外国人が日本の銀行で口座開設するのは大変らしい
Aさん(米国人)「三菱UFJ銀行で口座開設しようとしたけどできなくて…。また行かないといけないみたい」
私「へぇー。大変だね」
Aさん「もう2回行ったんだ。次が3回目。」
私「えっ、3回目?なにそれどういうこと?一緒に行ってあげようか?」
Aさん「うーん、今度こそ自分でできると思うんだけど…必要なものもそろえたし。」
私「まあまあ、私も外国人の立場で口座開設する機会なんてなかなか無いから一緒に行かせてよ」
という流れで都内の大きい支店に行きました。
※上記の会話は実際は英語です。このあとの会話も、私とAさんの間は基本的に英語です。
門前払いされそうになる
案内役の行員さん「ご用件は?」(←Aさんの見た目が外国人だからか、私に聞かれました)
私「彼の新規口座開設です」
行員さん「こちらの方(Aさん)ですね。来日されてからどれくらいの期間が経っていますか?」
私「1週間です」
行員さん「ああ…そうしますと、今回は口座開設は難しいと思います」
私「えっ?」
行員さん「申し訳ございません」
私「あの…日本の会社に勤め始めて、給与口座をこちらの銀行のこちらの支店で開設するよう会社からの指示で来ているんですが」
行員さん「なるほど」
私「証拠としては、会社からの口座開設を指示するメールも印刷してきました」
行員さん「そういうことでしたら、窓口でご案内させていただきます」
私「ちなみに興味本位で質問しますけど、外国人がプライベートで口座を作ろうとすると、来日してからどのくらいの期間が必要なんですか?」
行員さん「目安としては6ヶ月ですが、6ヶ月以内だと絶対に開設できないというわけではありませんし、6ヶ月経っていても開設できないこともあります。それは窓口での判断になりますので、私からはなんとも」
私「ひええ…」
行員さん「マネーロンダリングの恐れがあるので…すいません…」
窓口にて(1時間かかった)
窓口の行員さん「ああ良かった、今回は日本の方を連れてきていただいたんですね」
私「えっ」
行員さん「前回お越しいただいた際に、日本語ができる方と一緒でないと口座開設ができない旨のご説明をさせていただいたんですが」
私「それは初耳です。Aさん、前回来た時にそう言われたの?」
Aさん「I don't think so...」
私「伝わってなかったみたいですね。まあ今回はたまたま私が一緒に来たので良かったですけど、日本語話者が同伴しないと開設できないというのは彼に口頭で日本語で伝えたんですかね。それを明記した英語の紙とか頂けると良かったと思うんですけど…もしくは銀行のウェブサイトとかに書いてあります?」
行員さん「紙はお渡ししていなくて…ウェブサイトにも書いてはいないと思います」
私「へえ…ずいぶん不親切な…」
行員さん「すいません…ではご説明を…すいませんが私は日本語で話すので、適宜英語でお伝えいただけますか」
私「あ、書類は全部日本語なんですか!」
大銀行だからてっきり英語の書類もあるのだろうと思い込んでいましたが、本当にすべて日本語でした。Aさんは一応日本語を1年間勉強しており、多少は漢字も読めますが、さすがに銀行の書類は初めて見る日本語が多かったようです。
ここから1時間かけて口座開設しました。何にそんなに時間がかかるかというと…
情報共有に倍以上の時間がかかる
行員が日本語で質問→私が英語で説明→Aさんが英語で回答→私が日本語で説明→行員が手続きする という流れなので、何を決めるにも時間がかかります。
キャッシュカードの暗証番号ルールとか、重要な情報共有もありますが、たとえば「通帳をキャラクター通帳にするか?」とか、もうどうでも良いから早く進めてくれ…と思いつつちゃんと通訳しました。。
印鑑を上手に押せない
Aさんが印鑑を綺麗に押せず、何回も押しなおしが必要になりました。印鑑を押すの、結構コツがいるんですね。
あと、文字を間違えたところに「定規で」二重線をひいて、そこに重なるように訂正印を押すとか、もはやエキゾチックジャパン体験として面白がってしまいました。
※ちなみにAさんはこのためにカタカナの印鑑をつくってきました
漢字を書かないといけない
契約書類は基本的に日本語で書く必要があります。
例えばある欄には日本語で「米国籍保有のため」と書く必要がありました。行員さんがこれを別の紙に手書きで大書して、それをAさん本人がなんとか書き写します。「籍」にかなり苦戦しました。
心情としては私が代筆してあげたくなりますが、本人による手書きでなければダメとのこと。
1時間後、ついに手続き完了
行員さん「大変お時間をいただきました…(ぐったり)」
私&Aさん「ありがとうございました…(ぐったり)」
行員さん「キャッシュカードは1週間から10日ほどで書留でお届けします。」
私「かきとめ…英語でなんていうんだろう…?まあいいや、7~10日後に郵便局員さんがあなたの自宅のチャイムを鳴らすから、うけとってサインしてね」
Aさん「OK…Thank you so much」
エキゾチックジャパンの印鑑文化
ちなみにAさんが今回一番面白かったのは、窓口デスクに「ご印鑑ふき」という特別な用紙と「ご印鑑ふきを使った後に捨てるためのゴミ箱」という特別な箱が用意されていることだったそうです。
Aさん「この小さな印鑑ケースについているインクはどれくらい持つの?日本人はこれを毎年買い替えたりするわけ?」
私「私は、印鑑ケースの朱肉を買い替えた経験はないなぁ。こんな風に10ヵ所以上の訂正印を一度に押すこともなかなか無いし。普通、そんなに減らないよ…笑」
Aさん「日本人は海外でもサインの代わりに印鑑を使うの?」
私「まさか使わないよ…。ちなみに日本には印鑑の業界団体があってね。今年、日本政府がいろんな手続きをすべてオンラインでできるように『デジタル手続き法案』というのをつくったのに、印鑑の業界団体がめっちゃ反対したからうまくいかなかったの」
Aさん「Interesting!」
はやく印鑑不要な日本になってほしいものです!
サイトには明記されていた
あとから銀行のウェブサイトを確認したら、ページの最下部の脚注に小さく「基本的な日本語ができない場合はサービスを拒否します(私の勝手な意訳)」と書いてありました。原文は下記。
However, if basic matters cannot be understood in Japanese, we reserve the right to deny service due to unavoidable circumstances.
この表記の存在は、行員さんに周知されてないみたいですね!
さらにMUFGの場合は町田支店と立川支店なら英語で対応してくれるみたいです。
まぁ今回は支店を会社指定されたので仕方なかったですが、今後、外国人が日本で口座開設したいときにはこの情報を教えてあげようと思います。
おまけ:外国人が口座開設するときの持ち物
・在留カード
・印鑑(ゴム印は不可)
・ID(個人番号が分かるもの)
・雇用状況を確認できるもの(会社名のはいった保険証、雇用契約書など)
ここまではウェブサイトに書いてあります。
そして、
・口座開設せよと明記された、会社からの指示書(メールの印刷でも可) ※マネーロンダリング防止のため
・日本語ができる人
これは「持ち物」には書いてありませんが、持っていったほうが良いと思います!