おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

ディープフェイクの活用可能性がすごい

Eテレで、ディープフェイクについての大変優れたドキュメンタリーが放送されました。オランダで製作された番組です。

 

「ディープフェイク 進化するAI技術の光と影」
初回放送日: 2022年6月17日

近い将来、本物と見分けが付かない“ディープフェイク”映像を誰でも作れる時代が来る。実例を紹介しながら、新しい技術が私たちの社会にもたらす変化を考察していく。

人工知能で合成した精巧な映像、“ディープフェイク”。今後技術が進歩すると、顔を別人のものに差し替えて他人になりすますことも可能になる。“なりすまし”による犯罪のリスクの増加が予想されるが、規制は進んでいない。一方“ディープフェイク”を利用した心理セラピーも始まろうとしている。“ディープフェイク”で変わる未来を考察。原題:Backlight:Seeing Is Believing/オランダ・2021

(c)VPRO

(引用:「ディープフェイク 進化するAI技術の光と影」 - ドキュランドへようこそ - NHK

 

ディープフェイクとは

・ディープラーニング技術を活用して作成された合成メディアのこと

・「深層学習(deep learning)」と「偽物(fake)」を組み合わせた言葉

・技術が進展したため、もう人間の目では合成映像なのか本物なのか判断できない

 

ディープフェイクの使い方例

・髪の毛がぼさぼさなとき、すっぴんのとき、自分の代わりにアバターにオンライン会議に参加してもらう(←いいですね)

・アバターを活用したコンサートや、亡くなった俳優や音楽家を合成で生まれ変わらせる取り組み(←これはNHKがAI美空ひばりで実践してましたね:AI美空ひばりを見た感想と個人的メモ - おたまの日記 (shiratamaotama.com)

・不安障害の治療に役立てることもできる(高所恐怖症の人に、とても高いところに自分が悠然と立っている合成映像を見てもらう→「高いところに立っても平気だった」という偽の記憶が作られる)※行動療法の専門家の協力のもとで行われてます

 

私が特に面白いと思ったのは、この不安障害の治療への活用です。

 

不安障害の治療

ドキュメンタリーでは、「湖や川が怖い」という女性被験者が登場します。水の中に何か潜んでいるような感じがして恐ろしいと。

ディープフェイクを使った治療の手順はこんな感じです。

①別の人が泳いでいる映像を撮影する

②その画像を、被験者の顔に差し替える

③被験者に「自分が湖で楽しそうに泳いでいる」映像を見てもらう

 

このプロジェクト(Deepmemory)はyori ettemaという人が実施しているとのことで、彼の名前で検索してみたらこんなサイトを見つけました。

https://yorie.nl/deepmemory/

このサイトには、高所恐怖症の女性がディープフェイクでつくられた「高いところで楽しそうに過ごす自分」の映像を見る様子が動画で掲載されています。すごいです。

youtu.be

「高いところに立っても平気だった」という偽の記憶が作られることで、高所恐怖症の治療につながるということですね。トラウマの克服だけでなく、依存症の治療にも活用できるそうです。

 

私が考えたこと

・この仕組みを使ったら、高所恐怖症などの不安障害以外にもいろんな人が助けられそう

・例えば痴漢被害者が「怖くて電車に乗れない」ことに困っている場合、自分が電車に乗って安全に職場や学校に到着する映像をディープフェイクを使って作ってもらい、それを繰り返しみることで不安が軽減するのではないか

痴漢被害が原因となって電車に乗れなくなった、通学や通勤ができなくなった、失職した、社会生活を送ることが困難になった……という女性は、表に出てこないだけで大勢います。(『男が痴漢になる理由』p26より引用)

・あと、生活習慣病の予防にも使えそう。自分が気持ちよくジョギングしてどんどん引き締まった体を手に入れていく映像とか、健康的な食事をよく噛んで食べている映像とか。

・受験生が「志望大学で生き生きと勉強している自分の映像」を見るとモチベーションが上がるかも?オープンキャンパスに気軽にいけない地方の学生とかには良いかもしれない。早寝早起きしてしっかり勉強している自分の映像とか。授業中に積極的に発言している自分の映像とか。

・不登校の場合はどうだろう。学校に行きたくない子が、「自分が楽しそうに学校生活を送っている」映像を見ると良い効果があるだろうか。もしくは、いじめの加害者に、いじめをせずに真っ当な学校生活を送っている様子をみせると教育効果があるだろうか(自分がいじめの被害にあっている映像を見せて被害者の心情を想像させるという手もあり得るかなと考えましたが、あまり処罰的なことに使いたくないな…と思いなおしました)

 

素晴らしいプロジェクト

番組後半では、deepreckoningsというプロジェクトが紹介されました。

DEEP RECKONINGS - Home 

ディープフェイクを使って著名人に嘘の「良いセリフ」を言わせた動画を公開しています。嘘のセリフであることを明示しつつ、「その人の中に潜む良い部分を引き出す」プロジェクトです。かなり挑発的です。

例えばこれはトランプ元大統領が敗北を認める動画。

マーク・ザッカーバーグ氏のフェイク動画もありました。

この中の1人でも、本人がこのディープフェイク動画を見て「こんなふうになりたい」と感じてくれたら素晴らしいですね。

 

悪用の懸念も

もちろんディープフェイクを悪用した事件も起こっているので手放しで称賛できる技術ではないですけどね。アダルトビデオの顔をほかの人の顔に差し替えたり、政治家の映像を加工して悪いイメージを持たせるネガティブキャンペーンをしたり。

 

是非見て下さい

すごく良い番組でした。

6月24日まではNHKプラスで無料配信されているので関心ある方は是非。

「ディープフェイク 進化するAI技術の光と影」 - ドキュランドへようこそ - NHK

 

 

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