあと、自分の子供にクラクションの鳴らし方を教えただけで終わってしまったんだろう。閉じ込めを防ぐ仕組みが各国で導入されていることも、車内センサーが開発されていることも、日本の園バスにはそうした仕組みが全然導入されていないことも、知りませんでした。
これ、早速子どもたちに教えてみたけど、4歳長男はまだしも2歳次男には口頭でどんなに教えてもいざというとき実践するのは難しそう。
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) July 31, 2021
一度どこかでクラクションを思い切り鳴らす練習をさせたいけど、時間と場所をかなり選ばないと近所迷惑だし… https://t.co/f90FJmF50U
他人事ではない
子どもの車内置き去り、本当に他人事では無いと思っています。この2022年7月の調査結果はぜひ読んでください。
自動車内装材を取扱う複合型専門商社の三洋貿易、 熱中症事故につながる「子どもの車内置き去り実態調査」結果を公表
~社会的セーフティーネット構築が弱い実態が明らかに~
・直近 1 年間で一般ドライバーの 5 人に 1 人が車内置き去りを経験
・子どもの車内置き去りを見かけても 87%が何もせず素通り
・幼稚園・保育園園児の車内置き去りの要因について、50%以上が人手不足を指摘し、現場からは置き去り検知システムの導入要望も
このアンケートに回答した幼稚園・保育園バスの送迎担当者の2%にあたる5名は「置き去りにされた園児の熱中症症状を経験」したとのこと。命が助かったから大きなニュースにならなかったということなのでしょう。
きっと日本の各地でヒヤリハット事例はたくさん起こっているのだと思います。
幼児の親にできることってなんだと思いますか。
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) September 7, 2022
・親の行動:バス通園しない(←でも保育時間中のバス移動は防げない)
・自分の子供に教える:車に閉じ込められたらクラクションを鳴らす(←3歳未満には困難か)
・保育園への依頼:取り残しを防ぐツールの導入(例↓)https://t.co/YxrORks0yW
さまざまな置き去り防止の仕組み
「(親が/保育士が)気を付ける」では防げないのはわかります。
上述した韓国や米国のスクールバスのような「バスの後部座席にボタンを設置する」仕組みのほかに、下記のような仕組みも開発・提供されてきています。
こういう仕組みを園バスに設置することを義務づけるか、設置の補助金出すとかしてくれないでしょうか。厚労省さま。
たとえばこれは無料で使えます。バスの乗降時に名札裏のQRコードを読み取る仕組み。
これは台湾で開発されている幼児置き去り検知(Child Presence Detection、CPD)システム。Wi-Fiで1分以内に車内の生物運動を検知するそうです。
これは日本の村田製作所が提供予定のサービス。車内の幼児置き去りをWi-Fi電波で検知するソリューションとのこと。いつ実装されるんでしょう。
これも上記の台湾のシステムも普通の乗用車向け製品のようですが、バスにも応用できるのでしょうか。
既に量産化されているものも見つけました。
VitaSense™
乗用車の車内に取り残された子供を検出するセンサー
2020年、世界初の車載子供置き去り検知センサーを量産化しました。IEE社は10年以上前から子供が車内に取り残され、熱中症のリスクにさらされている事の問題を認識していました。
米国だけでも毎年平均37人の子供が車内での熱中症で亡くなっています。その多くは、保護者が子供の車内放置を認識しない状態で発生しています。
バス用センサーは2023年度中に日本でリリース予定とのこと。
LiDAS™
バスの車内に取り残された子供を検出するためのシステム
園児をバスで送り届けた後、園児が降車したかを目視確認だけに頼るのは十分ではありません。ヒューマンエラーを最小化する為に、IEE社はLiDAS™(Life Detection Assistance System)を開発、2020年よりアメリカにて市場導入を開始しました。
ただ、上記のサイトを色々見ていても、これらのセンサーの価格や設置にかかるコストについてはよくわかりませんでした。費用が課題になるのであれば国が補助金を出してくれると良いのですが、費用感がよくわからず。いくらあればセンサーをつけられるのかご存じの方は是非教えてください(資料請求すればわかるんでしょうが、きっと今はいろんなところから取材が来ているだろうと思うので私から資料請求はしてません)。
私自身は、私の子供たちが通う保育園の園バスに置き去り防止の仕組みを導入してくれるのであればある程度の費用負担は厭いません。毎月1000円とか、もしくは一括で3万円とかならすぐに出せるし、それ以上であっても納得すれば出すと思います。
※我が家がお世話になっている保育園は保育参観して見た限りでは移動のたびにきちんと園児の人数を確認しているし、我が家は親が送迎しているので園バスを使うのは保育時間中の移動(遠足などの行事)のみなのでバスの使用頻度はとても低いです。それでも、偶然に偶然が重なって今回のような事件が絶対に起きないとは限らないと思っています
個人でできること
Twitterで教えてもらったことも含め、今すぐにでもできることは下記のようなことかと。
・車に閉じ込められたら命の危険があることを子どもに教える、そしてクラクションの鳴らし方を教え、可能ならクラクションを実際に押す練習もさせる
・保育園の置き去り防止対応について質問する
・子どもの登園バッグにAirTagをつける(4,000円弱)
・みてねみまもりGPSを使う(本体5,280円 + 月額528円)
・地元の議員に置き去り防止の仕組み導入を働きかける
※ちなみに、「園バスの鍵をかけない/ドアを開け放しておく」という提案をされている方を散見しますが、下記のようなリスクもあるので難しいかなと思います
米国で1995年から2002年までに熱中症で死亡した5歳未満の児171名について調べたところ、うち46名(27%)はかぎの掛かっていない車に入り込んで遊んでいる間に亡くなっていました。このうち1/3以上は車内にいた時間は1時間以内だったと報告されています。
引用:園バス置き去り死亡事故から考える 車内熱中症から子どもを守るために親ができること(坂本昌彦) - 個人 - Yahoo!ニュース
バスだけでなく乗用車にもセンサー設置のインセンティブを
欧州ではEuro NCAPという自動車安全テスト(European New Car Assessment Programme)の評価項目のなかに、Child Presence Detection(子どもの置き去りを検知する)が追加されているとのこと。
https://cdn.euroncap.com/media/30700/euroncap-roadmap-2025-v4.pdf
※11ページ目に書いてあります
Euro NCAPは世界で一番権威のある自動車安全テストだとWikipediaには書いてありました。
是非、日本で販売される車(乗用車も、園のバスも)についてもこうしたセンサーの設置に強いインセンティブをつけてほしいです。保育園や幼稚園のバスについては義務付けても良いのではないかとも思います。
イタリアでは子どもが車内に置き去りになった場合に警告を発する装置の設置が2019年に義務付けられ、設置にかかる費用は政府が「奨励金」を出す仕組みも用意されているとのこと(参照)。
色々書いていたら長いブログ記事になってしまいました。
つらすぎて考えないようにしたかったのですが、なにをしていても考えてしまうので、考えて調べた結果を残すことにしました。
ご冥福をお祈りいたします。
【2022年9月13日追記】
ついに署名が始まりましたね。
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) September 13, 2022
私も賛同しました。
「もう子どもを「通園バス置き去り死」させない。「置き去り防止装置」義務化と導入支援等を求めます!」 https://t.co/3YJ1DzmUrs @change_jpより
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