お子さんがシャインマスカットまるごと一粒をほおばった可愛らしい写真をTwitterに投稿された方がいて、「窒息の危険が」と多くの人が指摘する展開になっています。
(これ以上炎上させたくはないので元のTweetは引用しません)
これをきっかけに、日本小児科学会の「ブドウの誤嚥による窒息」事例を読みました。子どもがブドウを丸ごと食べたことで窒息した事例が2件書かれています。
事例1
1件は2歳6ヶ月の男児。自宅前を通りかかった人に助けられて奇跡的に命が助かりました。
母親が同席している食卓に座り,ブドウ(直径 3cm 大,皮をむいた種なし,今回がはじめて)まるごと 1 個を,一人で摂取していた.特に感冒症状や啼泣している様子もなかったが,突然咳き込んだ後に,泡を吹いて意識消失した.そばにいた母親が誤嚥を疑って慌てて手で掻き出そうと試みたができず,救急要請した.その後,同児を抱いて家の外に出た際,通行人にハイムリッヒ法を施行され,ブドウは一塊で排出され,直後より児は啼泣を認めた.発症後約 5 分の奇跡的な経過であった.
(日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 傷害速報 事例1より引用)
想像すると冷や汗が出ます。私がこの母親の立場だったら…。
そして、この通行人の方が素晴らしいですよね。ハイムリック法(ハイムリッヒ法)については日本小児呼吸器学会の解説が分かりやすかったです。画像お借りします。
画像出典:小児の気道異物事故予防ならびに対応(日本小児呼吸器学会 気道異物事故予防ワーキンググループ)
そして、もう1件は1歳6ヶ月の男児。死亡という結果になりました。
事例2
母親は不在で,父親・祖母・兄といっしょに自宅にいた.
児はこれまでブドウを食べたことはなかったが,父親が「食べるか」と聞いたら頷いたため,父親がブドウの皮を剝き,丸ごと 1 個を児の目の前の皿に置いた.父親の目の前で,児が自分でブドウを手に取って口に入れたところ,直後に顔面蒼白・口唇チアノーゼをきたした.父親が背部を強打するも,顔色に変化がないため,救急車を要請した.
午後 7 時 46 分,救急隊が現場に到着し,心肺停止と判断し,CPR を開始した.口腔内吸引でブドウの一部が吸引された.CPR を継続しながら,当院救急外来に搬送された.午後8 時 8 分に当院到着後,喉頭展開をしたところ,気道からブドウの一部が吸引できた.心電図モニター上 asystole,両側瞳孔散大,対光反射は認められなかった.来院後の各種処置によって,午後 8 時 27 分に心拍再開し,当院 ICU 入院となった.ICU では,心停止後症候群に対し,各種治療を行ったが,脳死とされうる状態になり,約 3 か月後に死亡した.
(日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 傷害速報 事例2より引用)
不在だった母親がこのあとどうやって事件を知ったのか、ブドウを食べさせてしまった父親がどんな思いでこの後の人生を送っているのか、色々想像すると耐えられないです。
一生の障害が残ることも
この2件の事例以外にも、1歳の息子さんが冷凍ブドウを喉に詰まらせて、命は助かったものの「低酸素性虚血性脳症」になってしまった方のブログも拝読しました。
自責と後悔でいっぱいになりながらも、息子さんのリハビリや治療を続けてこられたそうです。
追記:また死亡事故が起きてしまいました
2020年9月7日、東京で4歳男児が給食のブドウを喉に詰まらせて亡くなりました。どれほど苦しかっただろうと思います…。
※私の息子たちが通う保育園では今までブドウもミニトマトも提供されたことがないと思います(少なくとも私が給食メニュー表を見ている限りでは)。調べてみたら内閣府の事故防止ガイドラインでブドウやミニトマトは「給食での使用を避ける食材」とされていました(p21)。
5歳まではブドウもミニトマトも1/4に切る
食べものをノドに詰まらせて死んでしまうのは全人口の平均だと総死亡数の0.4%ですが、1歳児だと1.1%、2歳児だと2.2%、3歳児だと1.0%、4歳児だと1.7%だそうです(参照)。もし我が子がこの1~2%に入ってしまったら…。
私はさすがに2歳くらいまでは窒息が怖くてミニトマトもブドウも切ってあげていたのですが、3歳長男については、なんとなく「もう大丈夫かな」と思っていました。
ダメですね。
下記の通り、「5 歳未満の小児に対しては」と明記されていました。
具体的には,5 歳未満の小児に対しては,ブドウやミニトマトなど,ある程度の硬さがあり,球形で,外表がスムースで口腔内を滑りやすい果実・野菜を食べる時は,1/4 以下の大きさに切って与える必要がある.小児科医は,これらの情報を乳幼児健診などで伝える必要がある.
