おたまの日記

都内で働く二児の母(東大法学部卒)が、子育てしながら考えたことや読んだ本、お勧めしたいことを書いてます。

誰でもできるロビイング

「誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術」を読みました。

本書でいう「ロビイング」とは、業界団体が「もっと金よこせ」と言って政治家に圧力をかけることではない。日本ではあまり行われてこなかった、弱者やマイノリティを守るために政治に働きかけることである。

 

この本の構成

この本は、「暗黙の了解となっていたロビイングのルールと、様々な立場からロビイングに関わってきた方たちのテクニックを紹介」するとして、下記のような構成になっています。

第1章:自殺対策のロビイング(元内閣府参与のライフリンク清水康之氏)

第2章:病児保育・待機児童問題のロビイング(フローレンス駒崎弘樹氏)

第3章:いじめ対策のロビイング(評論家 荻上チキ氏)

第4章:児童扶養手当削減のロビイング(ひとり親である赤石千衣子氏)

第5章:性的マイノリティのロビイング(この本の著者である明智カイト氏)

巻末付録:ロビイングのマニュアル

 

面白かったです。

 

面白かったし、勉強になった

どの分野も、報道等で問題を見聞きすることはあっても、関連の制度や法律の背景や経緯までは知らなかったので、「そうかこういう人たちがこんな風に動いたから、こうなったんだ…!」という驚きがありました。待機児童問題とか、他人事ではありません。

先日G20でも話題になった「国際連帯税」についても、このようなロビイング活動をしている人々がいたのだ、ということを不勉強ながら初めて知りました。

また、自分が今後こうしたロビイングの当事者になった場合、どのような動き方をすればよいのか、という観点でも学ぶことは多かったです。

 

 しかし不満もあった

この本はあくまでも「弱者やマイノリティのためのロビイング活動の手引き」なので、それ以外のロビイングには触れられていません。

もちろん自分がいつ弱者の立場で活動したくなるか分からないのでこの本を読んで良かったとは思いますが、「自分自身が弱者というわけではないが日本のためにはこうしたほうが良い」といったテーマでのロビイング活動についても知りたい気持ちが高まりました。

言い換えれば、私が仕事を通じて日本や世界を良くするために、業務としてロビイングをするとしたらどんなことができるんだろう、という疑問にはこの本は答えてくれなかったのです。

 

ロビイングの本、2冊目を読む

そして次の本は、まさにこの疑問に120%答えてくれる本でした。

「ビジネスパーソンのための法律を変える教科書」

著者はヤフー株式会社執行役員の別所直哉氏です。

 これがまあ面白くて面白くて…。

 

働く大人はみんなこの本を読むべき

この本でも指摘されていますが、大学の法学部では、法律の解釈については手厚く学ぶ一方で、「どのように立法すればよいのか」という観点ではあまり学びませんでした。

でも法律は絶対的に正しいものではないし、時代に合わなくなることもあります。法律を使う側、ビジネスの最前線にいる人々が新たな制度づくりや法律の改正に携わることはとても大事だと思います。

そういう意味で、法学部卒か/法律関係の仕事をしているかどうかにかかわらず、すべての「働く大人」が「法律を変える」方法を知っておくのは日本のために良いことだと感じました。

 

この本の構成

第1部 法律を変えるための基礎知識

→著者が初めて法改正に携わったときの経験談を交えて法改正の基礎を解説

第2部 ケーススタディ 課題解決のために法律を変える

→著者の経験から、反省も含めた事例紹介。具体的には下記の通り。

・著作権法改正(検索エンジンを作ると著作権侵害になってしまう)

・公職選挙法改正(インターネットで情報を伝えると選挙違反になってしまう)

・消費税法改正(海外から配信される電子書籍は消費税が課税されず、競争が不公平になってしまう)

・行政ガイドライン修正(地方でのイベントに人が集まると宿泊施設が不足してしまう→民泊が必要!)

・偽ブランド品がネットオークションに出品されてしまう→あえて法改正ではなく業界の自主基準で対応

・プライバシー保護のために「忘れられる権利」を作るべきか?→作らない!

・債券法改正(約款が契約として認められることが法律上に明記されていない)

・NPO団体をつくる

・国際会議に参加する

 

※ケーススタディはいくつか抜粋しようと思ったのに、どれも面白すぎて省けず…。ほぼ目次を書いてしまいました。

 

特に面白かったところ

私が一番「おおっ」と思ったのは、「忘れられる権利」に関連して、三島由紀夫の「宴のあと」事件を国際会議で著者が説明するところです。法学部出身者はみんな知ってる、あの「宴のあと」です。

欧州当局に「日本で適切に個人情報が保護されている」という情報が伝わっていないことに危機感を感じた著者が、日本では半世紀以上前からプライバシーを保護する権利が確立していたことを説明します。

「宴のあと」裁判の判決が出たのは1964年。それを2014年の国際会議で英語で説明するなんてことがあるんですね。

 

法律知識がなくても面白い(はず)

この本は、「ビジネスパーソンのための」と銘打たれているだけのことはあり、特に法律の知識がなくても面白く読めると思います。法律用語はちゃんと説明がはいっています。

でも法律知識がある人が読むともっと面白いと思います。民法がいかに「よくできた」法律であるか、など。

この本が出版されたのは2017年の12月なので私はとっくに社会人になってしまっていますが、法学部生のうちに読んでおきたかったな…と思いました。

 

まとめ

長くなりましたが、

・弱者やマイノリティのためのロビイングを知りたい人は「誰でもできるロビイング入門

・ビジネス分野でのロビイングを学びたい人は「ビジネスパーソンのための法律を変える教科書

おすすめです!

 

【合わせて読みたい】

www.shiratamaotama.com

www.shiratamaotama.com

www.shiratamaotama.com