デイヴィッド・J・リンデン著『脳はいいかげんにできている』を読みました。
英語原題は「THE ACCIDENTAL MIND -How Brain Evolution Has Given Us Love, Memory, Dreams, and God」です。タイトルの日本語訳、すごく上手ですね。
本題とは関係ないけど、「日本の天皇や皇室の人はフグを食べることを禁止されている」とこの本で初めて知りました。
子育ての参考になりそうなこと
・知力の50%が遺伝子で決まり、残りの50%が環境によって決まる(ただし、双子の片方が貧しい家庭で育ち、もう片方が中流家庭で育った場合には知能検査結果に差が生じるが、一方が中流家庭、一方が上流家庭で育った場合には差がない。)
・脳の発達にとって、環境の豊かさはビタミンのようなもの。最低限度は絶対に必要だが、それを超える量を与えられても、余計に良い効果があるわけではない。
→ということは、中流・上流家庭の場合、どんなに英才教育をしてもたいして意味はないということかな。
・知力よりも性格のほうが遺伝子の影響を強く受ける
→まじめに育てているのに2歳長男はひょうきんものなので、これは遺伝子だな。
・食べ物の好き嫌いは、遺伝子の影響は弱く、幼いころの経験でほとんどが決まる
→離乳食はなるべく薄味で、というのはこういうことですよね。2歳長男は醤油なしで納豆を美味しく食べられるので、良いなぁと思います。
子育てとは関係ないけど面白かったこと
恋は盲目
・恋愛初期は、特に恋愛対象に関する判断力が極端に低下する。※交際期間の短い(2~17ヶ月)の被験者は、交際期間の長い(2年以上)の被験者に比べて、腹側被蓋野(報酬に関する部位)が盛んに活動する。
→私が夫と結婚したのは、付き合い始めて2年弱経ってからなので「セーフだな」と思いました。判断力の高い状態で結婚することを決めた…はず…!
同性愛について
・少なくとも米国や欧州においては、男性の約4%、女性の約2%は「常に」ホモセクシュアルで、男性の約1%、女性の約2%は「常に」バイセクシュアル。「たった一度でも」同性を相手にオーガズムに達したことのある人は男性で約25%、女性で約15%。
→私がなんとなく思っていたよりずっと大きい数字でびっくりしました。特に後半。この数字は聞き取り調査をもとに割り出してますが、厳重な管理の下、慎重に行われた多数の研究によって確認されたものなので、概ね妥当であると考えて良いとのこと。日本の数字ではないのでそのまま当てはめられないけど、言わないだけで本当は同性愛者である人が周りにはいるはず。あと、もしかしたら息子たちがそうかもしれない。みんなが生きやすい社会にしたいですね。
・一卵性双生児であっても、片方が同性愛者、片方が異性愛者であることは多い(片方が同性愛者である場合、もう片方も同性愛者である確率は48%)。つまり、性的指向は目の色などとは違い、100%遺伝で決まるわけではない。
・ただし遺伝子の影響は男女問わず強い。また、男性の同性愛はX染色体を通じて母系伝達されている(同性愛者の母方の親戚に同性愛者がいる確率が高い)
睡眠と夢について
・1952年(朝鮮戦争)、米国空軍兵捕虜に対して中国軍が行った「眠らせない」拷問が非常に効果的だった(ありもしない戦争犯罪を告白したり、共産主義を擁護する発言の録音に応じたり)。
・人間が眠らずにいられる世界最長記録は11日間。1965年に17歳のランディ君が「特に深い意味もなく記録に挑戦」し、最終的に幻視まで見たが、その後15時間眠って完全回復した。
→私がランディ君の母親だったら、心配すぎて自分が発狂しそう…
・ラットの実験だと、完全に眠らせないと3~4週間で死に至る。免疫の衰えが原因とみられる。第二次大戦中のナチスや、19世紀の中国では人間を眠らせないことで同様の結果を得ていたらしい。
・レム睡眠は、横になった姿勢でないと不可能である。例えば飛行機のエコノミークラスでは、なんとか眠ることはできても、レム睡眠にはいることはできない。そしてレム睡眠が妨げられると、記憶の定着が阻害される。
→大事なことを学んだ日に長時間夜間フライトするならビジネスクラスに乗れということですね。
・レム睡眠に費やす時間の割合は、誕生時には50%、壮年期には25%、高齢になると15%に低下する。
・夢の多くは負の感情(恐怖、不安、敵意など)を伴う。この理由は定かでないが、「負の感情に関連する脳の部位が活性化すると、(重要な情報だと判断されるため)記憶の定着が促される」ことが理由ではないか、と筆者は考えている。
→良い夢よりも悪い夢のほうが多いような気がしていましたが、みんなそうだと知って安心しました。悪夢を見た日は、きっと脳の中で大事な情報を定着させているんだと思うことにします。
あー面白かった!脳についての本では、名著「脳の中の幽霊」が大変オススメですが、これもとても面白いので関心ある方は是非読んでみてください。
本の最後の謝辞で、筆者が「誰よりもまず感謝したいのは、私の妻、エリザベス・トルバート教授だ。彼女は、この地球上で最も賢く、最も面白い人間である。」と書いていて、筆者のことが大好きになりました。私も夫からこんな風に思われたい!