(日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 傷害速報 コメントより引用)
反省しました。
5歳まではブドウもミニトマトも切って与えます。
【5歳未満の子どもにブドウやミニトマトを食べさせるときは1/4以下の大きさに切る】
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) September 6, 2020
自戒も込めて。
リンク先にブドウの誤嚥による窒息事例が2件あります。
1件目は奇跡的に命が助かり、2件目は窒息→心肺停止→脳死と取り返しのつかない結果になりました。https://t.co/QR1iUKizaQ pic.twitter.com/2er1ul4ZYV
ちょっと困ったこと:子ども自身が「丸ごと食べたい」と主張する場合もある
1~2歳の頃はミニトマトを切って出せば素直に食べてくれたのですが、3歳になった長男は「丸ごと食べたい」と主張することがあります。
そうなんです…うちも3歳長男が「切らないままで食べたい」と主張することがあって、つい与えてしまって…。
— おたま@男子二児の母 (@otamashiratama) September 6, 2020
私も、たとえ泣かれてもこれは譲らないことにしようと決意しました。
「丸ごとに見せかける」という方法
そして、「十字に切って、丸い状態と見せかける」という賢い方法を教えて頂きました。
確かに。って、ミニトマトは気をつけてたけど、ぶどうでもなるのか🤔
— あんまゆ@三太ママ🏡好奇心旺盛な妄想家 (@anmayu3ta) September 6, 2020
末っ子は5歳だけど、未だに丸いものは吸わないように食べてるか、よく噛んでるかはチェックしちゃう。
ちなみに、ミニトマト丸ごと欲しがる時は小さめのを、1箇所繋がってる十字に切って、丸い状態と見せかけて与えてたなぁ。 https://t.co/B4QQE7UQwy
なるほど、やってみます!
実践しました
今夜の夕飯で、早速実践してみました。シャインマスカットに十字に切り込みを入れて、2~3mm残してつながった状態にしてあります。一見、丸ごとのブドウに見えますよね。
3歳長男はブドウに切り込みが入っていることにすぐに気付いて、「これ、ちぎったら数が増えるよ!」と自らちぎってから食べていました。
この「自分でちぎる」のが楽しかったらしく、「明日もこうやって食べたい!」との嬉しい言葉。
良かった…切れてるのは嫌だ、丸ごと食べたいとぐずられなくて良かった…。
5歳を過ぎても油断はできない:「あえて」丸飲みする場合も
小学校低学年で、ブドウの丸飲みを実験してノドに詰まらせた、という方がいました。
もう息子6歳なのですが、そういう「自分から試す」もありそうなので、折に触れて伝えていこうと思います。
— yukiyoyoyon (@yukiyoyoyon) September 7, 2020
私電車とホームの間に落ちたこともあって、その話を息子にしたら電車乗るたびに息子が言ってたことがあったので、リアルな危険として実際あったことを伝えるのは有効な気がします。
子どもの好奇心って、大人の想像を超えてきますよね…。
5歳を過ぎて、ミニトマトやブドウを丸ごと食べさせることにした場合には、「丸ごと飲み込んで死んだ子もいるんだよ」「よく噛んで食べないと危ないんだよ」ということを教えていこうと思います。
気道異物を学ぶ絵本
息子が5歳になるころに、この絵本を一緒に読もうかなと思っています。
息の通り道に食べ物などが詰まる事故「気道異物」を、つぶっこちゃんたちがかわいく、詳しく、しっかりと教えてくれる、今までになかった絵本です。
(Amazonより引用)
まとめ
ブドウやミニトマトをわざわざ切ってから出すのは手間だし、子どもが「丸ごと食べたい」と主張することもありますが、子どもの命に関わることなので妥協せずにいこうと思います。
ハチミツに「1歳未満には与えないでください」と注意書きがあるように、ブドウやミニトマトの包装にも「5歳未満の子に与える際は1/4に切ってください」という注意書きが必要かもしれませんね。
※先日書いた「理想の子連れ客のための施設」にも、レストランではブドウやミニトマトを1/4に切って提供することを追記しました。お子様ランチなどでミニトマトを丸ごと一粒提供するところもありますが、できれば切って提供してほしいですね。
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